08.山彦日記  4月1日

毎年4月1日の朝の楽しみがある。その事に山彦が気づいたのはいつごろからであろうか。ずいぶん前なので覚えていないが、中学生か、それとももう少し後かもしれない。当時の書き手は「開高健」だったと思う。

そう、某老舗洋酒メーカーが4月1日と1月15日に掲載する新聞広告を山彦は楽しみにしている。子供の時には見えなかった世の中のいろいろな事、気がつかなかった人と人との様々な関係などが煩わしく感じはじめた頃 たまたま目に入ったのであろう。

内容は当の昔に忘れたが、心にしみた。

もうひとつ 毎年4月1日に心が動くことがあった。昔 山彦が電車通勤していた時 いつもとかわらぬ駅の雰囲気が4月1日は何となく違うのである。電車を待つ人々の中に必ずいた。

慣れぬスーツを着ている若い男性や不器用にハイヒールをはいている若い女性が。たぶんどこかの会社の新入社員であろう彼らの顔には期待と不安があふれている。

今ではそんなこともないかもしれないし、昔の静岡の田舎駅だから気がついたのであろう。彼らをみると自分の新社会人時代を思い出し、私にもああいうときがあったなあと感慨深くなる。そして彼らに心の中でつぶやく。

「これからあなたは楽しいこと、つらいことをたくさん経験する。でもがんばろう、誠実に生きよう。神様は必ず見てくれている」
これは自分自身へのエールでもある。

4月1日はもうひとつ「エイプリールフール」の日でもある。だまされやすい体質の山彦は今年もまたひっかかっちゃうんだろうな。やれやれ