01.おすすめの一冊

愚行録
貫井 徳郎    創元推理文庫
 
本書はある一家惨殺事件の被害者夫婦の知人たちにルポライターがインタビューをする形式で構成されています。つまり第3者により被害者の人となりが語られるのです。
 エリート社員と綺麗な妻の厭らしい過去を聞かされていきます。特に妻の有名私大時代の、内部進学者と外部生の壁にまつわる話は、まさに自分が高校時代こうはなりたくないから地方公立高校出身の田舎者でも浮かないように庶民的(はっきりいえばダサイ)といわれる校風の大学を選んでよかったと思わせるような差別的エピソードが満載です。一見幸せそうな夫婦の裏の顔が明らかになっていくのですが、それ以上に取材に答える側の悪意もにじみ出ていました。彼らは反論する機会のない人間を好き勝手に評価するのです。こういう読後感の良くない、例えば松たか子主演で映画化された湊かなえの「告白」なども含まれるであろう「イヤミス」というジャンルはしかし読みだすと止まらないものでした。