日本には、地域独特の風土や食材、歴史、文化などに育まれ、受け継がれてきたさまざまな郷土料理があります。その中で煮物は、食材をだし汁や水、みりん、醤油、酒、砂糖などで柔らかくなるまで煮込む日本の伝統的な料理の総称で、関西では「炊き合わせ」、関東では「うま煮」とも呼ばれることがあります。
そんな煮物には煮つけ、煮しめ、含め煮など、様々な種類や名前があります。なんとなく使い分けているものの、詳しい違いはよく分からないという方も多いのではないでしょか。
そこで本記事では煮物の種類ごとの特徴をあげていき、その特徴の郷土料理は果たしてどんなものがあるのかそしてどうしたら食べることが出来るのかをご紹介していきます。
目次
煮物の種類とその郷土料理
1.1 煮つけ
少量の煮汁で甘辛く煮る料理のことで煮しめより短時間で煮上げるのが特徴。
1.1.1 金目の煮つけ (静岡県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
静岡県伊豆半島は金目鯛の産地であり、下田港は金目鯛の水揚げが日本一の漁港である。伊豆でとれる金目鯛は3種類で地金目鯛、島金目、沖金目があり、地金目鯛が最上級の金目鯛で脂のりと味が1番いいとされている。
金目鯛の旬は10月~3月下旬であり、一番脂がのり美味しい時期とされている。
ウロコ、エラ、ワタを取り除いた金目鯛を3枚におろした後、5等分~7等分の切り身にする。(頭は半分に割る)。酒、砂糖、醤油を合わせておいたたれを鍋にかけ、強火で沸騰させ、金目鯛と薄切りにした皮付きショウガを鍋に入れ、落とし蓋をして10分ほど煮詰め、切り身にツヤが出てきたところで火を止める。ハレの日の席では、切り身ではなく、姿煮にして大皿に盛り付ける。
[金目の煮つけを食べる事ができる場所]
お店の名前:“ひさ花”
静岡県熱海市にあり、金目の煮つけを食べる事が出来ます!
1.1.2 カスべの煮つけ (北海道)
(画像出典:農林水産省webサイト)
「カスベの煮付け」は、家庭で頻繁につくられている冬の郷土料理。「カスベ」は、北海道の方言で「エイ」という意味を持つ。軟骨魚類に属するカスベの骨は柔らかいため、身から骨まで残すところなく全て食べることができ、コラーゲンが多く含まれていることから、最近は美容食としても注目されている。
安価で手軽に調理が可能とあって、一般家庭では、冬の食卓のおかずとして出されることが多い。酒の肴としても人気が高い。
つくり方は、「カスベ」をぶつ切りにし、砂糖、醤油、酒、みりんで煮る。よく煮れば骨まで食べられる。冷めるとコラーゲンがかたまり、煮こごりになるので、そのまま木の芽をそえて皿に盛って食べても美味しい。
「カスベ」は日が経つと、臭みが出てしまうため、鮮度が命といわれている。煮付けで調理する際は、しょうがと一緒に煮ると、臭みがでにくい。
[カスべの煮つけを食べることが出来る場所]
お店の名前:“四季 武むら”
北海道札幌市にあり、カスべの煮つけを食べる事が出来ます!
1.2 煮しめ ※地域性あり
煮汁が残らないように味を十分にしみ込ませるのが特徴
1.2.1 宮崎県
煮汁が残らないように、じっくり時間をかけて煮ることを「煮しめる」といい、その調理方法から「煮しめ」と呼ばれるようになった。現在ではお総菜になっているが、もともとは祝い事や冠婚葬祭にはかかせない料理であった。お正月のおせちの三の重に敷き詰め、高千穂町では夜通しおこなわれる神楽奉納での振る舞い料理として提供されている。
各地域の具材も個性豊かで、例えば、出汁をとる素材だけでも、地鶏、いりこ、干しアジ、塩イワシ、昆布、しいたけ、猪、野鳥、海の幸、山の幸などさまざまなものが伝わっている。素材についても、県北部では干したけのこやしいたけ、県央部では鶏肉、西米良村ではイワシの丸干しと、地域によっても特色がある。
日常の食事においてもよく食べられているが、祝いの席など特別な日にはかかせない料理。お正月のおせち料理ではそれぞれの食材に意味が込められ、それらを一緒に煮ることから、“家族が仲良く結ばれ、末永く繁栄しますように“という願いが込められている。
しいたけ、里芋・たけのこ・こんにゃく・ごぼう・ぜんまいなどを、調味料(醤油・みりん・砂糖)と一緒に煮汁が残らないように時間をかけてじっくり煮つめる。余熱をしっかりとることで、さらに味がしみ込む。
地域ごとや、各家庭での個性がさまざまにあり、季節の野菜なども加え美味しく食べられ、故郷の味として親しまれている
[宮崎県の煮しめを食べることが出来る場所]
お店の名前:“郷の駅「石河内」鹿遊茶屋”
宮崎県児湯郡にあり、鹿遊定食で煮しめを食べる事が出来ます!
