鰹節の輸出が難しい国とその理由を徹底解説

鰹節って外国に輸出できるのかな?

そう疑問に思ったことはありませんか?

結論として、鰹節は輸出する国の規制をクリアすれば輸出することができます。
ただし国や地域によっては鰹節を輸出するためには厳しい規制があり、
実際には鰹節がほとんど輸出できていない国や地域もあります。

この記事では、鰹節を輸出しやすい国や輸出しにくい国、そして実際に輸出するためにクリアすべき規制について説明します。
これを読めば、どうすれば鰹節を輸出できるか、輸出するためには何が必要かが解るようになります。


1.鰹節の輸出が難しい国がある

鰹節を輸出するには輸出先国の規制に対応する必要がありますが、その規制が厳しい国や地域があります。

水産物・水産加工品の輸出にあたり対応すべき規制鰹節の輸出のための規制(農林水産省 2020年)より抜粋
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/hq/i-9/attach/pdf/katsuobushi-1.pdf

 また上記の規制に加えて、鰹節には「焙乾」という工程で発生する「PAH」(多環芳香族炭化水素類)や「BaP」(ベンゾピレン)という物質を有害と捉えらることにより、一部の国への輸出に規制がかかっています。

この章ではこれら規制を踏まえた主要国の鰹節の輸出規制と必要な手続きについて説明いたします。

1−1.EU(ヨーロッパ)

 EU(ヨーロッパ)諸国は鰹節の輸出に最も厳しい規制のある地域のひとつです。
その理由は、

①鰹節を含む水産食品の輸出にはフードチェーンを通しての衛生管理が必要

②鰹節に含まれる特定の物質の基準の厳守

の2つの規制があるからです。
 
 ①について、フードチェーンとは原魚の鰹を捕獲する冷凍船から製造、保管を行う陸上の施設である市場や加工工場が該当し、それぞれがEU-HACCPの基準を満たして「EU認定施設」の登録を受けていることで輸出が可能になります。関わる施設が多く、それぞれが衛生基準を満たした認定施設で無ければならないという点で厳しい規制といえます。

 ②について、「PAH」(多環芳香族炭化水素類)と「BaP」(ベンゾピレン)という2つの物質の基準が設けられています。ともに鰹節を製造する際に発生する物質です。日本では基準を設けていないこれら物質を、EUでは有害物質としてとらえ基準が設けられています。
 このうち、「BaP」の基準の「5.0μg/kg以下」に対して、鰹節に含有される量が平均「24μg/kg」というデータ(※)があります。このため通常の方法で製造された鰹節では基準を満たさず、輸出ができません。
(※農林水産省「有害化学物質含有実態調査結果データ集(平成27~28年度)より)

 以上のことから、鰹の漁獲から流通、鰹節や削り節の製造に関わる全ての施設で衛生管理の認定を受けること、そして特別に「BaP」を抑えた製法で作られた鰹節でなければEUに輸出できないのです。
 なお2023/2/13時点で日本国内の鰹節・削り節での認定施設は4社のみとなっており、さらに鰹節(削り節でない塊、節原料)を製造する認定施設は2社のみです。

 EUへの鰹節の輸出の規制は厳しいため、現状でも輸出量は少ないです。

 鰹節に含まれる「PAH」や「BaP」を、EUなどでは発がん性がある物質として規制を設けていますが、その規制は食品に含まれる「濃度」で判断され、ハムやソーセージ等の加工食品と同じく一律に規制しております。鰹節の消費量がハムやソーセージなどと同等でないことを考えれば、摂取される物質の量は健康に問題のない量と考えられます。

1−2.アメリカ

 アメリカは比較的鰹節を輸出しやすい国といえます。
理由として、アメリカでは日本と同じく「PAH」「BaP」の基準値がないということが挙げられます。

 アメリカでもEUと同じく鰹節の輸出にはHACCPに基づいた衛生管理による認定施設の登録が必要ですが、施設認定は加工工場が取得していれば問題なく、漁船や市場での取得は不要です。
また「PAH」「BaP」の基準がないこともあり、日本国内では30社以上の加工施設が施設認定登録されております。
また、私ども「小林食品株式会社 田尻工場」も施設認定登録されています。

 実際にアメリカは日本からの鰹節製品の輸出額が第一位の国となっています。

1−3.中国

 中国は鰹節の輸出に厳しい規制があります。
理由は中国はEUと同じく輸出に「PAH」の基準値の厳守が必要な国だからです。
 
 中国への輸出には施設認定登録の必要がありますが、衛生管理等の実地の審査はなく書類提出で登録します。また加工工場が取得していれば輸出でき、原料の流通過程を遡った漁船や市場での取得も不要です。
 また、私ども「小林食品株式会社 田尻工場」も施設認定登録されています。

