05.検査業務について (腸炎ビブリオ)

検査室では、こんな微生物も調べています。

腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオ菌(ちょうえんビブリオきん)は、ビブリオ属の好塩性グラム陰性桿菌で、特に海水中に生息する魚介類によって引き起こされる食中毒の代表菌です。

魚介類に由来する食中毒の90%(食中毒全体では30%)は、腸炎ビブリオが占めています。

魚などの表皮にはビブリオ菌が付着しているため、生の魚介類を取り扱ったまな板などの調理器具や食器、手指などを介して、二次汚染を引き起こします。しかも腸炎ビブリオは増殖速度が速く。至適条件では7~8分で大腸菌などに比べると3倍以上
です。

宴会で出された刺し身などが4時間も放置されていたとすれば、食中毒を引き起こすに必要な菌数まで簡単に増殖します。

旅行などで宴会が始まる前に並べられていたお作りが残っていて、これを部屋に持ち帰った時には、腸炎ビブリオの菌のかたまりだと思った方が良いでしょう。しかし幸いな事に、腸炎ビブリオ菌は10℃以下の低温度では増殖できず、5℃以下では次第に死滅します。

このため、腸炎ビブリオによる食中毒は、主に夏場で発生し、11月~4月の間は海水中にもほとんど検出されません。

症状
喫食後、10~24時間後に激しい腹痛と下痢がおこります。特に腹痛はさしこむような激痛で、猛烈な苦しさを伴います。また、激しい下痢がなんども続くため、脱水症状をおこすこともあります。発熱はあまりなく、ほとんどは抗生物質の投与などで2~3日で回復します。ただし、水のような便が正常に戻るまでには2週間くらいかかります。

腸炎ビブリオ発見!
腸炎ビブリオ菌は、1950年に大阪大学の藤野恒三郎によって発見された。このきっかけは大阪府で起きた、行商販売されたしらす干しによる集団食中毒事件であった。その当時、病原菌のほとんどは19世紀のパスツールやコッホの時代に発見されつくしていると思われていた。

しかも1950年は、前年に下山事件、松川事件が起きた年で、警察でも毒物混入事件の疑いを持ち、刑事事件としてとして立件した。しかしながら化学面からの毒物検査を行ったが、毒物混入を立証できなかった。

この時、藤野恒三郎は未知なる細菌による感染症ではないかと考えて、病原菌の分離を試みた結果、今までに知られていなかった新しい細菌が病原菌である事を証明したのである。

既に病原菌は発見され尽くされていたと考えていた専門家にとって、腸炎ビブリオ菌の発見は衝撃的だった様だ。

参考資料:食品衛生検査指針・食品衛生工学の広場