08.山彦日記  11月1日

よく言われることであるが、冬が寒くなくなっている。真冬はもちろん寒い日もあるが、初冬といわれる11月でもあんまり寒くない。もともと静岡は温暖ではあるが、昔はそれなりに寒かったと記憶する。

それでも 山里では木々は紅葉し、みかんや柿が色づく。なかでも山彦は柿が好きで子供のころは毎日あきもせずよく食べた。みかんや柿など売るほどあるのだ。あるときさすがに食べ過ぎておなかをこわし、授業中トイレにかけこんだ。それから悪友たちによってその様子を茶化されたのはいうまでもない。

甘柿の季節が過ぎると今度は渋柿の収穫と干し柿つくりとなる。軸を残して皮をむき紐をつけて干すのである。高いほうの屋根下に竹さおを渡し、橙色の柿をつるしていく。

壁の白いしっくいにむきたての柿色が映えてきれいなのだ。こんな風景も両親の代で終わりかな。最近のようにいつまでも暖かい日が続くときちんとに仕上がらない。いつのまにか干し柿を作ることも渋柿を採ることもなくなってしまった。

こういった手仕事は特に教えられたわけでもなく、家族の作業を見て、手伝いながらいつの間にか覚えてきた。だからこの時期にすべき作業ができないとちょっと残念だしとてもさみしい。愚息はクールに言う。「やらなきゃ楽でいいじゃん。食べる人いないし」

そうだけどね… 山彦は複雑である。