魚も肉と同じように熟成すると、食感が柔らかくなり、うま味が濃く感じます。
それは誰でも簡単に作れるものでしょうか?
実は、魚を捌いてほったらかせば、勝手に熟成してくれるわけではなく、プロの捌き技術、高度な温度・湿度管理も必要です。
まず、魚を熟成して、なぜ美味しくなる説明すると、魚筋肉中にいる酵素が、味のないたんぱく質をより小さくして、うま味となるアミノ酸へ変化させてくれるからです。この過程は、「熟成」と言います。熟成した魚はうま味となるアミノ酸が多くなるので、美味しくなります。
お家で熟成魚を楽しみたい場合は、取り寄せ先2軒
さらに、熟成魚の初心者の方には、スーパーの刺身を利用して、「熟成した魚」のお試し方法も紹介しています。是非、ご一読してください。
目次
1,なぜ魚は熟成させると美味しくなるのか?
新鮮な魚はコリコリした食感で美味しいですが、熟成するとうま味が凝縮し、味も濃くなります。鮮魚より柔らかい食感が得られます。
それは、筋肉中に存在している酵素が、たんぱく質が、うま味とつながるアミノ酸へ変化し、たんぱく質の繊維質構造を短く切断してくれるためです。
1-1、熟成の仕組み
熟成とは、タンパク質がアミノ酸へ変化することで美味しさを増すことです。
魚の熟成の仕組みとしては、魚の筋肉に持っている「酵素」が死んだ魚に作用し、味のない高分子のたんぱく質をより小さくてうま味のあるアミノ酸へ変える過程です。また、適切な湿度で水分を徐々に失われることで、うま味が濃くなります。
具体的に説明すると、魚の身肉には呼吸によって作られるATPというタンパク質が含まれています。筋肉や体温の維持、いわば生命活動を維持するために大きな役割を担っています。生きている間は筋肉が疲労しても、呼吸によってATPが補給され、また元の状態に戻ります。そのため、ATPは魚が生きていくためのエネルギー源ともいわれています。しかし、死んでしまって新しいATPが来なくなれば、細胞内の酵素が働いて、ATPを分解して、イノシン酸へ変えます。そのイノシン酸はうま味成分の一つです。そのため、熟成された魚肉はよりうま味が感じられます。この反応が、「魚の熟成」の仕組みとなります。
熟成が発生するタイミングは、死んで硬くなった魚がもう一度柔らかくしはじめる時です。
1-2、熟成の効果
熟成の効果は主に2つあります。
①うま味を引き出すこと、そして②肉を柔らかくする効果です。
1-2-1、うま味を引き出す
筋肉中の酵素は、たんぱく質をうま味のあるアミノ酸へ、グリコーゲンを甘いぶどう糖へ、エネルギー源のATP(アデノシン三リン酸)をうま味成分IMP(イノシンーリン酸)へ変えます。畜肉の場合は、脂肪は芳香性のある脂肪酸へと分解され、生の時は匂いを感じますが、加熱調理すると、それぞれの分解物がお互いに反応して、香りはさらに強まっていきます。
このような効果で、魚も、肉も、熟成されたもののほうが、よりうま味が感じます。
1-2-2、肉を柔らかくする
酵素が肉の繊維質(収縮性線維と言う)のタンパク質を支え、力を弱めていく働きがあります。さらに、肉の中に存在しているコラーゲンというかたい線維状のたんぱく質の結合も切断してくれます。調理していくと、より多くのコラーゲンが溶け出してゼラチン化するので、肉質がより柔らかくジューシーになります。
そのため、魚を熟成させると、たんぱく質が分解され、コリコリの食感から、柔らかい食感へ変わります。刺身でも、焼き魚にしてもおいしいです。
コラーゲンは、主に、骨や軟骨、腱、皮などの結合組織(細胞と細胞の間を埋めている組織)に存在し、細胞間の接着剤としての役割を果たしています。
1−3.魚の熟成と腐敗の違い
熟成よりさらに進行していくと、腐敗となります。魚の腐敗は、上記で出たATPが枯渇すると筋肉を構成するタンパク質のアクチンとミオシンが結合し、ヒポキサンチンを作り出します。ヒポキサンチンをたくさん作り出すと、強い臭気がして、腐敗となります。腐敗は、死後硬直後、硬直が解け終わってから始まります。さらに、魚の内臓や、保管場所など外部からの細菌の持った酵素によって、分解が進んでしまうと、腐敗となります。
ADP → AMP → IMP → HxP → Hxへと一方通行の自己消化反応が進みます。
2、熟成魚をより美味しく食べる2つのポイント
1,どのような魚を選ぶのか
2,どのような調味方法にするのか がポイントです。
2-1、熟成をおすすめする魚
基本的、すべての魚が熟成に向いています。魚体大きいほど、魚肉(たんぱく質)が多いので、うま味もたくさん分解できます。青魚のような「足が速い魚」は、プロの技術、専用設備があれば、熟成も可能です。
わかりやすく一言でいうと、「旬以外」の魚は熟成におすすめです。その理由は、旬の時期でない魚は脂が少ないので、熟成を加えると、うま味が増す、より美味しく食べることができます。
旬の魚は、熟成しなくでも脂のりが良いので、刺身にしても、焼き魚にしても美味しいです。特に、焼くことにより、脂が溶けてくるので、より美味しく感じます。もちろん、熟成してから食べるとより濃厚なうま味を感じます。
2-2、熟成魚におすすめの調理法
一番おすすめの食べ方は、刺身です。その理由は、加熱調理にともないイノシン酸分解酵素の活性があがり、旨味成分であるイノシン酸が減少してしまいます。また、熟成による肉の軟化と加熱による肉の変質とが相まって身がグズグズなってしまいます。
