06.カビ付けの目的と効果

今回はかつおぶし製造工程の続きより、かび付けの目的と効果についてお話したいと思います。

前回で述べたとおり、かび付けには大変な手間と時間がかかり近代的な工程とは逆らうような作業ですが、この工程には次のような素晴らしい効果があります。

1.かびにより水分が除かれるかびは節の内部の水を吸収し、かびの菌糸を経て、表面から水分を蒸発させています。このため節のように肉厚で、緻密 な組織を持ち、しかもある程度乾燥した状態の節の中の水分を表面から蒸発させるのは極めて難しいことで、かびを使ってこれを可能にしたことは素晴らしい発見といえます。

2.脂肪を分解する
かび付けの時に発生するかびは脂肪を分解する能力が強い種類で、節の皮下脂肪がかび付けにより減少します。

3.香気が改善される
かび付け工程により各種の香り成分が変化します。フェノール類をメチル化してかつおぶし特有の香味を付与します。

4.優良かびが繁殖することにより不良かびの繁殖が抑制される
現在は人工的にかび付けを行なっていますが、昔は自然発生によりかび付けを行なっていたため、かび付けの条件を誤ってしまうと、他のかびが発生してしまいかびの種類によってはカビ毒をもっているため気をつけなくてはなりませんでした。

5.だし汁が透明になる
だしを取った時に、だし汁が濁らずに透明になります。香味に対するかび付けの効果2.3で述べた脂肪の分解と香気の改善についてもう少し詳しくお話します。かび付けには水分および脂肪を減少させる効果があることは古くから言われていました。

かつおぶしの脂質はかび付け前のくん煙処理により酸化されにくくなっていますが、一部は徐々に酸化され香味低下の原因となりやすい為、そのような品質低下の原因となる脂質を減らすという意味でかび付けは効果がありました。

しかし、かつおぶしの油脂成分はかび付け中に一部アルコール類に変換され特有香を形成する為、原料の脂質含量が少なすぎると香りの乏しいかつおぶしになると言われています。通常脂肪含量は2~3%程度が適当とされています。

したがって香気形成の面から、かび付けの効果として脂質成分からのアルコール類生成およびフェノール類のメチル化がおこり、このような変化によってくん煙臭がまろやかになると推測されています。

そして、香気の付与だけでなく悪臭の除去という点でもかび付けは重要と考えられています。例えば、かび付け中にトリメチルアミンのような悪臭成分が減少することがわかっていて、これにはかびが関与していると考えられています。

呈味に対するかび付けの効果
かつおぶしの旨みの主成分であるイノシン酸は、かび付けによって増加することはなく、アミノ酸の組成比にも変化が認められないことから、呈味成分の生成においてかび付けの効果は特にないと考えられています。

参考資料 だし・エキスの知識より