鰹節に付着している良性カビ・悪性カビの見分け方とおすすめ保存方法

鰹節とカビ
あれ、先週使った削った鰹節を袋から開けてみたらカビが発生していた…

湿気の多い季節、削った鰹節にカビが生えてしまいましたね。水分が低いと言われる鰹節でも、なぜカビが発生してしまうのでしょうか?

実は鰹節には、保管方法が上手に行かなくて、台所などで発生させてしまう悪性のカビが付く場合と、美味しくさせると同時に、悪性のカビを付けさせないために、予めわざと発育させてつけている良性カビの、2種類のカビが付いている場合があるのです。           

このページでは、どうやったら悪性のカビを発生させないで、美味しく鰹節を食べれる事ができるのか?また良性のカビがどのようにつけられ、そのカビの香りも気になるようなら、どのように対処すればよいのか。

良性のカビの取り除き方法。出汁で使用する場合、良性カビが付いているものと、付いていないものではどんな違いが出るのか。

写真入りでわかり易く説明しています。ぜひ読んでみてください。


1. 鰹節のカビは食べても安全か?

鰹節についているカビ。安全に食べられるのでしょうか。

結論からいいますと、美味しくさせる為と悪性のカビを発生させない為に、予めわざとつけた美味しく安全に食べる事のできる良性カビと、鰹節を削った後に保存状態が悪くて、パンに着くように生えてしまった悪性カビの両方があります。

良性カビをつけた鰹節
良性カビをつけた鰹節
カビが発育した鰹節
カビが発育した鰹節

写真でお分かりのように全く違います。では安全に食べられないカビと、安全に食べられるカビは一体何か違うのでしょうか。 説明していきたいと思います。

1-1. 安全に食べられる良性カビとは?

鰹節についている良性のカビは、通常は優良カビと呼ばれ、学術名ではユーロティウム(Eurotium)と呼ばれています。昔の鰹節屋は自然発生したカビを、鰹節の表面につけておりました。現在でも歴史のある鰹節屋の屋根や地下には、カビが付いた跡や、ほんのりとカビの香りがする箇所があります。

大昔、悪性のカビが鰹節の周りに付着しました(下記 鰹節のカビの歴史参照)。これでは商品として使用できませんし、食べれません。そこで昔の人達は、鰹節の表面にわざと「良性のカビ」を付けることにより、悪性のカビが発生するのを抑えたのです。

現在では荒節(あらぶし)とよばれる鰹節の表面を一度削ったのちに、培養したカビ菌を噴霧してから、概ね26~29度で湿度90%程度のカビ付け庫の中でカビを発育させていきます。

カビを寝かしつける倉庫
良性のカビを発育させるカビ付け庫

この後、鰹節の大きさとカビの発育状況により数週間寝かせて、ある一定のところまで発育したところで、天日干しさせます。これを1回と数えて、一番カビと言います。2回、3回と繰り返していき、2~3か月間経過した後に完成します。

夏場に四番カビまで行ったものは、夏枯れ節などと呼ばれたりします。カビの色は場合によっては青くなったり、少し赤みが増したり、茶と黄が混じり合ったりしますが、全て同じカビです。こちらのカビが付いたものは安心して食べれます。

天日干しをしている所
天日干しをしている所

*日本鰹節協会は、荒節にカビ付けしたものを「枯節(かれぶし)」とし、数回のカビ付けを行ったものを「本枯節(ほんかれぶし)」と定義しています。またJAS法では二番カビ以上カビ付けしたものを「枯節(かれぶし)」と定義しています。

1-2. 安全に食べられない悪性カビとは?

スーパーで購入した花かつおや、自宅で削った鰹節にカビが発生した場合、一般の食品に発生するカビと同じですので食べられません。鰹節を削ったものは、常温で保管しますとカビが発育しやすいです。

カビが発育した鰹節
カビが発育した鰹節

2.悪性カビを発生させないために知るべき2つのこと

悪性カビを発生させない為には条件があります。

2-1. カビが発育するには4つの条件とは?