うま味を残すための加熱調理は、高温加熱がおすすめです。分解酵素が50℃以上になると変質し、分解の力がなくなります。そのため、低温の状態からできるだけ早く摂氏50度以上になるよう急速加熱すれば、イノシン酸が残すことができます。
3,プロの魚熟成の4つポイント
魚の熟成を成功できるには、4つの重要なことがあります。それらも家庭で簡単に魚熟成できない理由となります。
・傷みやすいところを取り除く
・空気を遮断
・湿度をこまめにチェック
・温度をしっかり管理
3-1、魚鱗、鰓(エラ)、内臓、血合を除去する
魚熟成の敵は、細菌です。そのため、魚肉は清潔さを保てる環境を作らないといけません。
魚鱗、鰓(エラ)、内臓を取り除くことは、細菌を減らすことにつながります。骨の中は血合や神経が入っていますので、プロの技で上手に取り除くことで、魚はより長い期間で保管でき、熟成を進めることができます。さらに、内臓の中には、「自己消化酵素」が存在していて、魚体自身を分解していきます。それらを取り除くことにより、より適切な熟成環境を整えます。
3-2、空気遮断
なるべく空気に触れないように、真空状態で熟成工程を行います。これで、魚肉の酸化防止と乾燥を防ぐことができます。また、空気中に浮遊している細菌の遮断もできます。
3-3、湿度チェック
熟成進行していくと、たんぱく質の壁が崩れ、肉の繊維質の隙間から水分やドリップが流れてきます。それらを取り除かないと、雑菌が生えやすくなり、腐敗につながります。表面の乾燥を保つだけではなく、腹からエラの内側までもしっかり管理しなければなりません。
3-4,温度管理厳しく
魚のタンパク質はより低い温度で固まりますので、より低い温度で熟成しなければなりません。魚によりますが、5℃~7℃が一番理想です。湿度と合わせて、熟成状況を確認しながら、調整しなければなりませんので、専門知識やプロの技術が必要です。
通常、肉中の酵素がより活発的に働くためには40-50℃の状態が良いですが、魚の場合は、たんぱく質がすでに固まり始める温度となり、逆に分解は進めることができません。
4,家に居ながら熟成魚を楽しめる取り寄せ先2選
魚は低い温度の中長い時間かけて、熟成していきますので、プロの専門店へ行けば、安全な熟成魚を食べることができます。取り寄せ可能の商品もあります。カット済みの切り身を真空パックした商品から、刺身用としてセット商品を届くまで、バリエーションもたくさんあります。
おすすめの熟成魚取り寄せ先2選を紹介します。
4-1、博多の魚屋さん「おぎはら鮮魚店」
「おぎはら鮮魚店」の商品は、お刺身用のおすすめです。主に、九州の天然魚となり、種類もたくさんあります。
熟練の技を用い、背骨の神経を抜き、締めることで、魚は苦しまずゆっくりと熟成できます。また、魚が苦痛を感じずエネルギーを消費しないため、旨みとなるアミノ酸が多く作れます。お刺身セットもあります。
4-2、神樂饗
「神楽饗」はマグロやブリのような大きな青魚もあります。商品は魚の切り身となり、低温熟成の漬け魚です。届いたら、焼くだけ熟成魚を楽しめます。
熟成魚という商品枠があり、単品とセット合わせて、15種類の商品が販売されております。
5,スーパーの魚でも熟成魚のうま味を味わえます
お家で魚を捌いて家庭用の冷蔵庫で熟成するのは、食中毒のリスクが高いので、おすすめることができません。しかし、スーパーでの調理済みの魚であれば、熟成魚を味わうことができます。それは、半額などのセールシールが貼ってある商品です。
5-1、お刺身用に
お刺身で食べるであれば、刺身コーナーの商品を狙ってください。
理由を説明すると、スーパーは、鮮魚が入荷してきて、調理師が魚の血合や内臓を取り除いて、刺身にしました。刺身なった商品は、パックしており、空気との接触が低減され、温度や衛生状態管理している専用冷蔵売り場に並べて販売しています。これで、魚熟成するポイントが揃っています。
最後に、「30%OFF」や「半額」シールを貼られた商品は、調理完了から割引シールが貼られた間は、「熟成」の時間となります。上記記述したように、魚のうま味成分―イノシン酸は、魚が死んだあとに徐々に作り出されますので、割引品となった刺身は、一番熟成条件に合った商品と言えます。
5-2、焼き魚に
刺身じゃなくでも、鮮魚も同様で熟成されています。しかし、生食用の調理方法で調理していないかもしれませんので、一気に高温加熱できる焼き魚などにして召し上がれば良いと思います。 このように、プロたちが時間かけて熟成した魚とは違いますが、ぴちぴちの鮮魚より柔らかい食感を楽しめ、より濃厚なうま味を味わう事が出来ます。
6,まとめ
このように、魚の熟成は、自分自身が持っている酵素を利用して、たんぱく質をアミノ酸へ分解し、より多くのうま味成分を作り出します。そのため、鮮魚と比べると食感が柔らかく、うま味が濃厚です。
魚を寝かせば、熟成になるとは言えません。
安心安全でおいしい熟成魚を味わうためにプロの技術が必要となります。
家で熟成魚を楽しみたい場合は、取り寄せ可能な商品があります。また、スーパーの割引品の刺身を利用して楽しむことが可能です。むしろ、熟成魚の初心者様には合うかもしれないですね。
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