1.2.2 岩手県
煮しめは県内全域において、冠婚葬祭、正月、盆など人が集まる際に作る習わしがある。主な具材としては、煮崩れしないように焼き目をつけた豆腐や、にんじん、こんにゃく、ふき、しいたけ、ぜんまいやわらびなどの山菜、身欠きにしんなどを入れる場合が多い。身欠きにしんは江戸時代、北前船により運ばれ、内陸部の貴重なたんぱく源として重宝された。
煮しめの具材は地域によって異なり、奥羽山系・北上山系地域では塩蔵や乾燥させた山菜、凍み大根や凍み豆腐(高野豆腐)など保存食がふんだんに用いられる。特にぜんまいは山菜の中でも最高のものとされ、ぜんまいを切らずに煮る「ぜんまいの一本煮」も大事な行事の際に作られた。また、沿岸部ではソイやドンコ、アイナメ、ハモ(アナゴ)、鮭などの干し魚が入ることもある。
冠婚葬祭、正月、盆、端午の節句など人が集まる際に作られる。お重に詰めて持ち寄り料理として使われることも多い。現在では運動会などの行事や、作り置きのおかずとして「煮しめ」を活用している人もいる。
焼き豆腐、にんじん、こんにゃく、山菜などをしょうゆとだしで煮る。地域や家庭によって具材や切り方が異なり、内陸部では身欠きにしん、レンコン、マイタケ、春に収穫して塩蔵保存したヒメタケなどを入れることがある。沿岸部ではソイやドンコ、アイナメ、ハモ(アナゴ)、鮭などを「煮しめ魚」として干して保存したものを用いたり、出荷できないアワビを入れたりすることもある。
[岩手県の煮しめを食べることが出来る場所]
お店の名前:“いわて活菜横丁 結いの市”
岩手県盛岡市にあり、岩手県の特産物を扱っているお店で煮しめを食べられます!
1.3 含め煮
十分な量の煮汁を使い食材が柔らかくなったら火から下すのが特徴
1.3.1 くわいの含め煮 (埼玉県)
6月下旬から7月上旬に田んぼに苗付けをするくわいは、収穫期が11月末から12月中と短い食材。
越谷や草加、さいたま市などが産地で、全国で2番目に生産量が多い(農林水産省 平成30年「地域特産野菜生産状況調査」)。産地では多様なくわい料理が食されており、学校給食では新鮮なくわいを煮てからご飯と混ぜ合わせる「くわいご飯」が提供されている。そんなくわいの伝統的な料理のひとつが「くわいの含め煮」だ。縁起物であるくわいにあやかり、お正月などの祝い事で食べられる郷土料理である。くちなしの実を使い、鮮やかな黄色に仕上げる。
くわいは正月のおせち料理に欠かせない。大きく長い芽をつけること、塊茎(かいけい)の着生が、慈母が幼児に授乳する姿を連想させること、旺盛な生育を見せることなどから「おめでたい」「子孫繁栄」「健康で立身出世する」縁起物の食材とされているためだ。産地の埼玉県では、11月末から12月中に収穫される冬の野菜ということで、正月のみならず、冬の祝い料理に欠かせない一品として「くわいの含め煮」が愛されている。
水洗いしたくわいは、底から芽に向かって皮をむく。たっぷりの水で15~20分ゆでる。水を替えて竹串が通るまでゆでこぼす。鍋に酒や砂糖、みりん、塩、ほぐしてガーゼに包んだくちなしの実を加えて、ひと煮立ちさせる。そこに、ゆでたくわいを、芽を上にして入れて煮る。煮汁に漬けたまま冷まし、味を入れる。
[くわいの含め煮を食べることが出来る場所]
お正月やお祝い事で食べられる料理なため、くわいの含め煮自体の流通が少ないです。
通販やネットでの注文をしてみてはいかがでしょうか!