その条件は、

  • 水分
  • 空気
  • 温度
  • 栄養

の4つです。どれか1つでも条件として欠けていれば発生いたしません。

①水分

カビが発育するには、食品中に水分が含まれていることが条件ですが、水分が低くて堅い鰹節を削った花かつおでも、カビが発生する程度の水分が含まれています。

花かつおの水分値は一般的には16~20%程度とされており、カビを抑えるには、この数値を8%以下程度までしないといけないのです。

もし8%以下にするためには、2つの方法があります。1つは鰹節そのものの水分を飛ばす方法です。この鰹節は製造工程期間が長くなる為、鰹節自体の価格が上がると同時に、燻製にする時間が長いので、魚の旨みが飛ぶ可能性がある反面、燻しの匂いが強く残ります。

もう1つの方法は、従来の鰹節を削った花かつおをそのまま熱風乾燥させる方法です。こちらは風味が飛び、花が脆くなり、香りもなく、美味しくありません。またトッピングで使用しても、花かつおが踊らないのです。つまり花かつおを美味しく食べるには、水分はある程度残しておく方が良いのです。

②空気(酸素)

空気(酸素)もカビが発生する条件ですので、鰹節を削ったものを常温保管し、空気とふれておきますと、カビが発生する可能性が高まります。

ときどきお皿に移し、サランラップを巻く方もおりますが、商品が空気に触れている限り、効果はありません。

③温度

カビの発育しやすい温度は通常、20~30度で、30度以上になりますと、発育は抑えられますし、20度以下でも同じです。

④栄養

鰹節はタンパク質や脂質など栄養の宝庫です。

この栄養をカビが好み、カビの発育を助けるのです。以上の4つの条件が重なるところが家庭の台所です。とりわけ発生しやすい季節が5月末~7月の上旬の梅雨の季節です。

この時期、常温で空気に触れながら保管すると、カビが発生しやすくなります。

2-2.カビを発生しない、最適な保存方法

それではカビが発育しないようにする為には、どのような保存方法が適しているのでしょうか。最適なのは、空気を抜いて冷蔵庫又は冷凍庫に入れておくことです。

削り節の袋の空気を抜く
削り節の袋の空気を抜く
冷凍庫に保管する
冷蔵庫又は冷凍庫に保管する

これは先ほどのカビの発生条件の中の、空気と温度の条件を外しています。

しかしながら、1袋が100g以上の物を冷蔵庫に入れますと、意外とかさばるのも事実です。したがって、開封後はすぐに使用するか、または予め小袋で販売されているものをお勧めします。

一般的に未開封の物は、窒素充填(チッソじゅうてん)とよばれ、袋の中には酸素が入っておりません。これなら常温でも保管が可能です。

以上の事から、開封後はカビを発生させないように、袋の空気を抜いて、冷蔵庫又は冷凍庫に保管してください。もしカビが発生したものは、他の食べ物と同様で食べないでください。


3.開封時にカビの香りがした場合の対処法

3-1.香りで判断する

それでは、スーパーやお店で購入した花かつおで、開封した瞬間に“カビの香り”がしたものはどうしたらよいでしょうか。

こちらは安心して食べて大丈夫です。美味しさを促進させる良性カビが付いていて、悪性カビの用に鼻を突くような匂いでなく、甘い香ばしい香りがいたします。
このカビは鰹節特有の香りを促進させます。このカビの香りが名残として残っている場合があります。鰹節はカビが付いている程、手間暇がかかっており、高級品とされています。

鰹節を削る会社では、削る前に良性のカビを落とす事もあれば、落とさない事もあります。

また、いくらカビを落とすと言いましても、鰹節の表面についている全てのカビを落としきる事はできません。またそれぞれの鰹節によって、そのカビのつき方に違いがあります。
カビは表面から鰹節の中に染み込むように入っておりますので、削った時にはカビの香りが少しばかり致します。

