本枯節とは?本枯節ができるまでの流れとおすすめ本枯節の選び方

上が雄節・下の雌節のセット

本枯節は、鰹節の中でも高級な鰹節になります。

本枯節は、手間と時間がかかる生産量が少ない鰹節です。

削り節として販売されている多くが荒節(あらぶし)で、削る前の節の状態で販売されているものは、ほとんどが本枯節(ほんかれぶし)になります。つまり皆さんの削る前の鰹節のイメージは「鰹節=本枯節」です。

鰹節の種類の中でも、皆さんが一番目にする機会が多い本枯節について紹介していきます。


1本枯節とは

本枯節(ほんかれぶし)とは、鰹節の表面にカビを付けた鰹節になります。

一般的に「鰹節」というと、大きく分けて2種類になります。カビの付いていない「荒節(あらぶし)」とカビの付いた「本枯節(ほんかれぶし)」になります。

本枯節(雄節)
本枯節(雄節)

本枯節にする理由は、カビを付けることで荒本節の水分を更に低くさせ、脂肪分を分解させる事にあります。そのことで、荒本節と比較してより長期保存が出来、魚臭さが消え風味が上品になります。

水分が低くカチカチの状態になり、本枯節を折ると中は赤みがかったあめ色になっています。

1-1本枯節と荒節の違い

下記が本枯節と荒節の主な違いになります。

左が本枯節       右が荒節
本枯節と荒節の違い
本枯節と荒節の違い

スーパーに並んでいる「花かつお」等の大袋の削り節は、ほとんどが荒節を使用しています。荒節は、魚の旨味が凝縮され、燻製の香りがする削り節になります。その荒節の表面の黒い燻製された部分を削り落とし、良質のカビを付けたのが本枯節になります。

荒本節は、みそ汁のダシやお好み焼きにかけたり、鰹の強い風味を味わうのにお勧めです。本枯節は、上品な味わいになりますので、薄味のお吸い物や、おひたしにかけると本枯節の味わいを感じることが出来ます。

削ってある花かつおは、荒節を原料としています。一方で、鰹節として1本で販売しているものは本枯節になります。本枯節の鰹節として流通している割合は、約2割以下になります。

本枯節は、荒節と比べ手間暇がかかり、価格も高く高級品です。


2本枯節が出来るまで

本枯節は、完成までに3ヶ月~半年かかる鰹節です。

この3ヶ月~半年の時間差は、カビを付ける回数の差になります。回数が多いほど鰹節の水分が抜けて、美味しい本枯節になります。

こだわりの技術をもって製造される日本の伝統食品になります。ここでは、本枯節ができるまでを紹介していきます。

2-1水揚げ

片道1週間かかる漁場で漁獲された鰹は、ブライン凍結という急速冷凍法でマイナス40℃程度で冷凍され、各港で水揚げされます。水揚げされた鰹は、セリや入札で鰹節製造会社に購入されていきます。

ブライン凍結で急速冷凍された鰹の水揚げ
ブライン凍結で急速冷凍された鰹の水揚げ

基本的に冷凍の鰹で本枯節は製造されますが、まれに近海で獲れた生の鰹でも本枯節が製造されます。

近海で獲れた生の鰹
近海で獲れた生の鰹

2-2解凍

冷凍で水揚げされた鰹を、解凍していきます。一晩かけて水に漬け込んで解凍したり、流水で解凍したり、水槽の水に空気を送り込んで解凍を促進させたりします。鰹の芯まで解凍出来たら次の工程に移ります。

解凍された鰹
解凍された鰹

2-3生切り

包丁で鰹を切っていきます。主に3本の包丁を使用していきます。

左から頭切包丁・卸包丁・身卸包丁になります
左から頭切包丁・卸包丁・身卸包丁になります

左の包丁から順番に使っています。

①頭切

まず、頭を切り落とします。「頭切包丁」を使います。鰹のエラに親指を入れて固定し、鰹の腹側の首元から包丁を入れていきます。

包丁を入れていくと背骨のところで止まるので、そこから背骨に沿って斜めに切り落とします。

頭切包丁で頭を切り落とす
頭切包丁で頭を切り落とす

②ハラモを凝り落とす

首元のハラモの部分を切り落とします。ハラモの部分は脂が多く、鰹節にしていくときにボロボロしてしまうので、切り落とします。

ヘソのあたりから斜めに両サイドから切り落とします。

首元から斜めに切り込む
首元から斜めに切り込む
ハラモ部分が切り取られた鰹
ハラモ部分が切り取られた鰹

③3枚に卸す

頭とハラモを切り落とされた鰹を、半身2枚と中骨の3枚に分けます。

背びれをとる
背びれをとる

背びれの部分を卸包丁で切り落としていきます。

中骨に沿って背中から腹に包丁を入れる
中骨に沿って背中から腹に包丁を入れる

背びれを切り落としたら、背中の部分から卸包丁で中骨に沿って3枚に卸していきます。

3枚に卸された鰹
3枚に卸された鰹

④合断(あいだち)

