和食の汁物ってどんな種類があるの?
小料理屋さんや料亭で必ず提供される料理が汁物(椀物)ですよね。
お店ごとに工夫を凝らした創作椀物や基本に忠実な汁物など、様々な味で私たちを飽きさせない味を提供してくれます。
でも、和食の汁物はちゃんとした構成が決まっていて、季節によって具材が変わっていくことをご存知ですか。
ここでは、和食の汁物がどのように構成されているのかと春夏秋冬で変わっていく和食の代表的な汁物と知っているようであまり知らない和食の汁物マナーを紹介させていただきます。
目次
1.和食の汁物は4つの要素でできている
和食の汁物というと鰹節や昆布などで味と香りを引き出した“出汁”がメインのように感じてしまいますが、実は和食の汁物となるのには必要な要素が4つあります。
それは、
- だし汁
- 椀種(具材)
- あしらい
- 吸い口(香り)
※あしらいとは、椀種に添えられる緑色の野菜のことで、料理全体の色彩を映えさせる効果があります。
例えば、絹さや・青菜類・いんげんなどの緑色の野菜です。
この4つ要素が交わることで相乗効果となり、和食の汁物は具材とだしの香りと旨みが口の中で絡み合い、見た目も美しい、おいしい汁物と感じられるのです。
また、料亭や小料理屋で提供される汁物には様々な種類があり、
・毎日口にすることが多い、だしと味噌を合わせた“お味噌汁”
・一番だしと少しの塩味で香りを強調した“すまし汁”
・魚の切り身や貝から直接だしをとりだす“潮汁(うしおじる)”
・かつおだしに酒粕を溶いて旨みを引き出した“粕汁(かすじる)”
・すまし汁に葛粉を入れてとろみをつけた“吉野汁(よしのじる)”
など、和食の汁物は種類が豊富です。
和食の汁物は、料亭で提供される料理に春夏秋冬があるように、提供される汁物も季節によって変わっていくのです。
2.春夏秋冬で変わる季節の汁物
汁物を食べるときにお椀の中に入っている具材が毎回同じだとちょっと飽きてしまいますよね。
和食を提供するお料理屋さんでは、お客さんを飽きさせないために毎回違う具材を使用することが多いのです。
和食の汁物を知るには、春夏秋冬ごとに獲れる具材を使うことがとても重要なのです。
春夏秋冬の季節ごとに収穫された野菜や魚などは、鰹節のだしと香りを邪魔しないようにやさしく下味をつけていることが多いのが特徴です。
今回は、季節ごとの汁物・椀物の一例を紹介いたします。
椀種に使う種類は、複数使っても問題ありません。
2-1 春
・鯛と菜の花のお吸い物
春の魚の代表であるマダイと春野菜の菜の花のお吸い物です。
この場合、椀種がマダイ、あしらいが菜の花となります。
春は野菜の種類の中でも緑色のものが多く、あしらいを取り入れる場合、どれを取り入れるのか迷ってしまうほどです。そんな時は、椀種本来の味を上回ってしまうような味や香りの濃いあしらい物を控え、椀種との味や見た目の相乗効果が得られるようなあしらいを使用することをおすすめします。
2-2 夏
・鱧(ハモ)のお吸い物
夏の代表的な魚介類と言えば、鱧です。
関西圏ではよく食べられていますが、関東圏ではなじみが薄い印象があります。
鱧はうなぎに似た細長い形をしています。
しかし、うなぎとは違い、身に細かな骨がたくさんあり骨自体が硬いのが特徴です。
この硬い骨を細かく切ることで料理した時の鱧の独特な食感になるのですが、この骨を上手に包丁で切っていくのがなかなか難しいのです。料理人は鱧切り包丁という専用の包丁で鱧の身を等間隔で切っていくのです。
写真の中に鱧の切り身が入っていますが、身が均等に切られているのが良くわかります。
夏の汁物は、この季節でしか味わえない旬の魚を味わうことがお勧めです。
2-3 秋
・松茸の土瓶蒸し
秋と言えば“実りの秋”と言われるほど多くの食材の収穫月となります。
特にこの時期の代表と言えば松茸です。
