焼津と言えば鰹節の産地として有名です。冷凍鰹の水揚げ量は、日本一です。それに伴い、水産加工会社が多数あり、水産の町として活気があります。
実際焼津は鰹節の製造量が全国で3位です。
鰹節類を年間1000トン近く仕入れている焼津の鰹節のプロが、焼津の町での鰹節を説明します。
目次
1.焼津で鰹節が作られる理由
焼津は鰹漁の歴史が長く、漁獲量が多かったこともあり保存食として鰹節を製造していました。近年でもその歴史は受け継がれ、冷凍鰹の水揚げ量は日本一であり、鰹節の製造も盛んです。
1-1.焼津鰹節の歴史
焼津では、江戸時代からカツオ等の漁業が盛んでした。江戸時代には、軍事的な理由から漁船の櫓(ろ)は7丁までと決められていましたが、焼津では特例として8丁の櫓を備える高速船が許されていました。

「焼津八丁櫓まちづくりの会HP」より
鰹の漁獲量が多いため、生では食べきれない鰹の保存技術も発達し、鰹節の製造が盛んになってきました。
焼津では、徳川家光(三代将軍)時代の1642年の「萬覚」という文献に「かつお節」の名称が残されています。
現在の燻製法は土佐与市という人が1801年に伊豆に土佐節を紹介しました。伊豆ではさらに改良を加え、「伊豆節」は高い評価を得る様になりました。
焼津はこの伊豆節を起源とした鰹節になります。焼津鰹節は、品質向上への改良を重ね、明治時代に入り頭角を現しました。
他県より製造の教師を招くなどして更に技術を向上させ、明治36年の第5回内国勧業博覧会では、全国一位になりました。
そして、大正になると焼津では国内有数の産地になり、現在にも受け継がれています。
「焼津鰹節水産加工業(協) 焼津の節より」
1-2.焼津は冷凍鰹の水揚げ量が日本一

焼津は、冷凍鰹の水揚げ量が日本一です。そのような環境から焼津では鰹節が作られています。
冷凍鰹の水揚げ量が多い理由は、焼津では鰹節以外にも、刺身用にしたり、鰹のタタキ、半生タイプの鰹節である生利節(なまりぶし)、缶詰等幅広い加工会社がありますので、焼津はどのような魚でも加工する力がある町であるからと言えます。
また、鰹と一緒に獲れるキハダマグロ等の魚も加工する会社が多くありますので、魚を漁獲した船が水揚げしやすくなっています。
【コラム】
鰹を獲った海域 ・・・ 鰹の漁獲地
鰹を船から降ろした港・・・ 鰹の水揚地
鰹を鰹節に加工した場所・・・鰹節の産地
1-3. 鰹節の3大産地の焼津
鰹節の3大産地は静岡県焼津市、鹿児島県枕崎市、鹿児島県指宿市(山川)です。
生産量の順番で言いますと、1位枕崎市、2位指宿市、3位焼津市です。この3都市で日本の鰹節の約98%を製造しています。
下記が、平成29年度の産地別の鰹節の生産量の表になります。
他の2都市と比較して生産量は少ないのですが、昔から「焼津」は鰹節の名産地として皆さんに認識されています。
2.焼津の鰹節工場の紹介
冷凍鰹の水揚げ量が日本一の焼津には鰹節工場が多くあります。15軒程の鰹節工場がありますが、伝統を引き継ぎながら新しい取り組みをしています。
ここでは、特色のある3社を紹介していきます。
2-1. 鰹節の製造量日本一【マルテ小林商店】
日本で1番鰹節を製造する会社です。1日に50トン以上の鰹を処理することが出来ます。機械化も進んでおり、効率良く鰹節を作ることが出来ます。また、鰹節ばかりでなく、鯖節やいわし煮干し、アゴ煮干し等どのような魚でも加工する能力を持っています。
燻製にする乾燥機を数種類持っていますので、魚の旨味を強調した鰹節や、燻製の香りを重視する鰹節等、好みに合った鰹節を製造することが出来ます。
業務用専門で、小売りはやっておりません。
2-2.農林水産大臣賞受賞【やまじゅう】
昔ながらの燻製方法である手火山(てびやま)式乾燥法を採用しています。手火山式は大量生産が出来なく、現在では採用している鰹節工場は少なくなっています。
平成28年の農林水産大臣賞に選ばれるなど、こだわりを持った丁寧な鰹節を作ります。
小売りの商品も販売しています。
2-3.「焼津産本枯節(ほんかれぶし)」はここがお勧め【山七】
鰹を包丁で1本ずつ切り、非常に綺麗な鰹節を作ります。焼津では数少なくなった、生切り(なまぎり)からカビ付けまで一貫して製造する会社です。
最高級の鰹節と言われる「本枯節(ほんかれぶし)」は、焼津産としてはこの山七様の製品が、作りが丁寧で美しい鰹節ですので一番お勧めです。
山七様の製品は、日本橋にあるにんべん様の店舗で購入することが出来ます。贈り物用として鰹節を購入する時は、この会社の鰹節が最適です。
3.焼津の鰹節加工会社3選
鰹節の産地である焼津には、鰹節を加工する会社が数多くあります。水揚げ→鰹節→鰹節の加工が焼津の中ですべて収まるというメリットがあります。
鰹節の加工とは、「削り」、「液体ダシ」、「粉末」などがあります。
加工されたものは、「小売り用」としてスーパーで販売されたり、「業務用」として醤油やツユ等の食品メーカーに納めたり、ラーメン店やレストラン等の外食店に納められます。
各会社は、それぞれの特色を持ちながら鰹節の加工をしています。
ここでは、削り節等の鰹節を加工する工場で特色のある3社を紹介します。
3-1.安心安全の業務用花かつお専門【小林食品株式会社】
業務用専門鰹節削り節製造会社です。業務用として、全国の外食産業や食品メーカーに納めています。
取り扱う原料は鰹節、鯖節、マグロ節、いわし煮干し、宗田鰹節等、幅広く対応しています。年間に取り扱う節類の原料の数量は、約1000トンで全国でもトップクラスになります。

