08.山彦日記  7月1日

山彦は静岡に住んでいる。静岡といえば富士山ではあるが、東と西に小高い山が連なる田舎に住んでいる山彦は「がんばらない」と富士山は見られない。裏山を30分ほど「がんばって」登らないと富士山を拝むことはできない。

茶畑やみかん畑を抜けて見通しのよいところで眺める富士山はやっぱり日本一の山である。遠くで眺めるのならお正月のころがいいなあ。おぼろげな地上から空に浮き上がっているかのように輝く富士山は日本を代表する景観である。

7月1日は富士山の山開きである。最近は山登りのブームを受けて、登山者数がうなぎのぼりだという。 かくいう私は3年ほど前に2度目の登頂をはたした。

普通 登山は朝から登りはじめるが、富士山は山頂でご来光を拝むことを目的のひとつにするため夜登る人が多い。山彦たちも夜 五合目を出発した。

手に懐中 電灯を持ったり、頭にライトをつけて足元を照らしながら歩くのだ。富士山の登山道は火山岩がごろごろして いる中を歩くため、接地面を確認しながら登らないと危ない。

幸いながら山彦たちが登った晩は雲ひとつない夜空で、月は満月。前半は月のひかりでライトがいらないほどあかるく、足下の視界が広く見え、煩わしさがなくてうれしかったなあ。その分夜半 夜明け前の寒かったこと。持ってきた防寒着はもちろん雨降り用の合羽まで着ても寒かった。

よくいう「放射冷却現象」なのだろう。登っているときはまだしも、調子よく登り予定よりずいぶん早く山頂に到着したが、寒くて休んでいられない。それに人が多くて休む場所もないのだ。

日の出を前に下山しましょうということになり、下り8合目あたりでご来光を拝んだ。あの時ほど太陽の光が暖かく感じたことはなかったなあ。今でも一緒に登った愚息は「あの時はほんとうに寒かったなあ」とつぶやく山登りの本を見ると「雨天や防寒
の準備は万全に」必ず書いてある。身にしみた登山であった。

皆さんもぜひ一度は富士山へ登りましょう。