08.山彦日記  5月 ゴールデンウィーク

前略 愚息へ

君がひとり暮らしを始めてもう一ヶ月が経ちました。ご飯はうまく炊けていますか?
お友達はできましたか?元気でやっていることと思います。

君の知っての通り田舎の暮らしは人間関係が濃くて、村人はそれぞれの家族構成までよく把握している。特に年寄りたちは家族が知らないような親戚関係までなぜか知っていたりする。

「あんたっちの隣の家の〇○さんの妹が嫁に行った先のお姑さんと△△病院の待合室で一緒になって、最近あんたのお兄さんの具合が悪いって聞いて心配していたよ」

いったい誰なのかわからない話題もどうして知っているのか不思議なつながりも田舎はありがちなのだ。よくわからなくても、わかったふりをしてとりあえずお礼を行って来たかい。つながらないはずの点と点がある日結ばれて、身内のような意識がうまれることだってあったはずだね。

子育てにこういう環境はありがたかった。山彦は留守がちで君に余りかまってあげられなかったが、隣人たちは自分の子供と同じように君に接してくれたはずだ。良い事はほめ、悪いことはしかる。寒い冬、首をすくめながら自転車をこいで学校に行く姿を見守っている村人は多く、君もその恩恵にあずかったこともたびたびあったと聞いている。

そして今初めての一人暮らしだ。いままでの田舎暮らしと違って勝手が違うことも多いだろう。自分から行動しないと物事は進まない。今いるその場でまっすぐ前をみつめよう。言い訳をしてもそのやましさは消し去ることはできない。自分をごまかさずに正直に進もう。

この連休に少し成長したであろう君に会えるのがとても楽しみだ。         草々