1.4 煮込み
十分な量の煮汁を使い弱火でじっくり煮るのが特徴
1.4.1 どて煮 (愛知県)
名古屋めしの代表格!旨みが濃縮された口どけほろほろの大衆食
牛すじや豚のモツを、味噌やみりんで煮込んだ庶民の味。「どて」とも呼ばれる。家庭や居酒屋で愛される名古屋を代表する料理のひとつで、大阪発祥の「どて焼き」から転じた料理ともいわれている。名古屋の味には欠かせない八丁味噌などの豆味噌・赤味噌が主に使用される。臭みのある臓物を甘い味噌で煮込むことで、くせがなくなり旨みが増す。とろけるほどやわらかくじっくりと煮込み、きざみねぎと七味唐辛子をかけて食す。どて煮をご飯にかけた名物「どて飯」もあわせて味わいたい。
[どて煮を食べることが出来る場所]
お店の名前:“どての品川”
愛知県名古屋市にあり、50年以上煮込まれている味噌だれが食欲をそそるそうです!
1.4.2 がめ煮 (福岡県)
定番のお惣菜は朝鮮生まれ?懐かしいお袋の味
鶏肉を里芋、ごぼう、にんじん、たけのこなどと一緒に煮込む、別名筑前煮。名前の由来は複数あり、博多の方言である「がめ繰り込む」(いろいろな材料を混ぜる)が短くなり、「がめ煮」と呼ばれるようになったという説や、文禄の役(文禄元年、1592年)に朝鮮に出兵した兵士たちが当時「どぶがめ(スッポン)」とその他の材料をごった煮にして作った「亀煮」から来たという説などがある。現在でも福岡県一帯で、慶事にはかかせない一品である。
[がめ煮を食べることが出来る場所]
お店の名前:“海鮮処松月亭 博多本店”
福岡県博多市にあり、コース料理で食べることが出来ます!
1.4.3 ぶり大根 (富山県)
出世魚「ぶり」を使う郷土料理は縁起がいい?
柔らかく煮た大根に熱湯をくぐらせたぶりを加え、しょうゆや砂糖、だしなどで味を調えて作られる煮込み料理。ぶりは成長に伴って何度も名をかえることから、出世魚と言われる。富山湾では良質なぶりが多くとれることから、ぶり大根や照り焼き、ぶりのあんじゃなます(ぶりを使ったなます)など、沢山のぶり料理が生まれ愛されてきた。富山の一部の地域では、娘の健康と娘婿の出世を祈願し、嫁ぎ先にぶりを贈る風習が今でも伝わる。冬に旬を迎える郷土料理として知られ、今では全国各地でよく食べられている。
[ぶり大根を食べることが出来る場所]
お店の名前:“本気家 桜町店”
富山県富山市にあり、数量限定ですがぶり大根を食べることが出来ます!
1.5 沢煮
白身の魚や鶏のささ身などを薄味のたっぷりの汁で煮たもの
1.5.1 沢煮椀 (愛知県長久手市)
沢煮椀はせんぎりに切った野菜と豚脂や鶏肉など多くの材料を使って作った汁物です。昔、多いということを「さわ」といったところからこの名がついたといいます。豚の背脂を細く切り、塩でよくもんで霜降りにし、せんぎりにしたにんじん、うど、みつば、ねぎなどの野菜とともにさっと煮て作ります。
給食では、豚の背脂のかわりに豚ばら肉を使い、だしをしっかりきかせて作ります。さっぱりとした口あたりなので、暑い夏でも食がすすみます。ぜひ、おためしください。
[沢煮椀を食べることが出来る場所]
一般的には愛知県長久手市の給食で提供されています。
愛知県ではないのですが、大阪市にある“割烹本郷”で食べることが出来ます!