鰹節を削る機械が38台あり、1日に最大で9トン削ることが出来ます。
製品も削り節だけではなく、液体ダシ、粉末だし等全ての加工に対応しています。全国に販売されている商品や、外食店で取り扱われていますので、一度は小林食品の製品を口にしたことがあると思います。

HACCP(ハサップ)やFSSC等の衛生規格もいち早く取得しています。

帳票類もすべてそろっており、確実にトレースを取ることが出来ます。

約28m大型熱風乾燥機もあり、鰹節を使った「ふりかけ」の乾燥や調味料を付けた「かつお節ダシ」の乾燥をすることが出来ます。
また、小売りサイトとして【思わず舌鼓】というサイトを立ちあげています。業務用で培った技術で鰹節の魅力を最大限に生かしたこだわりの製品を販売しています。
【思わず舌鼓】https://shitazutsumi.com/

特にお勧めは「口どけ」という鰹節を使用したふりかけになります。口どけは日本近海で一本釣りされた鰹を「本枯節」に仕上げた最高の鰹節を使用しています。
削り方も0.01mmという極限の薄さで削っています。この極限の薄さが口の中で溶けていく食感を味わう秘密です。0.01mmで削るのは高い技術を必要とします。
味はほんのり甘いふりかけで、口に入れた瞬間に鰹節の芳醇な香りが広がり、口の中で溶けていきます。
価格は非常に高い商品ですが、リピーターのお客様が多数いらっしゃいます。また、贈り物として喜ばれております。多くのメディアでも取り上げられている商品です。
3-2.ヨーロッパ向け鰹節で注目【新丸庄】
歴史のある焼津の鰹節会社です。鰹節の製造から加工まで一貫して出来る会社です。また業務用と小売り用の両方を取り扱っています。
鰹節を使用した新しい商品の展開を積極的に行っています。特に「かつお節ポテトチップス」は、テレビでも何回も紹介される人気商品です。
ポテトチップスに鰹節の小袋が添付されており、鰹節とポテトチップを混ぜて食べます。鰹の風味が広がりポテトチップとよく合います。他にも鰹節を使用したドレッシングやタレ等、新しい商品を開発しています。

業務用では、欧州連合(EU)に輸出するためのHACCPを初めて取得しています。EUで需要が広まる日本食に対して、いち早く対応しています。
積極的に鰹節を新しい形に変えていく会社です。
3-3.焼津産の小売り用削り節の名店【柳屋本店】
鰹節の製造から削り節までを一貫して行っている会社です。焼津では誰でも知っている老舗の有名な鰹節メーカーです。
ブライダルの引き出物やスーパーでの小売り、自社販売所等、幅広く商品を取り扱っています。ギフト用の綺麗な包装の商品が多数あります。

鰹節削り節の「O´花花(おかか)」は、静岡県内ではなじみ深く、鰹節を購入する時に最初に手が出る商品です。
小パック包装で使いきりの商品になりますので、いつでも香り高い削り節を味わえます。特にこの「O´花花」は香り高く、削り節のプロから見ても美味しい花かつおと言えます。
4.まとめ
焼津は港町で、魚を加工する工場が多くあり、その中で鰹節を作る工場があります。鰹節の3大産地の一つとして国産鰹節の製造を担っています。
焼津では、冷凍鰹の水揚げ量が1位であり、鰹節の製造量は国内で3位、削り節の数量は焼津を中心とした静岡県は全国2位です。
焼津は鰹節の町として、鰹節のブランドであり、文化を守っていく使命がある町です。
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