3枚に卸された鰹を血合いに沿って更に半身に切っていきます。身卸包丁で背中の部分と腹の部分に切り落とします。

合裁
合裁

⑤籠立て(かごたて)

3枚に卸され、更に半身にされた鰹をセイロの上に綺麗に並べていきます。重ならないように綺麗に並べることで、次のボイルの工程で均等に火が通るようになります。

4半身になりセイロに並ぶ鰹
4半身になりセイロに並ぶ鰹

⑥煮熟(しゃじく)

煮熟の工程になります。ボイルすることをいいます。

セイロごと沸騰した釜に鰹を入れ、鰹を煮ます。鰹のサイズや季節で煮る時間は変わりますが、概ね95℃以上で1時間~2時間以上煮ます。

釜で鰹を煮熟(しゃじく)します
釜で鰹を煮熟(しゃじく)します

鰹を煮ることで、煮沸殺菌を行い腐敗を抑制します。また、たんぱく質を凝固させて、次工程の燻製工程で乾燥させやすくなります。

煮熟された鰹
煮熟された鰹

⑦骨抜き

煮熟された鰹の骨を抜きます。毛抜きの様な器具で、骨をつかんで抜いていきます。特にあばらのところについている7枚骨(しちまいぼね)は、太いので残さないように抜いていきます。

水槽の中で骨を抜く「水骨(みずぼね)」と水中ではない「おかぼね」があります。

毛抜きの様な器具で丁寧に骨を丁寧に抜いていきます
毛抜きの様な器具で丁寧に骨を丁寧に抜いていきます

⑧焙乾(ばいかん)

骨を抜いた鰹を燻製にする工程です。燻製の方法は薪を燃やして煙と熱を当てて水分を飛ばしていきます。焙乾の方法は3種類ありますが、古来からの方法の手火山(てびやま)の乾燥方法を紹介していきます。

薪はクヌギやナラ等の硬くてゆっくり燃える薪を使います。薪を干して水分を減らし、燃やしやすくします。

焙乾(ばいかん)用の薪は暫く置いて水分を抜く
焙乾(ばいかん)用の薪は暫く置いて水分を抜く

竈(かまど)で薪を燃やし、竈の上にボイルされた鰹を乗せたセイロを重ねておきます。

手火山(てびやま)
手火山(てびやま)

下で薪を燃やし、熱と煙を当てながら燻製させていきます。下のセイロの方が熱と煙が当たりやすいので、上下を入れ替えて均等に燻製されるようにしていきます。

数時間熱と煙を当てた後、火を止めて休ませます。休ませる事を「あん蒸(あんじょう)」といいます。燻製をし続けると表面の水分ばかり飛んで、中の水分が抜けません。

一回焙乾してあん蒸をしているところ
一回焙乾してあん蒸をしているところ

休ませることにより、中心の水分が水分の低い表面に移って均等になります。均等になったら、また薪を燃やし水分を飛ばします。

燻製→あん蒸を繰り返して、鰹の水分を均等に20%程度まで下がってくると「荒節(あらぶし)」の完成です。

燻製を繰り返した荒節の完成
燻製を繰り返した荒節の完成

ここまでの工程で製造された荒節(あらぶし)が、花かつおとして削られて販売されている鰹節の原料になります。燻製の香りが強く、魚の旨味の強い鰹節になります。削り節として流通されているほとんどの鰹節製品はこの荒節が使用されています。

この後から本枯節の工程になります。

⑨表面削り

荒節の黒い表面を削っていきます。黒い部分は燻製で付いた煙成分(タール)を削り取ります。表面のタールを取ることで、次工程のカビが付きやすいようにします。

専用のグラインダーで表面のタールを削っていきます。

グラインダーで荒節の表面を削る
グラインダーで荒節の表面を削る
表面が削られた鰹節
表面が削られた鰹節

⑩カビ付け

鰹節の表面に優良なカビ菌を吹き付け、カビの発生しやすい温度と湿度の部屋に入れてカビを発生させます。カビが鰹節の水分を更に吸い取り、鰹節の水分を低くします。

カビを付ける理由は、水分を低くする以外に脂肪を分解し、鰹節の脂肪含有量を減らします。脂肪が減ることで、荒節よりも透き通って、魚の臭みが消えた鰹節になります。

湿度の高い部屋で鰹節に良質のカビを発生させる
湿度の高い部屋で鰹節に良質のカビを発生させる

カビが付いて来たら、天日干しをしてカビを取ります。

晴れた日に広げて天日干しにする
晴れた日に広げて天日干しにする

天日干しをしたらまた、カビ菌を付けて湿度の高い部屋に入れます。カビを付けて天日干しを繰り返すことで、乾燥が更に進み熟成していきます。

カビの色も繰り返すことで変わってきます。最初は、薄緑だったカビの色も茶色になってきます。茶色になってくると、カビ特有の匂いも薄くなってきます。何回もカビを付けることで、カビが生えなくなるまで水分を低くして本枯節になります。