1.6 煮浸し
食材を短時間煮たあとに煮汁を戻すのが特徴
1.6.1 なすのオランダ煮 (石川県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
金沢市では、地元で伝統的に栽培されてきた野菜を「加賀野菜」としてブランディングし、普及促進に努めている。加賀野菜の一つ、へた紫なすはその名のとおり、あざやかな紫色のへたと卵のような個性的なかたちが特徴。色つやの良い皮はうすく、身は柔らかく甘みがある。日持ちが良いともされている。
なすの収穫期になると食卓に上がるのが、「なすのオランダ煮」である。揚げたり、炒めたなすを甘辛く煮こんだシンプルな料理で、なすが丸ごと使われることが多い。ひと昔前は、もて余すほど大量にとれるなすの処理方法として農家で良く食べられていたという。へた紫なすを使うとあまり煮崩れしないため、なす本来の味を充分堪能できる。
長崎県を経由して伝わった西洋の調理法が「オランダ煮」の名の由来だといわれている。
なすが旬をむかえる夏から中秋にかけて、食卓に上がる。あっさりした風味なので、夏バテで食欲がないときでも食べやすい。「なすのオランダ煮」は、なすとそうめんを煮こんだ「なすそうめん」と並ぶ、夏の味覚として親しまれている。冷たくして食べることが多い。
へたの部分を切ったなすに切れ込みをいれて、沸騰させたお湯でアク抜きする。アクの出た汁はすべて捨てて、新たにだし汁を火にかけて醤油と砂糖とともになすを煮つめる。なすに充分味が染みたのを確認してから食べる。仕上げにおろししょうがや唐辛子をかける場合もある。
素朴でやさしい味わいで、柔らかい身と張りのある皮の、二つの食感が楽しめる。
塩漬けやぬか漬けにしてから丸煮する、「つけオランダ」もある
[なすのオランダ煮を食べることが出来るお店]
一般的に家庭で作られることが多いです。
石川県の民家に訪れてみてはいかがでしょうか!
1.7 あら煮
鯛の頭やかまの部分、またはぶりのかま、中骨など、魚のあらを使うのが特徴
1.7.1 鯛のあら炊き (愛媛県今治市)
愛媛県今治市という事で来島の鯛が使用されており、来島の鯛はきれいな海で豊富な来島海峡の急潮にもまれ、身の締まった鯛とされている。
通年美味しいですが、特に1月~3月が旬。
つくりかたは鯛のあらを沸騰したお湯にくぐらせて氷水でしめ、うろこや血を除きながらきれいに洗う。ごぼうは洗い斜めに切り鍋にあらとごぼうを並べお酒と水をいれる。落し蓋をして沸騰させ、沸騰後、砂糖大さじ1、濃い醤油大さじ3を入れ再び落し蓋をする。沸騰したら中火にして、千切りにした生姜を入れ、煮汁をあらの上にかけながら煮詰め、汁がなくなったら完成。
[鯛のあら炊きを食べることが出来る場所]
愛媛県今治市ではないのですが、大分県別府市にある“いけす割烹平家”でテイクアウトして食べることが出来ます!
1.8 うま煮
煮しめより甘く煮上げるのが特徴
1.8.1 鯉のうま煮 (山形県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
「鯉のうま煮」は、コイを輪切りにし、砂糖・醤油・酒で煮た郷土料理。コイはかつて内陸農村部で貴重なタンパク源として食べられていた食材。コイは高級品だったため、庶民はもっぱらハレの日にコイ料理を食べるのが一般的だった。米沢市周辺で養殖されたコイは、厳しい冬の寒さによって身も引き締まっていて質が良いといわれ、「米沢鯉」というブランド名で、米沢牛、館山りんごと並ぶ地域の名産品となっている。
「鯉のうま煮」がよく食べられるようになったのは、砂糖が入手しやすくなった日露戦争後と伝わる。ほか、味噌で煮こんだ「鯉こく」や切り身を冷水にくぐらせた「鯉のあらい」にしても食べられている。
現代では、主に年輩の方が食べるイメージがあるが、山形県では、正月やお盆、結婚式などの祝いの席に並ぶ一品として伝えられている。
コイは「来い、こい」と迎え入れられる喜びを意味しており、滝のぼりに代表されるように上昇を意味することなどから縁起の良い食材とされている。新鮮な海の幸が得やすい庄内地域よりは内陸部で食べられている傾向がある。
砂糖、酒、醤油などで甘辛く煮て食べる。鯉は新鮮なうちに料理するのが原則。胆のうをのぞいたすべての部分が食べられる。
[鯉のうま煮を食べることが出来る場所]
山形県のスーパーやお土産店などを訪れてみてはいかがでしょうか!
