08.山彦日記  12月1日

山彦が子供のころ 田舎の大人たちは忙しかった。12月となるとなおさらである。

寒くなると山のみかんが色づき、収穫が始まる。山の斜面に植えられているみかんの木から一個一個はさみで切取り、箱にざっと詰め 家まで運ぶ。そこまでは昼の仕事。大人たちはそのみかんを大きさでわけ、貯蔵用の別の木箱につめなおす作業を夜なべで行う。

家中で山に登ってみかんをとりました。子供山彦も手伝いました。家族が皆 お弁当持ちで山に行っているので家にいても誰もいないし、食事も困る。山に行くしかないためもあるけど、忙しい両親と一緒にいられるうれしさでよろこんで年相応の手伝いをした。

山からみかんがなくなると、大掃除である。それがまた田舎の大掃除は大掛かりで、大振りの笹を山から切り出し 家の内外のすす払いをする。たたみも庭に持ち出してつっかい棒をあててほこりをはらい陽に当てる。今思えばよくできるなあと不思議に思うが、どの家でも普通にやっていたことであった。

歳もつまるといよいよ餅つき。もちろん臼と杵でぺったんぺったんとつき、つき上がったお餅は丸く大小の鏡餅にしたり、平たくのしたり すぐに食べられるように小さく丸めたり…。準備や片付けなど大人たちはさぞかしいそがしかっただろうなあ。

どれもみんな思い出になってしまいました。

生活の中で季節感がなくなっているといわれて久しい師走といわれる12月も例外ではない。12月になるとニュースのキャスターたちが口をそろえて「12月になりました。師も走るといわれる師走になりました。みなさんお忙しそうで」などという。

世間では本当にそうなのであろうか。山彦はへそ曲がりなのか「貧乏暇なし」が身についているのか、「12月だからといって急に忙しくならないでしょ」とうそぶく。