1.おすすめの一冊

神様の裏の顔
藤崎 翔  角川文庫

 神様のような人格者だった元高校教師坪井誠造の通夜の場面で幕が上がります。参列者は元教え子や後輩教師、隣人に彼が定年後に建てた賃貸アパートの住民など多彩なメンバーでした。そんな彼、彼女らが一人一人坪井氏の思い出を心の中でかみしめています。しかし小さな疑問がきっかけで神様のような坪井氏は非道な犯罪者ではないかと疑いだすのです。
群像劇というのでしょうか、多くの人物が同じ場面を共有していると、同じ場面でもAさんとBさんが全く違ったことを感じていることが読者からは分かり面白いです。AとBの会話でAは「(山の)モンブランに登頂したときは」と話しているのにBは「(アパートのメゾン)モンブランで盗聴されている」と全くかみ合っていないのです。しかしそんな勘違いや偶然が重なりあって、坪井氏を最高の恩師と思っていた元教え子たちが妄想を暴走させ警察に訴え出ると言い出すのです。その時坪井氏の娘で喪主の晴美はどう行動するのでしょうか・・・