1.9 甘露煮
鮎、わかさぎ、小あじなどの小魚を甘辛く煮たのが特徴
1.9.1 小鮒の甘露煮 (長野県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
県の東部に位置する佐久市は、群馬県との境に位置し、田んぼで淡水魚のフナやコイを飼えるほどきれいな水源に恵まれており、田んぼで水稲と一緒にフナやコイを育てる「水田養鮒」や「水田養鯉」などがおこなわれていた。それまで副産物として収穫していたフナだが、水田転作の進展とともにコイよりも手がかからないフナを養殖するようになった。地元では、9月になると5cm前後の小フナが生きたまま袋詰めされて販売される。町ではあちこちで「小フナ」の文字が見られた。小フナは、醤油と砂糖で甘辛く炊いて甘露煮にされる。買ってきた(若しくは、田んぼでとってきた)小フナを、水を何度もかえながらきれいに洗い生きたまま小フナを鍋に入れて調理する。柔らかくなるまで炊いたら、ほかほかの新米と一緒に食べる。小フナの僅かな苦みに秋の訪れを感じる。
田植えが終わると田んぼへ稚魚を放し、稲と共にフナを育てる「稲田養魚」がおこなわれる。秋になり、米と共に水揚げされる。佐久市では、多い日で約3000袋(1袋1キロ)が県内のスーパーマーケットや東信地方の学校給食などへ出荷されるという。恒例の「フナ祭り」では、早朝からフナを買い求める客で賑わい、2日間で約1200kgを完売した年もある。毎年、小フナを楽しみにしている人も多く、佐久地域の秋の味覚とて親しまれている。
佐久地域の「小鮒の甘露煮」の特徴は、やはり小フナを生きたまま調理すること。小フナが跳ねるので飛び出さないように急いで蓋をしなければならない。焦げ付かないよう、母親たちは常に鍋のそばにいた。骨まで柔らかくなった「小鮒の甘露煮」は、ごはんのおかずや酒のつまみとして食されている。
[小鮒の甘露煮を食べることが出来る場所]
一般的に家庭で作られていることが多いです。
通販やネットで買ってみてはいかがでしょうか!
1.9.2 あいその甘露煮 (栃木県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
「あいその甘露煮」は初春に獲れたウグイ(あいそ)を甘く煮詰めた栃木県の郷土料理で、那珂川や鬼怒川などの大きな川筋で、春先に産卵のために群れるあいそを捕らえて食していた。若干骨っぽさを感じるため柔らかく甘露煮にすることが多い。
ウグイのシーズンは3~5月だが、春に産卵期を迎えると体に赤いしまができ、これがあいそと呼ばれる。春先に獲れたものはまだ小さくその分柔らかくて食べやすい。この時期に獲れたものを甘露煮にして食べたり、串刺しにして保存食にしていた。
3時間位弱火で煮ると骨まで柔らかくなるが、一気に煮るのではなく、夜2時間位煮たら火を止め、翌朝1時間位煮ると味がよくしみこむ。この時、鍋のふたは開けておくと臭みが抜けやすくなる。好みでショウガやみりん、水飴を入れてもよい。煮くずれしないように、煮始めたら鍋をゆすったり、箸を使ったりせずに煮込む。日持ちしないので、火入れしながら早めに食べきるようにする。
[あいその甘露煮を食べることが出来る場所]
栃木県さくら市にある荒川養殖漁業生産組合で買うことが出来ます!
