08.山彦日記

山彦は田舎に住んでいる。「物を捨てなくてはいけない」という気持ちが高まる12月。つまり、12月 →「大掃除」→「整理整頓」と続き、とどのつまりが「不用品の処分」となる。

田舎の家は無用に広く納屋やら何やらあるので、何年いや何十年使っていないものが山ほどためこまれている。田舎ならではというものが冠婚葬祭用の食器各種や大きな鍋釜。昔はこれらを使って数十人の飲み食いを自宅でまかなったらしいのだ。祖先の営みに厳かな気持ちになる。

納屋や小屋にあるものは足を踏み入れなければ「見えない」「見ない」ことにできるが、母屋はそうはいかない。母屋でハバをきかせているのが老母となんと亡父の所持品である。

自分の物ならさておき家人の物を処分するのはほとほと疲れる。母屋も田舎の家らしく無用に部屋数は多いので一部屋を納戸(なんど)と称し、まるでタイムカプセルのように老母の若かりし頃の服や小物が収まっている。そればかりか数年前に冥途に旅立った父の服もそのまま保存されているのだ。

事あるごとに「そろそろ捨てようよ」と水を向けても「これは若い頃 自分で仕立てたのよ」「これを着て旅行に行ったのよ」とか思い出話が始まってらちがあかない。

母曰く「お父さんの服は〇〇ちゃんが大きくなったら着るかもしれない。流行は繰り返すからね」

山彦は心の中で

「いくらなんでも今時の若い子が着るわけない。そんなに格好いい服か!」と叫ぶ。

そして最恐の品々が袋戸棚に隠されている。紙の箱に入ったそれらは「オーバー」「旅行かばん」などと大書きされ、30年から40年封印されているのではないかと推察する。

毎年「ここから処分するぞ」と自分にハッパをかける。震える手で箱に手をかけ、ゆっくりと開けると中には……「ギャ~ ~ ~ ~ !」           となる気がして怖い。

金目のお宝が出てくれば申し分ないのであるが、やっぱりもう少し後にしようかな。