01.おすすめの一冊

いちばん長い夜に

乃南アサ   新潮文庫

 

本書は、刑務所帰りの女性二人組小森谷芭子と江口綾香のシリーズの完結編です。同じ題名の上中下として出ているのではなく、1、2作目は各「いつか陽のあたる場所で」「すれ違う背中を」とうい題名なので順番に読まれた方が味わえると思います。

全編を通して芭子の視線で語られており、過去を知られる事を恐れ世間との関わりを極力避けているため前2作に大事件はなく、ささやかな日常が描かれていました。しかし本書では大事件に巻き込まれました。東京で暮らしていた芭子が、ある目的を持って仙台を訪れたその日、東日本大震災に見舞われたのです。3作目で実在の大災害を盛り込んできた事に評価は分かれたようですが、私は心動かされました。芭子視線のため、想像としてしか描かれていなかった綾香の内面が震災後に露わになってきます。芭子よりも重い罪を犯した彼女の思いが刺さります。常に寄り添ってきた2人が、気持ちは繋がりながらも、生き方を分かつのです。