1.10 照り煮
加熱した食材を砂糖や醤油の煮汁でさっと煮たのが特徴
1.10.1 鳥もつ煮 (山梨県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
「鳥もつ煮」とは鳥のレバー、砂肝、はつ、きんかん、ひもなどを甘い醤油のたれで煮詰めたもの。甘じょっぱい味付けで、お酒にも白ご飯にのせてもあうと今では居酒屋や定食屋、蕎麦屋などで定番になっているほど甲府市民の庶民の味である。「もつ煮」というと長時間煮込んだ汁もの印象があるが、「鳥もつ煮」はレバーなどを少量のタレで、強火にて短時間で照り煮し、鳥もつの旨味や甘みをぎゅっと閉じ込める独特の製法である。具材にある「きんかん」もその名の由来が面白い。
レバー、砂肝、はつ、きんかん、ひもの余計な部位を取り、それぞれ食べやすい大きさに切る。薄めの食塩水でしっかりと洗い、塩水を切る。フライパンに醤油と砂糖を強火で煮立たせて、濃い場合は酒か水でのばす。タレから少し泡が出てきたら、もつを入れ軽く混ぜて蓋をする。焦げ付かないように時々混ぜながら、フライパンのふちにタレがこびりつくようになったらできあがり。お好みでレタスや火を通したししとうなどと食べる。
[鳥もつ煮を食べることが出来る場所]
お店の名前:“甲州ほうとう小作”
濃いタレがもつに絡み込んで美味しいそうです!
1.11 炒め煮
食材を炒めてから短時間で煮るのが特徴
1.11.1 いもがらの炒め煮 (茨城県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
いもがらは、里芋などの葉柄の芋茎と呼ばれる部分を乾燥させたもの。
「いもがら」は料理に使うときには水で戻してから使う。「いもがらの炒め煮」や「けんちんそば」など、さまざまの料理で使われている。
常備菜として1年中通して食べられているが、「いもがらの炒め煮」は正月や祝い事などの人の集まるハレの時にも食卓に並ぶ定番料理。
また、北部地域では冬の時期になると「けんちんそば」を食べる機会が増え、いもがらは「けんちんそば」の具材として多く使われている。
乾燥したいもがらは水で戻すとふっくらとした食感になり味が良く染み、煮物やきんぴら、酢の物などに良く合う。
人参、れんこん、こんにゃく、油揚げと合わせて、たっぷりの煮汁で時間をかけて煮ることで、材料に味が染み込み美味しくいただける。
いもがらは味はないが、煮物や味噌汁などに入れることによって味が染みこみ美味しくなるので、さまざまな料理に合わせることができる。また、食物繊維が豊富で、食べるとシャキシャキとした歯ごたえが楽しめる。
[いもがらの炒め煮を食べることが出来る場所]
一般的に家庭で日常的に食べられていることが多いです。
通販やネットで買ってみてはいかがでしょうか!
1.11.2 いもの茎の炒め煮 (高知県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
高知県では、さつまいもやかぼちゃの茎を食べる食文化がある。茎といっても葉と茎をつなぐ「葉柄」の部分である。「いもの茎」料理といった場合は、一般的にさつまいもの茎でつくる。
さつまいもの茎は、夏野菜が手に入りにくくなる端境期(はざかいき)に食べられた。戦時中はおやつ代わりに茎を食べていたという。
高知県ならではの、茎を食べる食習慣はいまでも受け継がれており、多くの家庭でも親しまれている料理。家庭で調理しやすいように、下処理された茎も一般向けに販売されている。
茎はシャキシャキとした食感が特徴である。さつまいもやかぼちゃなど野菜によって茎の食感や味わいが異なるが、いずれも炒め煮や煮びたし、白和えなどに使われて食べられる。彩りがよいため、五目ずしの具とも相性が良い。
さつまいもの場合は、ツル状になっている茎の枝分かれした先の柔らかい部分を食べる。
さつまいもの茎の皮をはいで、下ゆでする。下ゆでした茎を鍋で炒める。軽く炒めたら、出汁で煮て砂糖や醤油などの調味料を加えればできあがる。仕上げに、小口切りした赤唐辛子を盛りつけても良い。
てんぷら(高知県では魚のすり身を揚げた「さつま揚げ」のことをてんぷらという)を入れて、アレンジすることも多い。
[いもの茎の炒め煮を食べることが出来る場所]
一般的に家庭で食べられることが多いです。
高知県のスーパーや直売店などを訪れてみてはいかがでしょうか!
