燻乾という言葉を聞いたことがありますか?燻乾は(くんかん)と読みます。
鰹節を製造する工程の用語になります。
燻乾がどのような工程で、どのような効果で行っているかを詳しく説明します。
目次
1.燻乾とは
燻乾(くんかん)は鰹節を製造する時の工程です。文字通り燻製して乾燥させていく工程になります。
1-1.燻乾(くんかん)と燻製(くんせい)の違い
燻乾と薫製は、基本的な作業は一緒です。薪等を燃やし、煙をあてながら水分を飛ばしていきます。
違いは、燻乾は水分を抜くことを一番の目的とし、同時に薪を燃やした煙の燻臭を付けていきます。燻製は、燻臭を付ける事を一番の目的とし、同時に水分を抜きます。
① 燻乾(くんかん)
燻乾は、中の水分までしっかりと抜きます。そのために、「燻す⇒休ませる」を繰り返します。休ませずに燻し続けると表面ばかりが焦げて、中の水分が抜けません。
休ませる事で中の水分が表面に移動し、全体の水分がある程度均一になったところで、また燻します。これを何度も繰り返す事で全体的に均等に乾燥させる事が出来ます。鰹節が中心まで水分を落とすのには「燻す⇒休ませる」を4週間以上繰り返します。
中心まで水分が抜けて、文字通りの燻乾になります。燻乾することで、煙の殺菌効果と水分が低下することで、保存食になります。
鰹節の中は、周りと中心まで均等に水分が抜けています。
燻乾品の代表(鰹節・鯖節等の節類)
②燻製(くんせい)
燻製も、もともとは薪の煙の殺菌成分を食品の中心まで浸透させる保存食の製造方法でした。現在では、燻製の香りを付ける事で、より食品を美味しくする為の製法に変わってきています。
商品によりますが、表面と中心の水分を均等的に落とさずに、食品の表面に燻製の香りを付ける事を重視しています。
表面は燻製の香りで芳醇な味わいになり、表面の水分を低くすることで生の時よりも保存が効くようになります。
最近の商品では、ソーセージやハム、チーズ等表面に燻製の香りがついていて中はジューシーな商品が増えています。
燻製の香りを付けて、表面の水分を少し抜く事を目的としていますので、商品によっては30分程度で燻製作業を終えるものもあります。
燻製品の代表(ベーコン・ソーセージ・燻製卵等)
1-2.燻乾(くんかん)と焙乾(ばいかん)
燻乾と焙乾は、言い方が違いますが同じ意味です。どちらも鰹節を製造する時の工程になります。
鰹節を製造する会社によって、呼び方は変えていることもありますが、どちらも燻しながら水分を落とす作業になります。
最近では燻乾より焙乾と言う会社が多くなっています。
2.燻乾の効果
燻乾の効果に、①魚の生臭さを取り燻製の香りを付ける、②水分を抜き保存を効く様にする、③燻す事で煙の中のフェノール類物資が、鰹の脂の酸化防止の役目をする、の3つあります。
2-1.魚の生臭さを取り燻製の香りを付ける
燻すことで、魚特有の生臭さを抑える効果があります。燻乾に使用する薪は、クヌギやナラ等の堅い木を使用します。燻製のスモーキーな香りが生臭さを抑え、魚の旨味と燻製の香りが交わり、より芳醇な味わいになります。
2-2.水分を抜き保存が良くなる
時間をかけて燻す事で、中心の水分まで抜けますので、保存が効く様になります。燻乾は燻す⇒休ませるを繰り返し、中の水分までじっくりと乾燥させます。しっかり燻乾出来た鰹節は、冷蔵庫に入れておけば1年以上持ちます。
2-3.鰹の脂の酸化防止の役目がある
薪を燃やした煙にはフェノール類という成分が含まれており、鰹の持つ脂の酸化を防ぎます。魚の脂は、水分を飛ばして腐りにくくしても、酸素に触れる事で酸化が始まり、生臭い嫌な臭いに変わってきます。燻乾する事で、燻された鰹節の表面は酸化しにくくなり、鰹節の風味を長期間持続させることが出来ます。
3.燻乾方法
燻乾の方法は主に3種類あります。鰹節の燻乾方法として、①手火山式(てびやましき)、②急造庫(きゅうぞっこ)、③焼津式乾燥庫(やいづしきかんそうこ)があります。どの燻乾方法も薪を燃やした熱と煙で燻し、休ませるを繰り返す作業になります。
薪の種類は、硬くて一気に燃え上がらずにコトコトと少しづつ燃えるクヌギやナラ、桜等を使用します。
3-1.手火山式(てびやましき)
手火山式は、現在残されている燻乾方法の中で、最も歴史のある燻乾方法です。
下のかまどで薪を燃やし、上にあがる熱と煙で燻していきます。火が近く焦げやすいので、火加減や過乾燥に注意が必要です。
表面の水分が抜けてきたら、かまどから降し休ませます。休ませると中の水分が表面に移動し、全体の水分が均一になってきます。
休ませたらかまどの上に乗せ燻しを再開します。これを繰り返すことで、中まで水分をしっかり落とすことが出来ます。
火の位置が近いので、燻製の香りが強い鰹節になります。
3-2.急造庫(きゅうぞっこ)
急造庫(きゅうぞっこ)は、建物自体を手火山式にした方式です。
4階建ての建物で、最下層で薪を燃やし、2~4階にセイロに乗せた鰹を置き、下から上がってくる熱と煙で燻製を行っていきます。
ボイルされた鰹を、一番熱の強い2階に置き、乾燥していくたびに3階、4階と上に上げていきます。
2階の乾燥室から置く理由は、水分の多い鰹を熱が強い2階に置いて、鰹の水分を低くすると同時に、鰹に含まれていた水分が蒸気となって、上の階の鰹に熱と煙と蒸気をあてていくためです。
蒸気をあてる理由は、乾いた熱だけですと、鰹の表面が焦げやすくなるので、水分を含んだ熱をあてた方が鰹節が綺麗に仕上がります。
急造庫で仕上がる鰹節の特徴は、手火山式の様に燻製の香りが強い鰹節になります。
3-2.焼津式乾燥庫(やいづしきかんそうこ)
鰹節の産地である焼津で生まれた乾燥機です。現在では全国で使われています。急造庫と同様に、主流になっている乾燥方式です。
急造庫と違うのは、1つの部屋に入れて熱と煙を強制的にあてるところです。
先ず横の個部屋で薪を燃やします。薪が燃えた熱と煙をファンで吸い込み、強制的に鰹に当てていきます。常に強制的に熱と煙をあてますので、乾燥効率が良い方式になります。
鰹節工場によっては、乾燥効率の良い焼津式乾燥機で水分を飛ばしてから、急造庫で燻製の香りを付けるところもあります。
より詳しい燻乾は「鰹節を燻製する焙乾とは、焼津式を含む3つの焙乾方法を徹底解説」を参考にしてみてください。
また、こだわりの鰹節の作り方「【鰹節の作り方】生の鰹から堅い鰹節ができるまでの12の工程」を参考にしてください。
4.まとめ
燻乾とは、鰹節の製造工程です。鰹節の水分を低くすることと、燻製の香りを付ける目的があります。
燻乾を行うことで、鰹の美味しさが凝縮されると共に、保存食になります。
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