う~ん。「懐石料理」と「会席料理」。どっちがどうなの?食事の予約をするためにネットで和食のお店を検索すると、お店の紹介に「懐石」「会席」の2種類あって迷ってしまいますね。
料理の傾向は?どのような雰囲気?どっちが高級?あなたの疑問にていねいにご説明します。
もともと「懐石料理」とは「茶会の料理」をさし、会席料理は「宴会の料理」のことです。どちらも室町時代武士階級に発達した格式の高い料理「本膳料理」(ほんぜんりょうり)に端を発していますが、実際には大きな違いがあります。
楽しいひと時を過ごすために「懐石」と「会席」の本来の意味を理解したうえで、間違いのない納得できるお店を選びましょう。
目次
1.懐石料理とは「茶の湯の心を表現する」
1-1おもてなしの心
懐石料理は本来お茶会で茶を飲む前にいただく料理の事をいいます。茶道は日本を象徴する文化で、四季の移ろいや道具の美しさを通して「おもてなしの心」を表すことにあります。
正式な懐石料理は細かい決まりごとがあり、そのルールに従い、招待客を想って亭主(主催者)は趣向をこらします。「温かいものは温かいうちに、冷たいものはより涼やかに」できたての物を一品ずつお勧めることが大切とされています。つまり「おもてなし」のこころですね。
1-2「わび」「さび」を尊ぶ
茶会の食事である「懐石料理」は一服の「濃茶」いただくために磨かれてきた料理ですので、お茶の味が損なわないように油っぽいものや味の濃いものを避ける傾向にあります。見た目は質素でありながらも、「旬の食材」を使い季節感をともに楽しむ「わび」「さび」を尊びます。
1-3基本の形式は「一汁三菜」
茶道の流派や茶会の規模にもよりますが、おおよその流れは下の図の通りです。最初にご飯と汁もの、向付(むこうづけ)とよばれる料理が一人ひとり膳にのせられて運ばれます。
食事前
- 客一同は飯椀と汁椀のふたを同時にあける。
- 飯椀のふたを下に汁椀のふたを重ねて、膳の右側に置く。
- ご飯と汁を交互にいただく。
- この時点では向付には手を付けない
- ご飯を汁ものを食べ終えてから、亭主は客に酒をすすめる。
- 酒をいただいてから向付に箸をつける
食事中
7.亭主は2回目のご飯と汁ものを客にさしだす。
8. 客が食べ終えたら、亭主は煮物椀を各々の膳の前に置く。
(茶懐石において煮物椀はメインディッシュに相当する。)
9. 一汁三菜の最後「焼物」が向付の器に供される。
以上が茶懐石の基本である一汁三菜ですが、亭主の趣向により「預鉢」(あずけばち)、「強肴」(しいさかな)、「八寸」(はっすん)が出される場合もあります。どんな場合も食べ終える時間はお茶をたてるためのお釜のお湯が沸く時間に合わせるのが肝心とされます。
最後に器を拝見し、懐紙で食器を清めます。客全員が同時に箸を膳に落とし、食事の終りを亭主に伝えます。そしてあらためて亭主が立てたお抹茶をいただくのです。
懐石料理はあくまでもお茶をおいしくいただくための料理なのです。
1.会席料理とは「お酒のための料理」
2-1「会席料理」に決まりはありません
懐石料理が「お茶」のための料理に対して「会席料理」はお酒をおいしくいただくための料理です。そのためご飯と汁ものは最後に出されます。「先付」(さきつけ)「刺身」「煮物」「焼物」「揚物」を肴にお酒を十分楽しみます。お酒を楽しむのに細かい決まりごとは必要ありません。
また、会席料理のもう一つの特徴は見た目の華やかさにあります。器の使い方も自由ですし、野菜の飾り切りなど美しく演出されています。万人に好まれるお酒を味わうための料理であり、非日常性を楽しみます。
2-2「会席料理」の由来
簡素な「懐石料理」に対して「ハレ」(特別な一日)の料理として「会席料理」は始まりました。
もともと「会席」という言葉は江戸時代の献立の中に登場し、日常の食事とは違う贅沢な会食のための料理です。はじまりは室町時代に始まった格式のある「本膳料理」と「懐石料理」をもとに工夫を加えられて、新たな形式として今につながっています。
一名分ずつ膳にのせられ、盛り合わせはしません。この点は「本膳料理」の形式です。四季の素材を使い季節感を大切にする点は懐石料理の流れをくんでいるといえます。
3.今は「会席料理」が主流
現在、改まった和食の献立といえば「会席料理」が一般的で、日本料理店や旅館,宴会場では代表的です。しかし、「懐石」「会席」の語句は呼び方が同じこともあり混同されています。
3-1いまでは「懐石料理店」も「会席料理」を提供
以上のように私たちが「懐石」料理を食べる機会はほとんどないといってよいでしょう。でも店の紹介に「懐石」料理店と称する高級日本料理店も多数あります。不思議な思いからある老舗高級日本料理店にお尋ねをしてみました。以下はその抜粋です。
「当店はもともと茶会及び茶懐石の提供を主としておりましたのでそのなごりから懐石料理とうたっております。現在は、茶懐石の心得の「旬の食材」「素材の味を活かす」を受け継ぎながら、「お茶を楽しむ」お席から「お酒を楽しむ」お席に移行しています。
お料理は懐石料理ではご飯と汁を最初にお出ししますが、当店では最後にお出ししております。また、お客様が席につかれてから一品一品、温かい物は温かいうちに冷たい物は冷たいうちにお出ししております。」
「懐石」と「会席」の違いを理解したうえで、現代の客の好みを受け入れ献立を組み立てなおす。語句は違っても「おもてなしの心」は変わりません。
4.まとめ
簡素でありつつ客にどれだけ喜んでいただけるか趣向を凝らす「懐石料理」対して、「ハレ」の日の料理として非日常性を楽しむ会食として「会席料理」は始まりました。
場の雰囲気は違っていても主催者が客を「心配りを持っておもてなしをする」や「旬の食材を使う」、「素材の持ち味を活かす」、は共通です。本膳料理が時代を経て「懐石料理」や「会席料理」に変わったようにもてなしの形は変わりますが、もともとの意味を知ることはとても大切です。二つの違いを認識したうえで楽しい時間を過ごすため素敵なお店を選びましょう。
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