1.12 つくだ煮
保存性を高めるために味付けを濃くし水分を飛ばすのが特徴
1.12.1 ごりの佃煮 (滋賀県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
「ごりの佃煮」とは、琵琶湖に生息する小魚であるゴリを佃煮にした料理である。また、北湖を中心に棲息しており、県内全域に広まった郷土料理である。「ごりの佃煮」は家庭の味というほどよく食されていたが、近年漁獲量が減り、ゴリは高級食材となりつつある。
ゴリとは、琵琶湖に生息するヨシノボリというハゼの仲間で、地域によってはウロリとも呼ばれている。また、ゴリは琵琶湖を代表する魚介類のひとつとして「琵琶湖八珍」に選ばれている。主に水深5~6mくらいに生息しており、体長は約1cm~3cmほどの小魚である。ほかの湖魚とは異なり砂地に潜っているため、日が昇らないと出てこないという。尚、初夏から初秋にかけて旬を迎えるため、ごく短い時期にしかとれない季節の魚である。特徴としては、身が柔らかく透き通っており、「ごりの佃煮」をはじめ、釜揚げや、スパゲッティに入れるなどさまざまな料理に使える。
ゴリの漁獲時期は初夏から初秋になるため、新鮮なゴリを使った料理は短い期間でのみ食すことができる。しかし、「ごりの佃煮」は加工食品としても販売されているため、手軽に購入でき、通年食すことができる。「ごりの佃煮」は、ごはんとの相性が良く美味しいため、「ごりの佃煮」の加工食品は、土産としても人気である。
鍋に、調味料を入れて煮る。煮立ったらゴリを入れ、沸騰したら粒山椒を加えてさらに煮る。みりんを加え全体に煮汁を濾して、仕上げる。
[ごりの佃煮を食べることが出来る場所]
滋賀県のスーパーなどを訪れてみてはいかがでしょうか!
1.12.2 にがうりの佃煮 (鹿児島県)
夏を感じる独特の苦みを、長く楽しむための工夫
にがごりとはゴーヤのことである。鹿児島の人たちは、照りつける真夏の太陽の下、棚いっぱいに広がったツルの間から顔をのぞかせている濃淡様々な緑のゴーヤの姿を、生命力の源として捉え、つくだ煮にして食べていた。
[にがうりの佃煮を食べることが出来る場所]
通販やネットで買ってみていかがでしょうか!
1.13 くず煮
煮汁に片栗粉などでとろみをつけるのが特徴
1.13.1 とうがん汁 (愛知県)
(画像出典:農林水産省webサイト)
愛知県は、とうがんの出荷量が沖縄に次ぐ全国第2位で、とうがん料理も広く浸透している。とうがんはインドが原産で、中国を経由して日本にもたらされたといわれる。奈良時代の文献にとうがんの記載があり、古くから食べられていた食材であったことがうかがえる。夏が旬の野菜であるが、皮が厚くかたいので冷暗所などで保存をすれば冬までもつほど日持ちの良い野菜だったため、“冬瓜(とうがん)”と名付けられたといわれる。
とうがんは淡白な味わいで味が染みやすいのでさまざまな料理に合うため、味噌汁や煮物、炒め物などさまざまな料理で使われている。数あるとうがん料理の中で親しまれているのが、とうがんに出汁がきいたあんをかけた「とうがん汁」である。
7月から10月のとうがんの収穫時期に食べられる。95%以上が水分のため、夏の水分補給になるほか、淡白な味わいのため食欲が減りがちな夏のメニューに重宝されている。冷やして食べたり、熱々にして夏の暑気払いとして食すこともある。
とうがんのわたをとり、食べやすい大きさにカットして皮をむいたら、とり肉としいたけなどの具材とともに出汁で煮ていく。具材に火が通ったら、片栗粉でとろみをつけ、馴染んだら食べる。とうがん以外の具材は家庭によって異なるが、出汁がよく出るものが好まれるので、油揚げを入れるのも人気である。
とうがんの皮は、口当たりをなめらかにしたい場合は、厚めに切ると良い。一方、皮を薄めに切ると、食感を楽しめるほか、皮の緑色が少し残り煮込んだ時の色合いが良くなる。
出汁は、カツオや煮干しでなく、干ししいたけの出汁でつくることが多い。
[とうがん汁を食べることが出来る場所]
愛知県のスーパーなどを訪れてみてはいかがでしょうか!
