和食の料理人になるためにはどんな免許が必要なのでしょうか?
将来、和食に限らず料理を作る仕事に携わる場合は、国家試験である調理師免許が必要となります。また、調理師免許取得者が経験を積んだのち、和食に特化した国家資格や民間の資格も多種多様に存在しています。
ここでは元料理人の筆者が調理師免許取得に必要な条件や和食料理に特化した国家資格、民間資格についてお話しさせていただきます。
1.和食に関する免許
これから和食に関わる仕事をする際に必ず必要となるのが、調理師免許です。
調理師免許を取得していなくても飲食店の開業や調理業務はできますが、調理師免許を取得することで様々なメリットが生まれます。
また、調理師免許取得後、一定の経験を積んだ後にステップアップを図るために作られた国家資格「専門調理師・調理技能士」や民間が主催する民間資格などがあります。
1-1 調理師免許
調理師免許とは都道府県知事から免許を受けて調理業務に携わる人に交付されるものです。
調理師免許を取得するには2つの方法があります。
1つめは調理師学校または養成施設を卒業する方法です。
厚生労働省が指定する調理師養成施設で学んで卒業したあとに調理師免許を都道府県知事に申請することで取得が出来ます。1年制・2年制の専門学校、高校や短期大学の調理科などがあります。
高校や専門学校の調理科では、卒業と同時に調理師免許を交付されるメリットがあります。
専門学校で調理師免許を取得する場合、通常2年以上の実務業務が必要となるところ、最短1年で調理師免許が取得でき、実務経験が無くても出来るだけ早く調理師免許を取得したいと考えている人にはおすすめです。
2つめは調理師免許に合格する方法です。
調理師免許は都道府県で開催される調理師免許試験に合格した際に交付され、受験資格は中学卒業以上のもの、調理師法施行規則に準ずる施設で2年以上の実務経験があるものとされています。
試験内容は、「公衆衛生学」「栄養学」「食品学」「食品衛生学」「調理理論」「食文化概論」の6科目です。
「公衆衛生学」では地域社会での健康問題等が出題され、「栄養学」「食品学」では食品の加工や保存方法、栄養素について出題されます。「食品衛生学」は食中毒予防、「調理理論」で調理技術や調理による食品の変化について。「食文化概論」では食に関する歴史が出題されます。
調理師免許を取得するこで、料理の技術だけではく食品衛生や栄養学など食に関わる知識があることを証明してくれる資格にもなります。また、飲食業界へ転職もしやすくなりますし、自分でお店を持つ場合でもお客様からの信頼性を高める資格といえますので、まずは調理師免許を取得することが重要です。
1-2 国家資格の「専門調理師・調理技能士」
専門調理師・調理技能士とは調理師免許を取得後、より高い専門技術・技能と知識を持っている調理師であることを国が認める国家資格のことです。
「専門調理師・調理技能士」になるには公益社団法人調理技術技能センターが実施する国家試験「調理技術技能評価試験」を受けて合格する必要があります。
調理の実務経験者が試験を受けるには、調理師免許を3年以上取得していること、8年以上の調理の実務経験があることです。調理師養成施設卒業者は実務経験6年以上で調理師免許取得3年以上が条件となります。
調理師技術技能評価試験は6つの料理区分があり、
・日本料理専門調理師 調理技能士
・すし料理専門調理師 調理技能士
・麵料理専門調理師 調理技能士
・西洋料理専門調理師 調理技能士
・中国料理専門調理師 調理技能士
・給食用特殊料理専門調理師 調理技能士
があります。
「専門調理師・調理技能士」を取得することで、調理現場での責任者や料理長などのリーダーとして実務業務に携わる事が出来ます。また、より専門的なレベルで質の高い「専門調理師・調理技能士」を取得した後に独立して自らの店を開業する際や転職をする際にも良いアピールになり、食に関する教育に関わるなど仕事の幅を広げることも可能です。
2. 民間資格
和食に関する免許には国家資格である「専門調理師・調理技能士」の他にも民間で取得できる資格もあります。
