01.お勧めの1冊

贖罪の奏鳴曲(ソナタ)
中山七里 講談社文庫
本書の主人公は少年時代に殺人事件を犯しながら、名前を変えて弁護士になった御子柴礼司です。

最初は単なる悪徳弁護士のピカレスク小説だと思い、暇つぶしにはなるかなという程度の期待感でした。しかし本書の法廷シーンは綿密なものでした。

彼が現在弁護しているのは、主人の人工呼吸器のスイッチを故意に切ったとされる保険金殺人容疑の主婦です。保険外交員や担当医師に対する証人尋問は読み応えがあります。

また人工呼吸器を製造したメーカーの開発担当者にプライドを傷つけずにその機器の不備を証明させる手法はさすがでした。圧倒的不利から逆転無罪寸前で、さらにどんでん返しに見舞われました。

現在の法廷シーンと交錯して、彼の少年院時代が回想シーンとして描かれています。

かなり詳細で犯罪者から弁護士を目指すようになる心理状態の変化が分かります。ただそれ以前のなぜ殺人を犯したのかが分かりませんでした。そもそもそこに理由はないのでしょうか?