左からカビを付けて1週間・カビ付け天日干し1回・2回・3回
左からカビを付けて1週間・カビ付け天日干し1回・2回・3回
茶色くなってカビが付かなくなったら本枯節の完成です
茶色くなってカビが付かなくなったら本枯節の完成です

カビを付けて天日干しにする回数が2回以上付けると「枯節(かれぶし)」となり、更にカビを付けて天日干しを繰り返して「本枯節」になります。カビが付かなくなるまで水分が減るまで約半年かかります。

この様に、手間と時間をかけて作られた本枯節は、高級品になります。製造する職人も減り、流通量も減ってきていますので、貴重な食材になってきています。


3最高級の本枯節選び方

本枯節は、鰹節の中では高級品になりますが、その中でも最高級の本枯節の選び方をご紹介します。

3-1鰹の漁獲方法

本枯節の最高級とされるのは、日本近海で一本釣りで漁獲された鰹を使用した本枯節です。鰹節の大半は、赤道付近の海域で巻き網で漁獲され、ブライン凍結という塩分濃度の濃い溶液で急速冷凍された鰹を使用しています。

通常は、巻き網の鰹でも十分美味しい本枯節が出来るのですが、よりこだわりたい方は一本釣りの鰹で作った鰹節をお勧めします。
 
一本釣りはその名の通り竿で一匹ずつ釣りあげられます。傷がつきにくくそのまま氷水の中に保管されます。鮮度が良いということになります。鮮度が良い魚は特に臭みや、雑味がありません。

購入するときに、「近海一本釣り」と書いてあるものがお勧めです。

3-2本枯節のサイズ

本枯節は、大きいサイズがお勧めです。

味は大きさではそれほど違いがありませんが、大きいサイズは見た目が立派で、流通量も少ないので希少です。また、大きいサイズの方が削る時に、削りやすいです。

通常の本枯れ節は1匹2.5㎏以上の鰹を使用していますが、大きいサイズの本枯節用の鰹は、1匹6.0㎏以上の鰹を使います。

また、同じ大きさの鰹から本枯節を製造しても、背中の部分と腹の部分では、サイズが全然違います。背中の部分を雄節(おぶし)、腹の部分を雌節(めぶし)と言います。

本枯節のサイズ目安
本枯節のサイズ目安

6.0㎏以上の雄節が非常に立派でお勧めになります。

3-3産地

本枯節の主な産地は、枕崎、指宿(山川)、焼津、土佐等があります。どの産地もこだわりを持って製造していますので、産地としての差はありません。

その中でもお勧めは、指宿産になります。数多くの産地の本枯節を購入しましたが、大きめのサイズが多い事と、仕上がりの形とカビの付き方が綺麗で、本枯節としての存在感があります。


4おすすめの本枯節

思わず舌鼓

本枯節は、一般的に店頭で見かけることは少なくなっています。乾物屋さんで販売はしておりますが、乾物屋さんの店舗があまり見かけなくなっていますので、インターネットで購入するのがお勧めです。

特におすすめなのは思わず舌鼓です。

 

 

 

 

思わず舌鼓はこちら

思わず舌鼓 本枯節
思わず舌鼓 本枯節

日本近海で漁獲された6.0㎏以上の鰹を使用しています。大きいサイズで形もよく、近海の生の鰹を使用しているので臭みも少ないのが特徴です。

その他のおすすめ

その他の楽天やAmazonの様なショッピングサイトの他に、以下がおすすめです。


5本枯節の価格

本枯節の価格の設定は、1本あたりの価格と、重さで価格を決める2種類あります。

本枯節の大きさや原料の種類にもよりますが、1本1,000円~5,000円程になります。

重さで価格を設定している場合は、作り方や原料の種類にもよりますが、100g当たり800~2,000円程度になります。


6まとめ

本枯節は、美味しくするために古来より製法で守り続けられた世界に誇る伝統食品です。製造から製品になるまで時間がかかることから職人が減ってきました。

削り節として流通している鰹節は、ほとんどが荒節になってきています。荒節も魚の風味が強く美味しいのですが、本枯節のコクのある透き通ったダシは格別な美味しさになります。

本枯節の価値が分かることが本枯節を守っていくことになります。

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