枯れ節は、鰹をボイルして燻製にした鰹節にカビを付けた節の事を言います。
鰹節は、削ってお好み焼きにかけたり、おひたし等にかけて食べるイメージもありますが、枯れ節はダシとして使用する事がメインになります。
枯れ節の削り節は、カビの付いていない節よりも上品で節の風味が強くなります。鰹節以外の枯れ節の紹介をしながら、購入時に後悔しないための情報をお伝えします。
目次
1.枯れ節とは
カビを付けた節の事です。カビと言っても、鰹節用の良性のカビになります。
カビを付ける効果は、水分の低い鰹節の水分を更に抜き、鰹節のタンパク質やアミノ酸を分解し、旨味や香りを増していきます。
カビを付けることにより、長期保存が可能な食品になると共に、更に美味しい鰹節に仕上げていきます。
時間をかけてゆっくりカビを付けますので、完成までに3か月~半年以上かかります。この完成までの期間の差は、カビを付けて取るという作業の回数によります。カビ付けの回数が多いほど、高級な鰹節とされています。
1-1.枯れ節と荒節の違い
鰹節の中には、皆さんが良く目にする枯れ節の他に荒節(あらぶし)という鰹節が」あります。簡単に言うと荒節は、枯れ節のカビを付ける前の鰹節の事を言います。
下記が荒節と枯れ節の比較表です。
荒節は、鰹をボイルにして燻製にしているので、見た目が黒く表面がざらざらしています。
枯れ節は、荒節の表面を削りカビを付けていますので、表面はカビの茶色で覆われており、カビの下は比較的つるつるしています。
味は、荒節が燻製の香りと、魚の旨味を強く感じることが出来ます。
枯れ節は、カビを付けることで脂肪を分解していますので、荒節よりもすっきりとしたダシを味わうことが出来ます。
1-2.枯れ節の種類
枯れ節というと、鰹節のイメージが強いのですが、鰹以外にも枯れ節の種類があります。
①.本枯れ節
鰹を4つ割にした荒節の表面を削り、カビを付けてカビを取る作業を2回以上行った節を「本枯れ節」といいます。手間と時間がかかり、職人も減ってきていることから、製造量は年々減ってきています。
②.枯れ亀節
鰹を3枚に卸し、半身の状態で枯れ節の加工をした節を「枯れ亀節」と言います。小さいサイズの鰹を亀節にします。脂肪が少なく、すっきりしています。
③.枯れ宗田節
宗田鰹を鰹節と同様にボイルして燻製にした後に、カビを付けた節になります。高知県の土佐清水が一大産地になります。鰹よりも血合い部分が多く、ダシにするとより魚を強く感じます。
④.枯れ鯖節
鯖の頭と内臓を取り、ボイルして燻製にした後に、カビを付けた節になります。
3枚に卸して割った状態の「枯れ割り鯖節」もありますが、ほとんどが1匹を使った丸鯖にカビを付けた、「枯れ丸鯖節」が主流になっています。
2.枯れ節が出来るまで
枯れ節は、荒節の表面を削り、カビ付けと天日干しを繰り返した完成に長い日数がかかる鰹節です。ここでは、作るまでに一番時間と手間がかかる本枯節の製造を紹介いたします。枯れ節の製造を簡単に説明すると
①生切り→②煮熟(しゃじく)→③骨抜き→④修繕→⑤焙乾(ばいかん)→⑥カビ付け
になります。下記から鰹節の枯節である「本枯節」が完成するまでを詳しく説明していきます。
2-1.生切り
専用の包丁で鰹を切っていきます。主に3本の包丁を使います。左から頭切包丁・卸包丁・身卸包丁になります。左の頭切包丁から使用していきます。
①.頭切
まず、頭を切り落とします。頭切包丁を使い、鰹のエラに親指を入れてまな板に抑えつけます。鰹の腹側の首元から頭切包丁で押すように切り込んでいきます。
包丁を入れていくと背骨の所で止まるので、そこから背骨に沿って斜めに切り落としていきます。
②.ハラモ切り
頭を落とした鰹のハラモの部分を切り落としていきます。卸包丁を使用します。
鰹節は、脂が多いと燻製にした時に固まりません。ハラモの部分は鰹の身の中でも一番脂が多く、鰹節にしていく時にボロボロしてしまうので、切り落とします。
鰹のへそのあたりから斜めに両サイドから切り込みを入れていきます。
③.3枚に卸す
