08.山彦日記  1月元旦 

山彦は田舎に住んでいる。田舎の家は大きいのが取り柄である。我が家も例外なくそれなりに広く、倉庫らしい建物や納屋も一応ある。かつてみかんやお米を保存した倉庫や農機具をおさめる納屋は農業を営む上で必要であった。子供のころは「かくれんぼ」するにはうってつけの家だったが、最近は悩みの種になっている。

というのも、倉庫の中には収穫したみかんやお米を保管する箱やらなにやらが積みあがっているし、納屋にはもう今は時代遅れになってしまった農機具がほこりをかぶっている。

しみじみみかん箱を見れば、子供のころを思い出す。昼は家族総出でみかんをとり、夜になると両親は夕食もそこそこにそのみかんを選別し、保存用の箱に詰め倉庫へ積み上げる。

出荷の時期がくれば、出荷用のコンテナに詰め替えた。古い耕運機や稲刈り機も今では動かないだろうが、当時は最新式で大活躍。あらあらしく機械をとりまわす父をとてもほこらしく思えた。ひとつひとつが生産のためになくてはならないものだったと確かに思う。

しかし金目のものをしまってある蔵があるならまだしも、これらの小屋は本格的に農業に従事していない今となっては残念ながら無用の長物と化している(ご先祖様ごめんなさい…)

今はまだ目をつぶっていれば何事もないが、この先雨漏りや修繕が必要になったらどうしようか?つぶすにもお金はかかるし…。悩むことしきりである。

その点 老母はふところがおおきいというかのんきというか「そのうち使うかもしれないからとっておいてちょうだい」とのたまう。「今さら 誰が田植えをするんだ!」古い田植え機を横目に見ながら山彦は心の中で叫ぶ。お正月早々悩みは尽きない。