08. 山彦日記 8月 いよいよお墓

山彦は田舎に住んでいる。最寄りの駅まで十数キロ、コンビニまで4kmの田舎である。田舎には季節の折々、または月々に行う家事が決められていることが多い。8月は盆月なので8月に入ったらすぐにお墓の掃除を老母の監督の下やることになっている。お盆やお彼岸前のお墓の掃除は普通のことだが、田舎では草刈りから始めるのが特徴的である。そのうえ墓地の前面の斜面が山彦家の土地になっているので、他家より早く手を入れないと老母の矢のような催促が降ってくる。お墓を掃除するより墓地周辺の「草刈り」というのが正しい表現かもしれない。

田舎の墓地は山の斜面に建てられることが多く、その道はかなり急である。わが家のお墓は墓地の入口だから老母も自力で登れるが、最上段は見上げるような高さで急斜面にある。見晴らしは良いけど年配者にはお水や掃除道具を持ってあがるには難儀なことである。

そしてもう一つ心配なことがある。実はその斜面に地すべりを連想させるようなひび割れが発生しているのだ。同年代の村人たちとお墓のことで話をする機会があった。彼らもその兆候に気がついていて、昨今の異常ともいえる集中豪雨や地震にみまわれたらどうなるのかと非常に気がかりであり、何かの機会に別の場所に墓地の移転を提案しようという結論になった。

果たして村の寄合にその話題を出したが、「費用を出せる家ばかりではない」「法律的な問題はないのか」などで提案は棚上げ状態。田舎というところは変化を好まず、簡単に解決できないであろうことは予想通り。幼なじみと互いに苦笑いをした。「たたりがあると心配」という意見がなかっただけでも良しとするか。

それにしても、昔々は結婚相手の話をし、その次は子供の話題 そして親の介護についての情報交換。さらにはとうとうお墓の心配を始めている。その時でしかわからない、人の一生というものを感じ始めた山彦であった。