良性カビが付いたままの鰹節
良性カビが付いたままの鰹節
カビを洗い落とした鰹節
カビを洗い落とした鰹節

もしカビの香りがどうしても気になってしまう時には、どうすれば良いのでしょうか。

実は鰹節を削ったものには、カビが付いている鰹節を削ったものと、カビのついていない鰹節を削ったものがあります。
ですからカビのついていない鰹節を使用すれば良いと思います。ではどうやって見分ければよいのでしょうか。

3-2.製品の裏ラベルで判断する

カビが付いた鰹節を削った花かつおの製品の裏ラベルには、「かつおぶし削り節」とかいてあり、カビが付いていない鰹節を削った花かつおは「かつお削り節」となっています。

かつおぶし削りぶしの裏ラベル
かつおぶし削りぶしの裏ラベル
かつお削りぶしの裏ラベル
かつお削りぶしの裏ラベル

スーパーで花かつおを購入する際、裏ラベルを確認してみてください。とはいうものの、鰹節には予め優良カビを美味しくするためにわざわざつけて安心して食べられるので、カビが付いております、かつおぶし削りぶしをお勧めします。

3-3.良性カビが付いた鰹節を手に入れた時はどうすればよいのか。

一般的にはカビが付いた鰹節を、枯節(かれぶし)と呼びます。魚の背中側を男節(おぶし)、腹側を女節(めぶし)と呼び、以前ほどではありませんが、結婚式などのおめでたい席で、引き出物として頂いたり、主に御家庭で鰹節を購入して削る事も有るかと思います。

その場合、カビを取らないまま削っても問題ありません。ただ削るときに節を手で持ちますので、カビが手につきます。気になる場合は、いったん水で濡らした布巾を固く絞り、鰹節の表面のカビを取るようにこすってください。これで鰹節の表面のカビが取れます。

鰹節を水で洗う方もおりますが、洗った後は必ず表面を乾いた付近でしっかりと拭き、水分を取り除いてください。削り終わりましたら、節はサランラップで巻いて、そのまま冷蔵庫又は冷凍庫に保管してください。


4.良性カビの効果

4-1.鰹節の生臭さを消すことができる

カビを付ける事の効果として、節の水分や皮下脂肪を効果的に減少させていく中で、鰹節の生臭味を特有の香気に変えていきます。

鰹節は丸みを帯びており、表面から火の煙で燻していくのですが、どうしても均一に水分が抜けるわけでなく、また含まれている全ての水分が抜けるわけではありません。

そこにわずかながらではありますが、生臭味が鰹節の中に残る事があります。カビは発育する要素として水分を必要としますので、その過程で鰹節内の水分を使いながら発育していくのです。

これは脂肪も同様で、魚臭のする皮下脂肪も同時に分解されていき、鰹節特有の香りに変えていくのです。

4-2.控えめで上品な味わいの出汁が取れる

カビが付いた鰹節で出汁を取りますと、出汁が透明になります。写真の物はカビが付いている枯節(かれぶし)と呼ばれる鰹節を削ったものと、荒節と呼ばれるカビのついていない鰹節を削ったものです。

見た目はどちも飴色で、スーパーで見ても違いが判らない場合があります。この時は裏ラベルを確認してください。

カビの付いている枯節
カビの付いている枯節
カビの付いていない荒節
カビの付いていない荒節

通常、カビが付いた枯節で取った出汁はまろやかで少し控えめで、上品な味わいがして、また香りも豊かです。一方荒節で取った出汁は色が濃く、鰹の味が強く残りますが、両者とも、どちらが優れているというわけではありません。

