03.かつお漁船の信仰について

大海原でカツオを追い求めるカツオ漁船の乗組員にとって、大海の中での仕事は、常に不安が付きまといます。漁業者はそのことに対する救いを様々な宗教的な儀礼や信仰に求め、心を落ち着かせている場面があります。こうした漁業者の思いは大きく“大漁祈願”と“航海安全”の2つに分けることができます。
【大漁への願い】
カツオは常に広い海を移動しており、カツオ漁船が群れと出会えないこともあります。また、カツオを目の前にしてもすぐに逃げられてしまったり、餌への食いつきが悪かったりして、不漁となることがあります。また、ちょっとした巡りあわせで状況が好転して大漁となることもあります。このように、カツオの発見と漁獲においては、不確実な要素が多く、その不安定さから“大漁祈願”という、必死な願いが生まれてきます。
【航海安全への願い】
近年、カツオ漁船は大型化し、新鋭の航海機器が数多く備えられ、正確な気象情報も入手できるようになりました。そういった環境の変化により、漁船の遭難は減少し、その安全性も高くなってきています。しかしながら、台風の接近や船同士の衝突等による遭難と船員の死亡・行方不明者の発生は後を絶ちません。また、作業中の転落やケガ、航海中の病気など、漁業労働には常に危険が伴い、こうしたことから、安全な航海への切実な願いが生まれてきます。

【船霊への願い】
船霊(ふなだま)とは漁船内の神様のことです。カツオ漁船においてもこの信仰が強くあります。
船霊に対しては、毎朝や出航時に、白米やお神酒や魚などをお供えすることが一般的です。信仰の中では、船霊は女性の神様といわれており、カツオ漁業においては、女性の乗船を嫌う風習が今でも残っています。これは女性が乗船すると船霊が嫉妬するためだと言われています。また、女性の神であることから紅や鏡をお供えしたり、バクチを好むともいわれていたのでサイコロをお供えすることもあったそうです。
【恵比寿様への願い】
七福神の恵比寿様は、現在でこそ商売の神様と広く受け止められておりますが、右手に釣り竿と左手に大きな鯛を抱えていることもあり、以前から、海の彼方から漁運をもたらす釣りの神として漁業者の中で厚く信仰を受けています。漁師の家庭や船の神棚などにもよく祀られています。
この恵比寿様に対する信仰の中には流れ仏と呼ばれる、漂流してきた死体を、漁運をもたらす恵比寿様とみなして手厚く対応を行うというものがあります。これを逆にこれを粗雑に取り扱うと、祟りで不漁になるという言い伝えもあります。
参考資料:カツオの産業と文化