06.食品調味について

味覚の諸現象

4.相殺効果
相乗効果と反対に、ある味が他の味の存在によって著しく弱められることがあります。これは相殺効果と呼ばれています。しょうゆ中には16~18%の食塩と0.8%~1.0%のグルタミン酸が含まれています。塩辛にはイカの塩辛やカツオの塩辛などがありますが、これには20~30%の食塩が含まれています。食塩の20%溶液は実に塩辛くて、ひっくりかえるほどですが、しょうゆや塩辛などでは確かに辛いことは辛いのですが、辛さが単なる食塩の20%溶液に比べればずっと少なく感じるのは、グルタミン酸などのアミノ酸の存在によるものなのです。サッカリンは人工甘味料の代表的なものですが、これは苦味があるのが欠点です。しかし、この苦味は少量のグルタミン酸ナトリウムを添加することによって著しく緩和されます。オレンジジュースに少量のクエン酸を加えると甘味が減少したように感じ、砂糖を加えると反対に酸味が弱まったように感じます。すまし汁やスープなどの場合、味付けをして、塩味がうすいのは、あとで食塩とかしょうゆなどで適当に直すことができますが、塩味の濃過ぎるものはなかなか始末に困ります。水を後から加えて希釈するなどというのは調理の面では下の下の策といわれています。この場合多少濃い程度であれば、グルタミン酸ナトリウムの添加などで塩味を丸くすることができます。これらのグルタミン酸ナトリウムがしおから味、酸味のかどをとって、和らげる作用は相殺効果の一つであります。調理とか食品加工の調味のときに、この相殺効果も充分考慮する必要があります。

5.味をかえる物質
ある物質の化学構造の一部を変えるとその呈味性が変わることはよく知られています。ここではそういう化学的な変化ではなくて、つまり、味物質の化学構造を変えるのではなくて、味覚受容体の機能を変化させることによって味物質の味を変えることができるという例をしょうかいします。なお、このような、味覚受容体の機能を変える物質は味覚変革物質と呼ばれています。

5.1甘味を抑制する物質
インドにGymnema sylvestreという植物があります。この植物の葉を噛んだ後には、ショ糖、サッカリンなどの甘味物質の味を数時間にわたって感じなくなります。この特異的な物質はギムネマ酸と呼ばれるもので、その作用機構はまだ明らかではありません。

参考資料;食品調味の知識より