ヘソの下から尾にかけて切り込みを入れます。
背びれの部分を卸包丁で剥ぎ取るように切り込みを入れます。
背びれを切り落としてから、中骨に沿って卸包丁を差し込んでいきます。
鰹の尾をつかみ、卸包丁を貫通させます。
中骨を中心に切り込んでいく事で、鰹の身が2枚と中骨の3枚に別れます。
④.合断(あいだち)
3枚に卸された鰹の半身を中骨のあった辺りに沿って、包丁を入れていきます。ここでは身卸包丁を入れていきます。
合断をすると、鰹の背中の部分とお腹の部分に別れます。鰹節になると背中の部分を雄節(おぶし)、お腹の部分を雌節(めぶし)という呼び方になります。
合断をすることで、1本の鰹から4本の鰹節が出来る事になります。
2-2.煮熟(しゃじく)
切った鰹をボイルする工程になります。煮熟することで、鰹の腐敗が防止されるとともに、タンパク質を凝固し節が硬くしまります。
①.籠立て(かごたて)
合断された鰹をセイロの上に揃えて並べていきます。重ならない様に並べることで、煮熟の工程でムラが無く均等にボイルされます。
②.ボイルする
セイロごと沸騰した釜に鰹を入れ、ボイルします。鰹の大きさや季節で時間は変わりますが、概ね95℃以上で1時間半~2時間以上ボイルします。
煮熟された鰹は、中まで火が通り白っぽく茹で上がります。
2-3.骨抜き
煮熟された鰹の骨を抜きます。煮熟された鰹は身がもろくなっていますので、丁寧に扱います。
毛抜きに様な器具で、骨をつかんで抜いていきます。特にあばらの所にある7枚骨(しちまいぼね)は、太い骨ですので、残さないように抜いていきます。
水の中で骨を抜く「水骨(みずほね)」と「おか骨」があります。
2-4.修繕
鰹のすり身を使い鰹の形を整えます。ここまでの作業で、鰹の身がかけたり、割れが出てきた個所をすり身を塗ります。
鰹の身を練って、すり身を作ります。すり身を鰹の欠けたところやヒビのある所に塗ります。
2-5.焙乾(ばいかん)
鰹を燻製にする工程になります。薪を燃やして鰹に煙と熱をあてて水分を飛ばして燻製にしていきます。燻製は約3~4週間かけて行います。燻製の香りを付けながら中まで水分を抜いていきます。
焙乾の方法は主に3種類あります。「焼津式乾燥機(やいづしきかんそうき)」、「急造庫(きゅうぞっこ)」、「手火山式(てびやましき)」になります。
以下では、日本古来からの焙乾方式である手火山式で紹介していきます。
薪はクヌギやナラ等の硬い木を使用します。焙乾する時に一気に燃えずにゆっくりと燃える木を使用します。暫く薪を干して置き、燃えやすい状態にしておきます。
かまどに薪を入れて火を付けます。
薪に火をつけたかまどの上に、鰹を乗せたセイロを重ねておきます。セイロの中の鰹に燃えた薪の熱と火があたります。
下のセイロの方が熱と煙が強く当たりますので、しばらくしたらセイロの上下を入れ替えます。上下を入れ替えることで、全てのセイロに均等に熱と煙が当たるようにします。
かまどで数時間燻製にした後、かまどから下ろし休ませます。これを「あん蒸(あんじょう)」といいます。
燻製し続けると、表面の水分ばかり飛んで、中の水分が残ってしまいます。休ませることで中の水分が水分の低い表面に移動していきます。あん蒸を繰り返すことで中まで水分が均等に落としていく事が出来ます。
焙乾とあん蒸を繰り返していくと、表面が黒く燻製され硬い状態になります。
ここまでの工程で「荒節」の完成になります。市場に回っているほとんどの鰹節の削り節が荒節を使用しています。燻製の香りが強く鰹の旨味が強い鰹節になります。
2-6.表面削り
グラインダーで一本ずつ表面を削っていきます。
表面を削られた鰹節。
2-7.カビ付け
表面を削った荒節に優良なカビ菌を吹き付け、カビの発生しやすい温度と湿度の部屋に入れ、鰹節にカビを付けます。カビが鰹節の水分を吸い取り、鰹節の水分を更に低下させます。
湿度と温度の高い部屋に入れてカビを繁殖させます。
カビ菌を吹き付けてしばらく置いておくと表面にカビが付いてきます。
