8.山彦日記

世間ではAIの進歩がはなはだしい。スマホに話しかけると答えてくれたり、表示をしたりと従順に応えてしてくれるのも序の口であり、ごく近い将来には家の照明や室内の温度調節なども声をかけるだけで操作できるという。
新車のナビを使うとなぜか道に迷ってしまう山彦はアナログ思考の哀しさであろうか、「未来の世界はこんなに素晴らしい」とは思えず「横着な!」「そのくらい自分でやればいいのに」とあこがれよりも「もやもやした居心地の悪さ」を感じる。まめに体を動かすことが「美徳」とされた時代に育った山彦には指示するだけで目的が為されるシステムに魅力を感じられないのだ。
しかし現実はさらにAIの快進撃が続いている。囲碁の世界チャンピオンを破り、将棋の名人も退け驚異的な思考力を見せつけ、「機械が考える」技術で人間だけが可能と思われている音楽の作曲や小説も書けるというから目が点になる。まさに無敵である。人間どうなっちゃうのだろうかといささか不安になる。
実は我が愚息は将棋をたしなみ、この話題になった。愚息曰く
「いや~段位者は強くなるための将棋研究にAIを使っているらしいよ」「え~??」
「もちろん対局には使えないけど、新しい手を見つけるためにAIの手筋を研究して勉強しているみたいだよ」「へえ~」 
人間とAIとの対局ときくと敵対しているように感じられるが、実は棋士とAIは仲良しらしい。AIを利用して自分の棋力を高める。歩いて移動していた人間が「車」という技術を使って自由に移動できる手段を獲得したということと同じなのだな。将棋の対局のだいご味は勝ち負けだけでなく、人間が苦悩している姿がこちらの想像力をかきたてる。いつになく熱く語る愚息であった。そうだよね、ロボットがピアノを完璧に演奏しても興がわかないし機械がゴルフですばらしいスコアを出してもコースまで見に行くことはない。りんなちゃんなら別だけど!