鰹節を燻製する焙乾とは、焼津式を含む3つの焙乾方法を徹底解説

焙乾という言葉を聞いた事がありますか?焙乾とは「ばいかん」と呼びます。鰹節等の節類の製造工程です。鰹を鰹節に変える燻製の事を焙乾といいます。普段は耳にしない言葉ですが、焙乾は鰹節の製造の中で、味を決める重要な工程になります。 

焙乾をすることにより、鰹節は生の鰹から水分の抜けた堅い食材に生まれ変わります。焙乾と一言に申し上げても、こだわりの製法、色々な焙乾方法があります。これから、鰹節を製造する重要な工程である焙乾について詳しく説明していきます。


1焙乾(ばいかん)とは

焙乾とは、鰹節を燻製させながら乾燥させていく工程の事を言います。

焙乾の目的は、水分を低くして、鰹の旨味を凝縮させると共に、水分を低くして腐りにくくします。また、焙乾による薪の煙に含まれる有機化合物は、外部から雑菌が入らないようにコーティングの様な働きをしています。

この焙乾の工程により鰹節は保存食と呼ばれる程、長期保存が可能な食品になります。
また、薫臭を付ける事により、魚の臭みを消す効果もあります。

薪を燃やし、煙をあてる事により水分を飛ばしながら薪の薫臭を付けていきます。

鰹節の製造工程は簡単に申し上げると

 ① 生の鰹
 ② 切る
 ③ 煮る(ボイル)
 ④ 骨を取る
 ⑤ 焙乾になります。

鰹節は鰹を煮てから、焙乾をしていきます。この工程を行う事により、鰹節は堅くなります。焙乾の工程は、3週間~4週間かかります。じっくり時間をかけて燻製していく事が焙乾の特長になります。 

工程毎の水分推移になります。

  • 生の鰹:65.1%
  • ボイルした鰹:68.5%
  • 焙乾した鰹節:16.1%

焙乾を行う事により、水分が65%以上あった鰹が、20%以下まで落ちます。 


2焙乾の方法

鰹節の焙乾は、ボイルされた鰹に薪を燃やした熱と煙をあてて燻製にしていきます。薪の種類はクヌギやナラ、桜などです。 
 
海外で作る鰹節は、マンゴーの木等も使用するようです。薪に使用できる木は、芯まで堅くじっくりと燃える木になります。ゆっくりと時間をかけて焙乾をしていくので、強い火にならず、ゆっくりと燃えていく木が焙乾にむいています。
 
木を薪にしてから直ぐに使用するのではなく、半年程干して置き、薪の水分が十分に抜けてから薪として使用します。

焙乾用の薪
焙乾用の薪

焙乾は、燻製→休憩→燻製→休憩を繰り返します。ここでいう休憩とは、燻製を止めて常温もしくは、風をあてて冷やすことです。

休憩を行う理由は、連続して燻製をし続けると、鰹の表面ばかりが水分が飛んでしまい、鰹の中心の水分は残っているのに表面が焦げてしまうからです。
  
休ませることにより、鰹の中心の水分が、鰹の表面の水分が低い所に移動して、鰹内の水分が均一になっていくからです。その為に、燻製して休憩を繰り返し、鰹内の水分を徐々に減らしていきます。
 
焙乾方法にもよりますが、6~8時間燻製させて、8時間~半日以上休ませてを繰り返します。これを、12回~15回行い、水分を飛ばして燻製の香りを付けていきます。
  
表面が燻されて黒くなり、水分が十分に飛んだら焙乾の終了です。水分が十分に飛んだかの判断は、鰹節同士を叩いた音が、乾いた音になればOKです。また、鰹節を手で折って、パキンと折れると乾燥が十分であると判断が出来ます。乾燥が悪い鰹節は、折ろうとするとフニャと曲がったり、折れてもパキンと折れずに、ささくれた状態で折れます。
 
焙乾は鰹節の仕上がりの中で一番大事な工程になりますので、じっくり、丁寧に、十分に行う必要があります。


3焙乾の種類

鰹節を作るための焙乾方法は、主に3種類になります。

  • ①手火山式(てびやましき)
  • ②急造庫(きゅうぞっこ)
  • ③焼津式乾燥機(やいづしきかんそうき)

それぞれ特徴のある乾燥方式になります。

3-1手火山式(てびやましき)

一番古い焙乾方法になります。かまどで薪を燃やして、かまどの上にセイロに乗せた鰹を乗せ、下から上へ熱と煙を抜けさせて、焙乾させる方法です。乾燥させる鰹と薪を燃やしている火の位置が近いので、強い熱がかかります。気を抜くと表面を焦がしてしまうので、火の調整に注意を払う必要があります。