例えばお蕎麦用でしたら荒節で取った出汁を使い、味噌汁でしたら枯節から取った出汁を使うなど、好みによって使い分けをする形です。

枯節で取った出汁
枯節で取った出汁
荒節で取った出汁
荒節で取った出汁


5.鰹節以外のカビが付き節類

鰹節以外には、どんなものにカビがついているのでしょうか。 鰹節以外には鯖から作られた鯖節と、宗田鰹から作られた宗田節にもカビをつける事があります。

一般的には、鯖節と宗田節の両方とも、鰹節のように直接食べる事はなく、出汁専用に使われます。主には蕎麦出汁として使用されますが、蕎麦の用途に合わせて出汁の味の好みを変える為に、カビが付いているものを使用することがあります。

カビの付いていない鯖
カビの付いていない鯖
カビの付いている鯖
カビの付いている鯖
カビの付いていない宗田
カビの付いていない宗田
カビの付いている宗田
カビの付いている宗田


6.鰹節のカビの歴史

鰹節にカビをつける歴史は、いつごろからどのようにして始まったのでしょうか。

恐らく江戸時代初期ぐらいであろうと推測されます。鰹節は乾物として扱われておりますが、商品として国内を流通するようになったのは、一部の有力商人が経済力を持ち始め、商業活動を活発化させ、全国的規模で様々な商品を流通させたことによります。

鰹漁方法が江戸初期に発展し、一本釣り漁が行われるようになり、大量に採れるようになるとともに、鰹のサイズも大きくなりました。
この時、鰹節の製法も大きく発展したとされています。鰹が大きくなれば、乾燥不十分になり易く、処理にも手間取り、結果的に「悪性カビ」を発生しやすくなります。

また鰹節の水分を取り除いたとしても、保管や流通の過程で悪性カビを発生させてしまう事も十分に考えられます。

この時代、商人の街である大阪へ西の生産地の土佐や薩摩の鰹節屋が輸送しましたが、おそらく湿気の多い時期に悪カビが発生したものと思われます。
鰹節に良性カビをわざとつけて、悪性カビを発生させないという考えは、高知の宇佐浦(町)あたりが発祥の地ではないかとされています。

土佐ではカビ付け製法を国外に出す事を禁止していたので、現在詳しい事をたどる事はできません。文政(1818~31)の土佐藩文書に「焼上黒節」という言葉が見られ、直接的な販売が禁止されております。
カビ付け節が出回る前には、大阪の問屋が黒節を商品としていたので、文政の時には、黒節が半製品でおそらくこれにカビを付けたのだろうと推測できます。という事はこの前に恐らくカビを付けたものが出回っていたものと思われます。

大阪に到着する土佐の鰹節は、一回だけのカビ付けでした。そして大阪に集まった商品は江戸へ海路で輸送するのですが、その際にも航海中にカビが発生する事が度々ありました。
大阪から江戸に到着する間に発育したカビが、結果的に現代で言うところの、二番カビ、三番カビとなり、カビを上手に使う事により、鰹節の旨みや香気が増し、魚臭さが消え、出汁の濁りが消えていくことに江戸の商人たちが気づき、現代に通じる美味しい鰹節が出来上がったのです。

しかしながら、あくまでも土佐から大阪までは、悪性カビを発生させない事を目的とした一回のカビ付けでしたので、その後、土佐では、美味しさを求める為の二番カビ以降の発展はありませんでした。
しかし江戸に近い生産地である伊豆や田子地方では、江戸の商人達とやり取りをして、カビを複数回つける事を行い、これらを江戸に納品する事により、江戸では美味しいカビのついた鰹節を味わう事が出来るようになったのです。


7.まとめ

鰹節には予めわざと付けた良性のカビ、台所などでの保管の仕方によって後から発生した悪性のカビの2つが発生している事がお分かりいただけたと思います。

鰹節に予め付いている良性カビは、美味しくもあり、香りも際立たせ、何よりも悪性カビを発生させない為に良性カビを発生させているという先人たちが作り上げた知恵のかたまりであり、何より安全です

袋を開封した時に感じるカビの香りは、美味しさの証明です。ぜひそのまま味わっていただき、袋の空気を抜いて冷蔵庫又は冷凍庫保管を行い、次回以降も美味しく味わってください。

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