01.おすすめの一冊

少女キネマ
一 肇(ニノマエ ハジメ) 角川文庫
 
 主人公は熊本から2浪の末大学入学を機に上京してきた二十歳の青年、十倉和成です。彼が2浪までしてその大学にこだわったのは、高校時代の親友で映画撮影に取りつかれた才条三紀彦がその大学のキネマ研究会での撮影中に亡くなった真相を探る目的があったからでした。しかしその目的も忘れかけていたある日、「めぞん一刻」の一刻館を思わせるぼろ下宿「友桜館」の彼の部屋の天井裏に、黒髪おかっぱで美しい敬語を話す女子高生、黒崎さちが住んでいるのを発見します。よって読者は才条の最期の真相と、十倉とさちの関係の2本柱を追いかけることになります。ラスト前に才条の真相が分かります。ではさちとの関係は。
 主人公が住んでいる部屋の天井裏に物の怪が出たなんて、ありがちです。でも生身の女子高生を出しておいて、実は幽霊でしたなんておちはいやだなと思って読んでいました。きれいなラストだと思いました。中盤わずかに出てきた伏線も回収されています。