カビが十分についたら、カビを払って天日干しをします。天日干しをしたらまた湿度と温度の高い部屋に入れてカビを付けます。
カビ付けと天日干しを繰り返し、鰹節を更に乾燥させ熟成させます。繰り返すことでカビの色が薄緑色から茶色に変わってきます。
3回以上繰り返して水分が十分に飛んだら、本枯節の完成になります。叩くとカンカンという高い音がします。
3.枯れ節のおすすめ購入先
枯れ節は、宗田鰹や鯖の節もありますが、削る前の節の状態で販売されることはほとんどありません。
鰹の枯れ節の購入は、専門店でも購入できますが、インターネットサイトでは、色々な店舗の商品を見ることが出来ます。
お勧めの販売店とお勧め商品を紹介していきます。
3-1.思わず舌鼓
業務用鰹節の製造会社である当社「小林食品」の小売りサイトです。年間約1000トンの節類を加工している鰹節のプロが、厳選した本枯節を販売しています。
最高級本枯節鰹節 「男節・女節セット」男節1本・女節1本 8,640円
日本近海で1本釣りで釣り上げた鰹を、丁寧に本枯節まで仕上げた逸品です。特に大きい鰹で加工した物を選んでいますので、立派なサイズの本枯節です。大きいので削りやすく、贈答用にしても喜ばれます。
3-2.にんべん
本枯節の販売では、一番有名な会社です。日本橋を中心に店舗も数多くあります。サイトでは、本枯節をサイズや品質で分けてありますので、自分で気に入った本枯節を購入することが出来ます。
特吟味本節・背節290g 3,283円
真っすぐで大きいサイズの雄節(背中の節)になります。背中の節は、上品でクセの少ないダシを取ることが出来ます。
3-3.鰹節王マルサカ
鰹節の名産地である、鹿児島県指宿市の会社です。本枯節を自社で製造して販売しています。本枯節にこだわって製造している会社で、本枯節を購入するなら間違いありません。
一本釣り鰹本枯節「こころ節」1㎏ (鰹節の大きさにより3~5本) 6,480円
一本釣りをした貴重な鰹を半年かけて作った本枯節です。1㎏として販売していますので、大きさにより本数が違いますが、一本釣りの鰹を使用している本枯節としてはお得な商品です。
4.本枯れ節の花かつおのダシの取り方
削り節のダシの取り方を紹介していきます。削り節にはいろいろな種類がありますが、ここでは一般的な「花かつお」のダシの取り方を紹介します。花かつおのダシは、風味を重視する味噌汁やお吸い物に向いています。
色々な削り節のダシの取り方はこちら。
4-1.ダシ取りに必要な物
味噌汁を6杯分程度のダシを取る為に必要な物を紹介します。下記の準備で約800㏄のダシが取れます。
①水 1000 ㏄
②花かつお 40 グラム(ひとつかみが約10グラムになります)
③鍋
④ザル
⑤キッチンペーパーか布巾
⑥ダシを受ける鍋かボウル
4-2.ダシを取る
鍋に1000㏄の水を入れ沸騰させます。お湯がぐつぐつ泡立ってきたらOKです。
沸騰したら火を止めて、直ぐに花かつおを40グラム入れます。
鍋に花かつおを入れてそのまま10分待ちます。かき混ぜたり、押したりすると鰹節のエグミや苦みが出ますので、何もせず放って置くことが大事になります。
ザルにキッチンペーパーか布巾を敷き、ダシをこします。この時に、絞ってしまうと鰹節のエグミや苦みが出てしまいますので、そのまま放っておいて自然にダシが出切るのを待ちます。
これで花かつおの美味しいダシが800㏄取ることが出来ます。
より詳しいダシの取り方は元料理人がこっそり教える!削り節のおいしいだしの取り方を読んでください。
5.まとめ
枯れ節は、一般に流通している荒節に更に手を加えて製造した節です。普段目にする削る前の「鰹節」は枯れ節の印象が強いと思いますが、削ってある「花かつお」は荒節です。
枯節は、高級な鰹節として貴重な食材になっています。
カビを付けて熟成させた分、通常の荒節の鰹節よりも風味が強くなっています。スーパーで「枯れ節使用」と書いてある削り節を見かけたら、ぜひお試しください。
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