01.お勧めの一冊

一刀斎夢録 上下

浅田 次郎   文春文庫

 

本書は新選組3番隊組長斉藤一のお話です。新選組の中で、近藤でも土方でも沖田でもなく斉藤一の本を購入したのは、少年ジャンプに連載されていた「るろうに剣心」に登場する彼の存在感がすごかったからです。

さて本書の筋立ては、彼が生まれてから新選組に入って云々と順序立てて進んでいくのではなく、大正時代に剣道大会の決勝で負けた軍人が、剣の極意を聞こうと既に老人となっている斉藤を訪ね、それに応える形で昔語りが進んでいくのです。そこでは剣道と真剣勝負の違いがまざまざと語られています。相手を確実に仕留め且つ自分が生き残るため重要な事は「1に先手2に手数3に逃足」という言葉に、格好良い必殺技や究極の奥義は空想の世界の話だと思い知らされます。また、「刀は横にして横薙ぎに振った方が肋骨に阻まれず相手の内臓を損傷させる確率が上がる」という言葉にリアルを感じます。沖田総司より強かったという説もある彼の飄々とした語り口が印象的でした。