08.山彦日記  3月 静寂を破るものは

山彦は田舎に住んでいる。田舎はとても静かだ。本当に静かだ。
しんしんと冷え込む寒い夜、ふとんにくるまってふと気が付いた。「静か」というより物音がしないのである。漫画で表せば「  し ~ ん   」というシーン。

「こんな静かな状況 世間にはそうそうないよなあ」
冬の夜、〇○ブリはともかく鳴く虫はいるはずもなく、夜だからさえずる鳥も寝ている。昼間でも走る車は少ない田舎道、まして深夜に通る車はない。村人は皆寝ている。

かりに誰かがテレビを見ていても家が離れているから我が家まで届かない。何の物音のない「無音」の世界を体験できる。
時おり聞こえるのは風がゆらす木の葉や枝が触れ合う音、もしくはけものの足音か?

人の歩く音はするわけもなく、万が一聞こえたら怖すぎる!
こんな山彦だから騒音は苦手である。若かりし頃 旅行先の海辺のホテルで波の寄せ返す「ざざ~ん」という音が耳について寝られない苦い思い出がある。(波の音が騒音というわけではないのだけれど)

最近では鈍感になっているのでそれほどでもないが、都会の「喧騒」というものにいまだに不慣れである。人の話し声,めまぐるしい足音,車や電車の動く音,店舗のBGM,空調などなどが山彦を疲れさせる。

こんな話を愚息にしたら、「ぼくが一番うるさいのは誰かさんの『いびき』だね。いい気持ちで寝ていると誰かさんのいびきでおこされるんだよ」

山彦青ざめる…そうなのだ。加齢とともに山彦はいびきをかくようになってしまった。
それもかなりうるさいらしい。許せ愚息よ。

無音の世界とその静寂を破る山彦のいびき。あなたも体験してみますか?。