08.山彦日記

地球温暖化もはなはだしい今年の冬。昔はホントに寒かった。田舎の冬は特に寒かった。

温暖な静岡にありながら山彦の田舎では小学校の教室にストーブが置かれていた。それもコークス(石炭の加工品)を燃料にした鉄のだるまストーブである。今の安全基準からすればありえないことばかりの「だるまストーブ」であった。

山彦が通った小学校は木造で5・6年の教室はさらに寒く、12月から当番の児童によりだるまストーブが焚かれていた。最初の火種は小学校の用務員さんが用意してくれるが、当番はコークス置き場から楕円形のブリキのバケツにコークスを運び、ストーブに投入する。子供には面倒でもあり、火中にコークスを入れ教室を温かくするのは楽しくもあった。

もう一つのお楽しみが給食の時間である。当時のだるまストーブはやけど防止のための囲いはなく、子供たちは給食のパンを思い思いにストーブに張り付けてパンを焼いて食べるのが習いであった。当時のパンは当時だから当たり前なのだがパサパサしていたが、焼くととても美味しくてやけどの心配などものともせず絶妙のあんばいでストーブにくっつける。たまにタイミングをはずしてこがすこともあるが、田舎の子はどうってことなく食べてしまうのだ。

ある時子供山彦はひらめいた。パンをじかに持つのではなく「先割れスプーンでかざしたらどうか」と。先割れスプーンの柄をパンに突き刺し、丸い部分をもってストーブに近づけ、少し待つ。果たしてテレビで見るような黄金色にまんべんなく焼けたトーストができた。

「わあ きれいに焼けた。きっとおいしいぞ」友達に得意げに見せる山彦「パクッ」

「あれれ~う~ん ちょっと違うな… 」その後クラスで真似するものはいなかった。

残念ながらおいしくなかった。いまだに疑問である。子供には口に合わなかったのかなあ。

とにかく寒い時は寒くないと桜もチューリプも咲かないのだ。けしからんぞ冬将軍。