08.山彦日記

今年の4月評論家の秋山ちえ子さんが亡くなった。秋山ちえ子は毎年8月15日終戦の日にラジオで「かわいそうなぞう」という土家由岐雄作の童話を朗読していた。毎年毎回変わることなく繰返されていたのでご存知の方も多いかもしれない。太平洋戦争下の日本の実話をもとにしたあの童話である。あえて故秋山ちえ子にならってあらすじを以下に続ける。
「第二次大戦中戦局が激しくなり、東京の上野動物園では空襲で檻が破壊された際に猛獣が逃亡し、市民に害を及ぼすことを防ぐという理由で多くの動物を殺すことを命じられた。猛獣であるライオンやクマが殺され、残すは3頭のゾウのジョン、トンキー、ワンリー(花子)だけになる。
象に毒の入った餌を与えるが、鋭敏な象たちは餌を吐き出してしまい、その後は毒餌を食べないため殺すことができない。毒を注射しようにも、象の硬い皮膚に針が折れて注射ができないため、餌や水を与えるのをやめ餓死するのを待つことにする。象たちは餌をもらうために必死に芸をしたりするが、ついにジョン、ワンリー、トンキーの順に餓死していく。」(参照Wikipedia)
飼育員にとってはきのうまで大事に面倒を見ていた愛すべき動物を殺さなくてはならない不条理。罪悪感たるや計り知れない。人間の庇護のもと生きてきたゾウにとってはあまりに身勝手な仕打ちであり、むごくかつ悲しい。
これが子供向けの童話なのか、子供に読ませるのをためらうような重い内容である。読み聞きするたびに号泣した後、平和や戦争そして人々の行いに深く考えさせられる。幸い現代日本は平穏に暮らしているが、世界に目を転じれば悲惨な状況におかれている人のなんと多い事か。
田舎暮らしの山彦ができることはほぼない。しかしこの社会に感謝し、優しい気持ちで接したい。そして毎年「かわいそうなぞう」という物語を毎年朗読した人がいたということを、つらい思いをしている人たちを忘れない。