民間で取れる資格は様々な種類がありますが、ここでは3種類の資格についてお話いたします。
2-1 和食ソムリエ
日本安全食料料理協会(和食ソムリエ®資格認定試験 | 日本安全食料料理協会【JSFCA】 (asc-jp.com))
和食ソムリエとして基本的な和食の知識・技術・技能を有していると認定される資格です。
だしの種類、和包丁の使い方や和食で使用される調理器具、煮物などの和食の料理に関する知識を有していると証明され、資格取得後は自宅やカルチャースクールなどで講師として活動する事が出来ます。
和食ソムリエの試験では、
・ユネスコ無形文化遺産
・江戸時代の食事
・懐石料理について
・味噌について
・糠漬けについて
・お粥について
・日本食と器について
・魚の焼き方について
以上の知識が問われます。
2-2 日本食ソムリエ
日本インストラクター技術協会(日本料理ソムリエ(和食資格) | 日本インストラクター技術協会【JIA】 (jpinstructor.org))
日本料理に関する知識を有し、更にその知識を教える講師として認定されます。
日本食ソムリエは家庭料理にとどまらず、日本料理全般の知識を身につけたいという方におすすめです。
季節それぞれの料理レシピの構築、懐石料理に関する知識やレシピ構築を証明できる資格となります。和食では四季を取り入れた料理が主体となることも多く、レシピを構築する際の知識も身に着けることもできます。
日本食インストラクターの試験では、
・一番だしと二番だしについて
・だしの種類について
・和包丁について
・アユの食べ方について
・寿司の作り方について
・山菜について
・和食に合う柑橘類について
・梅干しについて
・らっきょう漬けについて
・鱧の食べ方について
・柴漬けの漬け方について
・ヘシコの漬け方について
・柚子とすだちを使った調味料について
・蒸し料理について
・和え物について
・煮物について
・酢のものについて
・昆布について
などの知識が問われる試験が行われます。
2-3 和食検定
一般社団法人日本ホテル教育センター(和食検定【公式サイト】 (washokukentei.jp))
「和食検定」では和食のマナーを中心とした和食文化の知識、また、それを教える技能の証明となる資格です。和食の歴史や文化、おもてなしの心を現場や日々の生活の中で活かしていくとの思いから作られた資格ですので、調理よりも接遇に重きを置いた資格となります。
「和食検定」では3段階のレベルがあり、初級レベル・基本レベル・実務レベルとなっており、各レベルに合った試験が行われます。
初級レベル(どなたでも受験可能)
・和食の知恵「一汁三菜」
・和食文化と食事様式
・日本の地理的、気候的、海流的特性と歴史的背景 など
基本レベル(受験資格は特になく、一般の方も受験可能)
・日本料理に関する歴史や概要
・和食店での食卓作法
・料理や接遇に関する基本的な英語 など
実務レベル(基本レベルの認定者)
・着物の知識と振る舞い
・接遇のチェックポイント
・和食店での基本的な挨拶 など
「和食検定」では、レベルごとに試験内容が分かれており、段階を踏みながらステップアップをしていく試験となります。また、「和食検定」を主催する一般社団法人日本ホテル教育センターでは、レベル別に過去問題集を発行しており、これから「和食検定」の資格試験に臨まれる方にはおすすめです。

3. まとめ
今回、和食 免許についてお話しさせて頂きました。
和食に関わる資格として、まずは調理師免許を取得することで幅の広い活動が出来るようになります。そして、経験を積んだ後、国家試験である「専門調理師・調理技能士」を取得する、もしくは民間の資格を取り、和食に関わる知識を深めた資格を取っていくとの形になることが多いようです。
もちろん調理師免許だけでも和食、日本食に関わる事が出来ますが、ご自身のステップアップに向けて様々な資格にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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