「削り節」と「鰹節」って同じ言葉で呼んでしまうけどどこが違うんだろう・・・
食卓を囲んだ会話の中で「サラダに削り節をかけて」、「サラダに鰹節をかけて」と言われた時、なんとなく言いたいことはわかるけど・・・と疑問に思ってしまいませんか?
和食が2013年にユネスコ無形文化遺産として認められ、和食(日本食)が世界中の人々から注目されるようになり、和食の基本となる「だし」という言葉も注目され始めました。
また「だし」にまつわる単語も知られるようになり、鰹節やサバ節などもだしを取る時のアイテムとして認知され始めています。
ここでは、元板前で何年もだしを取ってきた私が、「削り節」と「鰹節」の違いと削り節の種類について、お話させて頂きます。
目次
1.削り節と鰹節の違い
「削り節」とは「鰹節」を削ったものです。
「鰹節」とは、かつおで作った節(ふし)を指します。削っていない固い塊の状態のことです。
削り節と鰹節の言葉尻は似ているのですが、実は似ているようで、まったく違うものなのです。
1-1 鰹節とは
「鰹節(かつおぶし)」とは、“かつお”を節にしたものです。
百貨店やスーパーで見かける、削っていない節を鰹節といいます。
鰹節の作り方は、
①生の鰹を切る(生切り)
②煮る(煮熟・・・しゃじゅく)
③骨を取る
④煙と熱で乾燥させる(焙乾・・・ばいかん)
以上の工程を完了すると荒本節となるのですが、このすべての工程を終了するまでに30日程度掛かります。
1-2 削り節とは
「削り節」とは、鰹節やサバ節と言われるように“節”になった状態のものを削ったものです。

鰹節を削る会社では、高速回転する円盤にカンナの刃を14枚~16枚程度取付け、指定の厚みに削っていきます。また、自宅で削り節器を使って削ったものも削り節と言います。
「削り節」、「鰹節」というと混同してしまいがちですが、“鰹節の姿のままか、削ってあるのか”の形状で呼び方が変わっていくのです。
参考
削り節とは原料を問わず「節が削られた状態」のことを指すため、「まぐろ」「いわし」「さば」の節も同様に削り節と呼ばれます。このことから、かつおの削り節は「鰹削り節」と呼ばれることが多いです。
2.削り節の種類
削り節と一言でいってもさまざまな種類があります。
ここでは、削り節の代表的な形状に付いてお話しさせていただきます。
2-1 花削り(薄削り)
花削りとは、節を0.06mm程度に薄く削った花びらのような削り節です。
薄削りともいいますが、どちらの呼び方も“薄く削った削り節”という意味合いです。この削り節は料理の万能選手で、だし取りやおにぎりの具材・お好み焼きの上に振りかけたりと使い勝手が良いのが特徴です。
2-2 厚削り
文字通り、厚く削った削り節の事です。厚削りの厚みは1mm程度ですので、直接料理に使うというよりもだし取り用としての使用がメインとなります。
2-3 砕片(さいへん)
削り節砕片または、破砕(はさい)といいます。
削り節の切削工程で、一度節を削った後、特別な機械を使って更に細かくしていきます。
削り節では3g程度の小袋包装に使用されることが多く、あらかじめ細かく裁断されているため、トッピング用として直接料理にふりかけて使用する事が多い削り節です。
2-4 粉末
粉末タイプの削り節は、削り節粉末とも呼ばれます。料理の隠し味として使う事が多いのではないでしょうか。私の住む地域では、おでんの上にふりかけて食べる事が多く、青のりと削り節粉末を混ぜた“おでん粉”と呼ばれ、親しまれています。もちろん単体の削り節粉末としても販売されています。
だし取りとしては細かい粉末タイプですので、だしの出方が早いのが特徴です。
3.削り節の表記
鰹の削り節の名称は2種類あることをご存知でしょうか?