 ただし「BaP」の基準「5.0μg/kg以下」はEUと同等のため、通常の製造法で作られる鰹節をそのままでは輸出できません。
 そのため中国への鰹節製品の輸出額も少ないです。

1−4.韓国

 韓国は比較的鰹節の輸出がしやすい国です。
その理由は、施設登録が必要ないことと「BaP」の規制が緩いといえるからです。

 韓国には「BaP」の基準が設けられていますが、鰹節にあたる燻製乾燥魚肉は「10μg/kg以下」とEUや中国よりも緩いことに加え、乾燥によって変化した水分量を考慮とあるため、乾燥して凝縮した濃度を生鮮に換算することが出来ます。一般的な鰹節は水分20%以下であり、生の鰹の水分が70%程度であることから3-4倍(30-40μg/kg)に換算した濃度を基準とすると鰹節の実態値「24μg/kg」は基準値以下となります。

 以上のことから施設登録が必要なく、有害物質の基準が緩い韓国は鰹節を輸出しやすい国と言えます。


2.鰹節の輸出が難しい理由

 鰹節の輸出が難しくなる最大の理由が、鰹節の製造過程で発生する物質「PAH」や「BaP」が発がん性物質とみなされてしまう国があり、その国の輸入の規制に引っかかってしまうからです。主要国ではEUと中国が該当し、輸出が難しくなっています。

 またもうひとつの理由は厳しい衛生管理で、これはEUへの輸出時に該当します。EUの厳しい衛生管理は鰹節特有でなく水産製品の全てに求められていますが、漁船や市場まで衛生管理が求められ、施設の認定を受けなければならないという点で輸出が難しくなっています。

 国や地域によって規制がことなるため、輸出する際には国ごと地域ごとの規制を調べる必要があります。


3.鰹節を輸出するための方法

鰹節を輸出するためには国や地域の規制をクリアする必要がありますが、ここでは代表的な規制である施設認定と規制物質、その他の規制について説明します。

3−1.施設認定を受ける

 輸出国によっては施設認定を受ける必要があります。
 施設認定の条件が書類審査だけであったり、衛生管理の実地審査が必要であったりと国や地域によって異なります。
 また最も厳しいといわれるEUへの輸出にあたっては、最終加工施設だけでなく流通製造過程を遡って施設認定を受ける必要があるため、最終加工業者が仕入先を選定するといった必要もあります。
 どちらにしても各国が求める施設認定の条件を満たした場合に輸出できるため、輸出のためには施設認定について確認して対応します。

3−2.基準を満たした鰹節を使用する

 輸出国によっては鰹節製造時に発生する物質「PAH」「BaP」を有害とみなし、基準を設けている場合があります。
 その場合には基準を満たした鰹節を準備して加工や輸出をする必要があります。
 なおEUへ輸出する場合には「PAH」「BaP」の基準を満たした鰹節であっても、鰹節に加工されるまでの関連する全施設が施設認定されていないと輸出できません。それを踏まえるとEUへ輸出できる基準を満たした鰹節とは、「PAH」「BaP」の基準を満たしており、関連するフードチェーンのすべてが認定施設である鰹節、といえます。

3−3.その他の規制に対応する

 上記で紹介した規制以外にも、食品の輸出や外国で販売するために規制を確認する必要があります。
 たとえばイスラム教の国では「ハラル認証」というものが必要であるなど、です。
 また米国は比較的輸出がしやすいのですが、販売する州によっては州独自の規制への対応が必要になる場合もあります。
 これらの規制については、例えば日本貿易振興機構(JETRO:ジェトロ)などへ確認することで必要な手続きがわかります。輸出先のすべての規制を確認し対応することで輸出ができるようになります。


4.まとめ

 鰹節の輸出にはそれぞれの国の規制に対応する必要があります。
 国によっては施設認定が必要で、特に厳しいEUでは漁船や市場に遡って衛生管理を審査した施設認定まで求められます。
 またEUや中国では、鰹節特有の物質に対して厳しい制限がかかっており、通常日本で流通している鰹節が輸出できず、輸出への壁となっています。
 一方でアメリカは輸出が比較的容易で、実際に鰹節は多く輸出されています。

 鰹節を輸出したい場合には、メーカーや専門機関に必要な規制への手続きを確認して、適切に鰹節を輸出する必要があります。

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