01.お勧めの1冊

完黙
永瀬隼介 実業之日本社文庫

私達一般人が実生活で接する警察官はせいぜい、一時停止を忘れた時にお世話になる交通課署員くらいでしょう。TVドラマまで広げても、警察といえば捜査一課という印象です。一般人だけでなく警察内部からも遠い存在に「公安」があります。一課のエリート振りと所轄の格差を面白おかしく描いた「踊る大捜査線」でさえ公安は別枠という描写がありました。

本書は公安のスパイに仕立てられた女性と職務上あってはならない、その女性に惹かれてしまった刑事の顛末が描かれています。刑事と公安の考えの違いは「人殺しを何人逃しても国は滅びないが、ひとりのテロリストを逃すと国が滅びる」という言葉に表されています。国家を守るという大正義の前には個人の幸せを犠牲にすることに何のためらいもありません。

私は名探偵が登場して全て解決という小説よりも、リアルな(本当の警察を知らないのでリアルに思わせる)小説が好きで、本書もそのひとつになりました。