仕上がりの特徴は、薪の煙をしっかりと浴びるので、燻製の香りが強い鰹節に仕上がります。手間がかかり、製造量も多くできないので、現在では手火山で焙乾をしている会社は少なくなっています。

① 地下で薪を燃やす

かまどで薪を燃やす
かまどで薪を燃やす

② かまどの上にボイルされ、セイロに乗った鰹を重ねて置く

ボイルされた状態の鰹 色は白っぽい
ボイルされた状態の鰹 色は白っぽい
セイロをカマドに乗せる
セイロをカマドに乗せる

③ 熱と煙が上がっていく性質を利用してボイルされた鰹の水分を飛ばし、薪の煙の香りを付ける

煙と熱を鰹にあてる
煙と熱を鰹にあてる

④ 数時間燻製にかけた鰹。色が茶色っぽくなる。火を止めて鰹を休ませる。

表面の水分が飛び煙の香りが付き始めた鰹
表面の水分が飛び煙の香りが付き始めた鰹

⑤ 燻製をして休ませるを繰り返し、水分が飛び表面が燻されて黒くなっている。水分が十分に飛んだら焙乾終了。

中の水分まで飛んで焙乾された鰹節
中の水分まで飛んで焙乾された鰹節

3-2.急造庫(きゅうぞっこ)

多くの鰹節工場が取り入れている方式になります。手火山式を大きくして、建物ごと乾燥機にしたイメージになります。地下、もしくは1階で薪を燃やし、2階~4階にボイルされた鰹をセイロに重ねて置いて、上ってくる熱と煙で鰹を燻製していく方法です。

急造庫の方式
急造庫の方式
急造庫の外観
急造庫の外観

ボイルされた鰹を、一番熱の強い2階に置き、乾燥していくたびに3階、4階と上に上げていきます。
 
2階の乾燥室から置く理由は、水分の多い鰹を熱が強い2階に置いて、鰹の水分を低くすると同時に、鰹に含まれていた水分が蒸気となって、上の階の鰹に熱と煙と蒸気をあてていくためです。
 
蒸気をあてる理由は、乾いた熱だけですと、鰹の表面が焦げやすくなるので、水分を含んだ熱をあてた方が鰹節が綺麗に仕上がります。
 
急造庫で仕上がる鰹節の特徴は、手火山式の様に燻製の香りが強い鰹節になります。

① 1階または地下で薪を燃やす

急造庫の最下層
急造庫の最下層

② 2階にボイルされた鰹のセイロが置かれる。セイロにはボイルされた鰹が綺麗にびっしりと並べられる。

急造庫の中、1階の熱と煙が上がってくる
急造庫の中、1階の熱と煙が上がってくる

③ 約85℃で8~12時間程度乾燥室で燻製を行い、乾燥室から出して約12時間休ませる。休ませることにより、鰹の中の水分が均一になってくる

安生(あんじょう)
安生(あんじょう)

④ 乾燥と休憩を12回~15回程繰り返すと水分が飛び、鰹節(荒本)が完成。

3-3焼津式乾燥機(やいづしきかんそうき)

鰹節の産地である焼津で生まれた乾燥機です。急造庫と同様に、主流になっている乾燥方式です。急造庫と違うのは、1つの部屋に入れて熱と煙を強制的にあてるところです。
 
先ず横の個部屋で薪を燃やします。薪が燃えた熱と煙をファンで吸い込み、強制的に鰹に当てていきます。常に強制的に熱と煙をあてますので、乾燥効率が良い方式になります。

焼津式乾燥機の方式
焼津式乾燥機の方式
焼津式乾燥機
焼津式乾燥機

ファンで熱と煙を常に鰹にあてるので、乾燥効率は焙乾方法の中で一番良いです。出来上がる鰹節は、燻製の香りが他の焙乾方法より弱いのが特徴になります。

燻製の香りは弱いのですが、鰹本来の旨味を感じやすい鰹節になります。焼津式乾燥機も、他の焙乾方法と同様に乾燥機の中に鰹を入れて燻製を行い、休憩を繰り返します。乾燥機内でも場所によって熱と煙のかかり方が違うので、セイロを置く場所変えたり、セイロの上下を入れ替えを行います。

焼津式乾燥機の中
焼津式乾燥機の中

多くの鰹節工場では、乾燥効率の良い焼津式乾燥機で水分を飛ばしてから、急造庫で燻製の香りを付けるところもあります。


4まとめ

焙乾とは、鰹節を燻製させる行程のことを言います。普通の燻製と違うのは、水分を飛ばすことを一番の目的とし、燻製の香りを付けながら長期保存の出来る食材にする事です。

3~4週間かけてじっくり焙乾した鰹節は、保存食であり旨味が凝縮された食品になります。

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