商品の原材料ラベルを見ると「かつお削りぶし」と「かつおかれぶし削りぶし」とありますが、ここでは違いに付いてお話しさせていただきます。
3-1 「かつお削りぶし」と「かつおかれぶし削りぶし」の違い
「かつお削りぶし」は、鰹節の表面に人工的にカビ付けをおこなっていない、荒節を使った削りぶしのことです。
荒節の表面は、焙乾(ばいかん)時の乾燥で黒っぽい色をしており、香りも薫臭が強く感じられます。
荒節を使った削り節の製品ラベルには、名称の欄に「かつお削りぶし」と表記されます。この写真の削り節は薄削りですので、名称の最後に(薄削り)と記載されています。
また、「かつおかれぶし削りぶし」は、鰹節の表面に人工的なカビを発生させた本枯れ節(枯節)を使用した削り節となります。
荒節になってから人工的にカビを付けて熟成させていきますので、荒節に比べ、上品な味わいがあります。しかし、荒節よりも製造期間が長いため、その分値段も高くなってしまいます。
本枯れ節を削った削り節の製品ラベルには、名称の欄に「かつおかれぶし削りぶし」と表記されます。荒節と本枯れ節は削る前ですと表面の色調に違いがあるため判りやすいのですが、削ってしまいますとどちらもピンク色をした削り節となってしまうため、商品ラベルの名称で判断すると間違いがありません。
参考
鰹節には「血合い抜き」と呼ばれるものがあります。血合いとは、赤身の部分と血管の多く通った部分のことです。「血合い抜き」の鰹節は、出汁取りとして利用すると鰹の生臭みが抑えられ上品な味わいと風味を出すことができます。
4.鰹節の歴史と鰹節を削るわけ
鰹節は日本人にとってとても身近な食材です。
鰹節の発祥はモルジブと言われていますが、カツオと日本人の関わりは古く、縄文時代の遺跡にも鰹の骨が見つかっています。カツオはくさりやすい初夏から秋にかけて大量に釣れたので、古くから生のままで食べきれない分を乾物に加工し、保存する習慣があったようです。
6世紀末の飛鳥時代には鰹節の原型となる「干し鰹」と「煎汁(いろり)」が作られました。
干し鰹はカツオをそのまま干したもので「堅魚(かたうお)」とも呼ばれ、煮てから干したものを「煮堅魚(にかたうお)」と呼びました。煎汁は、堅魚の煮汁を煮詰めたものです。どれも保存がきくため年貢の代わりとして献上されました。
延長5年(927年)に後醍醐天皇の命により撰集された『延喜式』(平安時代前期の法律、社会を知る重要な文献)に、駿河国焼津浦より「堅魚(かたうお)」、「煮堅魚(にかたうお)」、「堅魚(かたうお)煎汁(いろり)」の貢租があったと記述されています。また、奈良の正倉院に保存されている『駿河国正悦帳』にも、焼津を中心とした地域が煮堅魚の特産地として記録されています。
そして鰹節を削った花かつおは、「室町時代(1489年)に書かれた書物、「四条流包丁書」に花鰹という字が見られ、「包丁聞書」(1540年)には、「雑煮の上置」に花鰹が使われたと書かれています。
もともとは、だしを取るためにそのまま使われていたと思われますが、当時の料理本に花かつおの記述がたくさん見られることから、堅い鰹節を薄く削って日々の料理に使われていたことが想像されます。
花鰹という言葉は、現代では「花かつお」と表記されることが多いのですが、当時の鰹節も薄削ると中の紅色の部分が美しく、花びらのようにみえたのだと考えられます。
今も昔も花かつおの色はとても食欲をそそる色合いなのは変わらないのでしょう。
5.まとめ
「削り節」と「鰹節」の違いは、“節を削っているか、削っていないか”の違いです。
削り節の種類は、用途によって使い分けが出来ますので、作る料理に合わせてお使いする事をお勧めいたします。また、削り節を普段の料理に取り入れる場合は、空気に触れることのないように保存していただくと良いでしょう。空気に触れることで酸化が進んでしまうからです。
削り節を使った料理で、笑顔あふれる食卓になります様に。
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