08.山彦日記

山彦は田舎に住んでいる。9月になっても日中は8月と変わらないくらいあいかわらず暑い。しかし9月の声を聞くと秋の雰囲気がただよい、この田舎でも村の神社の祭りを迎える。祭りのメインはかしこくも神社へ奉納する花火である。 
 田舎の花火はよくいえば「素朴」、悪く言えば「地味」。一言でいえば打ち上げ本数が少なく、特に大きな花火は数えるほどである。一般的な花火大会は5,000 ~1万発らしいが田舎の花火は昨年の例では昼打ちがおよそ30発、夜打ちつまり普通の花火が130発前後合わせて180発くらいらしい。夜の打上げ時間を2時間とすると一般的にはおおよそ1秒間に1本以上。この田舎では1分に1本であろうか。ひなびた村の花火大会である。
しかしこれこそ「花火を味わうためのまつり」だと声を大にして言いたい。一般的な花火大会は花火を次から次へと間断なく上げるため盛大ではあるが何が何やらわからない。それに対して田舎の花火はそのひとつひとつをしみじみと最初からおわりまで鑑賞できることにあるのだ。
田舎のまつりは「番付表」とよばれる花火を上げる順番表がお盆明けに配られるところから始まる。それには通し番号と花火の名前(玉名:ぎょくめいというらしい)・あげる人の名前・家内安全とか祈願したいことやメッセージを熟読し、「祝米寿」とあれば「あそこのおばあちゃんはもう88歳かあ。元気だなあ」と思いをはせ、玉名から花火の姿を想像するのだ。
そして当日。今か今かと待ちわびる村人の期待を背負って田舎の真っ暗な空に「ヒュルルー」の笛音とわずかな光の筋に押し上げられるように火の玉があがる。その音がやむとド~ンという音とともに花火が広がる。体の芯にまで響くその音、色、形、消えいく光の粒、山々にこだまする余韻。お~すばらしい!さあ次はどうだとしばしの間待つ…わくわくして待つ、まだ待つ、さらに待つ、そのうち何かトラブルでもと心配しつつ待つ。ようやく上がったあ!