1.14 煎り煮
食材をかき混ぜながら加熱し水分を飛ばす特徴
1.14.1 まんばのけんちゃん (香川県)
冬場の香川県の郷土料理の代表的な料理である。まんばは、10月から4月が旬の高菜の一種で、独特のアクが特徴。県内全域で栽培されており、家庭菜園でも見かける。株の外側から葉を取っても次々と芽吹くので、「万葉」と名付けられた。同じ意味合いで千葉や百貫ともいわれている。東讃地域では「まんば」、西讃地域では百貫が訛って「ひゃっか」と呼ばれている。野菜の少ない冬に深緑や暗紫色の大きな葉を伸ばすが、寒くなり霜を何度も被ることで柔らかくなり甘みが増す。栄養豊富で、ビタミンCも多く含む。
けんちゃんは、細切り野菜の油炒めに豆腐を入れて炒めたしっぽく料理のけんちんがなまったといわれている。西讃地域では、豆腐を雪に見立てて「ひゃっかの雪花」と呼ばれている。
まんばは、家庭菜園でもよくつくられ、寒に入ると柔らかく甘みも増すので、冬場の惣菜として今も一般家庭で日常的につくられる。
まんばは、ゆでてから水にさらしアクを抜く。小さめの煮干しは、頭ごと加えると良い出汁が出る。大きい煮干しは、頭と内臓や骨をとってから使う。鍋に油を熱し、煮干しを香ばしく炒めた後刻んだまんばを炒める。豆腐や油揚げを加え、豆腐を崩しながらさらに炒める。最後に出汁や調味料で煮て味をととのえる。具材や味付けは、家庭によりさまざまである。
[まんばのけんちゃんを食べることが出来る場所]
香川県のスーパーなどを訪れてみてはいかがでしょうか!
1.14.2 いなごの佃煮 (長野県)
南信地域の伊那谷には、古くから昆虫食文化が根付いており、いなご、蜂の子、かいこ、ざざむしなどを食べる習慣がある。こうした昆虫類は、以前は少ない動物性たんぱくをとるための栄養補給源として食べられていた。群馬県など海産物が少ない山間地で食用とする地域がある。戦時中や戦後の食糧難では、いなごを食べてお腹を満たし生きるのに必要な栄養をとっていた。クロスズメバチなどの幼虫「蜂の子」は、日本各地の山間地を中心に多く食されており、炊き込みごはんや甘露煮などにして食べられている。長野県では「蜂追い(すがれ追い)」といって、森林内にあらかじめ餌を仕掛けておびき寄せたクロスズメバチに細い赤い糸を付けた餌を持ち帰らせるという伝統的な捕獲方法を使って、地中にある蜂の巣を探し出していた。昔に比べいなごの数も減少しており、生活や食文化の変化により各家庭で調理されることは少なくなってきたものの、今もなお伊那谷では昆虫食文化が残っている。
漢字で「稲子」と書くように、いなごは稲刈り時に収穫される。9月から10月にかけて稲刈りの時期になると、手拭いでできた袋を腰につけて、飛び跳ねるいなごを捕まえていた。
とってきたいなごを袋や容器に入れて一晩おき、お湯に通して洗う。洗ったいなごは、甘露煮や佃煮にすることが多い。
[いなごの佃煮を食べることが出来る場所]
長野県の道の駅やお土産店を訪れてみてはいかがでしょうか!
<参考文献>
まとめ
いかがだったでしょうか。
ここまで煮物の種類の特徴に加え、その郷土料理は何があるのかをご紹介してきました。
郷土料理の煮物には地域性があり、すごく歴史を感じましたね。
皆さんもこの記事を参考にして郷土料理の煮物について詳しくなって食べてみて下さい!
コメント