08.山彦日記  5月1日

5月は本当にいい季節だと思う。日差しは明るく暖かいし、吹く風はやさしげで心地よい。

野山で活動するにはうってつけの陽気が続けば、おにぎりをもってハイキングもよし。自転車 を駆ってサイクリングも楽しいだろうな。わざわざ遠くに出かけなくてものんびりと山を眺め、花を愛で 香りをきける田舎住まいは、それだけで寿命が延びるようではないか。

最近はきれいなお花が咲いているとデジカメや携帯で写真をとっている人をよくみかける。
それはそれでほのぼのとするが、ごくたまにスケッチブックをひろげて写生している姿にはかなわないな。「かっこいいなあ」とあこがれるのだ。

山彦が最後に写生したのは高校の美術の授業である。学校の回りは梨畑が広がり、季節はおりしも5月で白い花が咲き乱れている。

校舎の高い窓から見るとふかふかの白いジュータンのようで絵心を誘われた山彦はせっせと絵筆を動かした。できあがりイメージは「ふかふか」なのだが、画用紙に表れるのはそれとはどんどん離れていって情けなくなったことは今でも忘れない。

写生を仕上げ、作品の講評を先生から聞く授業が最後にある。そして私の作品に先生は急に口数が少なくなってしまった。ほめるところなかったんだろうなあきっと。それでも先生は良いところを何とかみつけて講評を終えた。

子供の写生に付き添っても私自身は絵筆を持つことはあれ以来とんとなく美術は見る専門になってしまったが、先生の優しい心使いは時折思いだす。もちろん子供の作品は汗をかきながら一生懸命ほめるのも忘れない。