05.酵母菌のちょっと寄り道1

酵母菌のちょっと寄り道Ⅰ

人々の食生活にうるおいをもたらしてくれる酵母菌ですが、特にお酒との歴史についてSUNTORYの醗酵の発見と利用の歴史が面白くわかりやすかったので、そのままご紹介します。

*古代から酒づくりなどに使われた「神の恵み」の発酵*

発酵は、ラテン語で「湧く」という意味を語源としています。これはおそらく、アルコール発酵のとき、炭酸ガスが泡のように盛り上がる姿から名づけられたのでしょう。

大気中に浮遊する酵母によってぶどうが自然発酵するのを目の当たりにした古代人たちは、やがて自然現象としての「発酵」を、日常生活に取り入れるようになりました。

メソポタミア地方では、つぶしたぶどうの皮や種子、茎を発酵させてワインを造ったのに続き、紀元前17世紀~14世紀頃のギリシャでも同様に、摘み取ったぶどうを袋に入れ、足で踏みつぶして絞ったジュースを自然発酵させる酒造りが行われています。

また、紀元前3500年頃の遺跡「モニュマン・ブルー」にも、パンの発酵を利用した酒造りの過程が、絵と文字とで記録されています。当時の人々にとって、「発酵」の仕組みやメカニズムなどは知る由もありませんでしたが、自然発酵がもたらしてくれる食べ物のおいしさには誰もが魅了され、それを生み出すためにさまざまな工夫を凝らしてきたことは想像に難くありません。

穀物やぶどうなどの「発酵」を通じて、人類は遙か昔から変化に富んだ食文化をはぐくみ、現在に至るまで豊かな味の世界を広げ続けているのです。

長い間「神の思し召しによる自然現象」と考えられてきた発酵に微生物が関与していることを初めて明らかにしたのは、オランダ人のレーウェンフック(1632~1723)でした。

また、19世紀までのビール醸造は、空気中に浮遊する酵母を利用した自然発酵に頼っており、他の微生物や雑菌の混入により、品質がなかなか安定しませんでした。

しかし1883年、雑菌や微生物を少なくするため、優良な酵母を1つだけ取り出し、純粋培養・増殖した酵母を発酵に用いる方法が発見されたのです。この技術が世界各国で広く応用されるようになったことで、酵母を利用したアルコール発酵飲料は飛躍的な品質向上を遂げるようになりました。

この「純粋分離法」を確立したデンマークのハンゼン(1842~1909)は、現在も「発酵工業の父」として、その業績を高く評価されています。

SUNTORY、WHISKY MUSEUMより抜粋