08.山彦日記  3月1日 冠婚葬祭

いきなり縁起でもない話題で恐縮であるが冠婚葬祭のつきあいで頻度が高いのは山彦の場合「葬」である。

町からの帰り道、田舎の一本道を通ると高い頻度で亡くなった方の名前を記載した『葬式看板』を見かける。正式名称は知らないが故人の名前、通夜や葬儀の日時を記した看板を山彦は勝手に葬式看板と呼んでいる。町中ではあまり見かけないこの葬式看板が、田舎ではとても重要なのである。

地元のエリアで葬式看板を見かけたら、かつて家でだした葬式の芳名帳をめくる。故人から当時いくらいただいたのか、いただいていないのかを確認する。もしお香典をいただいているのなら、相応の金額をつつんで届けなくてはいけない。その範囲は広く厚い。村の掟らしい。

山彦の家では老母がこの確認作業を行い、厳守している。大きな声では言えないが、山彦はこの習慣に懐疑的で名前を見ても顔が思い浮かばない人はあえて母には伝えない。がしかし母は近所のおばあさんたちとのおしゃべりでこれらの情報を収集し、山彦に香典を届けるように命じる。

山彦も人並みの人情はあるから亡くなった方へのお悔やみの気持ちはもちろんある。田舎暮らしはのどかでいいけど、こういう「つきあい」が若い年代に疎まれる理由ではないかしらとふと頭をよぎる。

それに比べて「婚」の少ないことと言ったらはなはだしい。以前は結婚しない人は変人扱いされていた田舎も最近は「村民権」が認められつつある昨今。その上結婚するにしても結婚式を挙げないカップルも少なくないと聞く。めでたい結婚こそ幟をたてて村中で祝いたい山彦である。