味と香りは独特で、人によっては好き嫌いがある食材ですが、収穫時期になるとテレビや新聞などでも「1kg〇〇万円!」とニュースになるほど、大変高価な食材であることが知られています。
この松茸の美味しさを一番感じられるのが、松茸の土瓶蒸しです。
土瓶蒸しには、松茸の他にも魚やあしらいが入っていますが、味と香りの存在感はどの食材にも負けないほどの旨みが強調されています。
秋の汁物で出されて一番うれしいのは価格も含め、松茸の土瓶蒸しが一番うれしい椀物といえます。
2-4 冬
さけの酒粕汁
冬は外気が冷たい分、温かい料理は最高のごちそうとなります。
特にこの時期、脂ののった鮭(さけ)と汁物の相性は最高の一品といえます。
また、汁物は出汁を強調したものだけでなく、酒粕を出汁に溶いて作る酒粕汁がお勧めです。
酒粕を入れると汁物にとろみが出て、通常の出汁だけの汁物に比べ、温度が冷めにくいことも冬場の汁物としてお勧めできる理由です。
3.和食 汁物マナー
お仕事やプライベートでちょっと高そうな料亭を訪れて、お料理を食べる時に少し緊張してしまいますよね。
和食のマナーは難しいと思いがちですが、実は案外と当たり前のことを言っていることが多いのです。
今回は、汁物・お椀物をいただく時のマナーをお話いたします。
3-1 お椀の蓋は丁寧に扱う
お椀の蓋は、お椀が右側にある場合は右奥。左側にある場合は左奥に置く。
会席料理で使われる器、特にお椀は高価な塗り椀を使っていることがあります。
椀物は料理の最初に出てくることが多く、これから提供される料理に華やかさを添えるような塗り椀や“侘び寂び”といったような静かなたたずまいからも威厳を感じるような塗り椀まで会食の目的や季節に合わせて提供されます。
このようなお椀は見ているだけだととても美しい物なのですが、提供するお店側としてはとても注意を払う品物なのです。塗り椀の塗料は衝撃に弱く、少し落としただけでも塗料が落ちてしまうことがあるのです。
特にお椀の蓋は、直接料理に触れるものではないため、お椀から離されるとあまり丁寧に扱われなくなってしまうものです。お椀の蓋も塗りが剥げてしまわないように丁寧に扱い、飲み終わった後のお椀の蓋は裏返してお椀に戻すのではなく、運ばれてきた時と同じ状態に戻しておきましょう。
食器の扱いを丁寧におこなうという意識が出ると動作が必然的にゆっくりとなるため、食事も落ち着いた雰囲気の中でとることが出来ます。
3-2 お椀の蓋の取り方と置くところ
お椀の蓋を勢い良く持ち上げるとお椀の裏側に付いた水滴が外に飛び出してしまいます。
早く召し上がりたい気持ちを抑え、ゆっくりと上に引き上げてください。
①左手を添えて右手で蓋を持ち上げる。
②蓋の内側に付いた水滴は、お椀の中に落とし、半月を描くように蓋を開ける。
③蓋はゆっくりと開け、お椀が右側にある場合は右奥。左側にある場合は左奥に蓋を置きます。
左側にお椀を置いたときは、左上に蓋を置きます。
右側にお椀を置いたときは、右上に蓋を置きます。
④お吸い物を頂く時は、お椀の中に箸を添えて中の具材が飛び出さないようにいただく。
⑤お椀を食べ終わったら、運ばれてきたようにお椀の蓋を正しく戻します。
お椀の蓋はひっくり返してはいけません。
お椀の蓋をひくっり返して置くのはマナー違反です。
4.まとめ
和食の汁物は4部構成で作られています。
①だし汁
②椀種(具材)
③あしらい
④吸い口(香り)
この4種類を上手に組み合わせることで、美味しい和食の汁物となります。
また、季節の食材を取り入れることで味や見た目に変化感じられ、いつもと違うおもてなし料理の一品となるのです。
今日の椀物に迷ったら、この記事を参考にしてください。
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