さば節をご存知でしょうか?
初めて聞くと違和感がありますよね。実はさば節は身近にいろいろな形で使われているんです
農林水産省統計部「水産加工統計調査」によると鰹節の製造量が27万トンにたいして、さば節は12万トンなんです。思ったより多いと感じるでしょう。
意外に身近なさば節について紹介します。さば節を知ると、ついついどこにあるのかさがしたくなりますよ。
1.さば節とは
さば節とはさばを乾燥させて硬くした食品です。
そのさば節の特徴から使われているシーンまで紹介します。
1-1.さば節の特徴
①さば節の形
さば節はこのような形をしています。
作られた季節にもよりますがおおよそ15センチから20センチくらいの大きさです。
画像のさば節はさば1匹を乾燥させたもので「丸さば」と言われています。さば節にはそのほかに割さばというものもあります。
割さばは丸さばの製造の途中に半分に割って中骨(なかぼね)を取り除いたものです。
②さば節の味わい
さば節の味の特徴は何といってもその味です。
さば節は脂質が多く、魚本来の味を楽しむことができます。表現としては‘コク’があるといわれます。コクとは味の濃さとも言い換えることができます。その味の濃さで、そばつゆのような強い味つけをするつゆのだしとして使用してもさばの味が残り、つゆが味わい深いものになります。
③さば節の香り
さば節には香りがあまりありません。
味が濃いのに香りが少ないため、単独で使用されることが少なく鰹節とあわせたり、いわしの煮干しとあわせるなどそれぞれの特徴あるものと一緒に使用することが多いです。
そばのだしですと「かつおのふし:そうだかつおのふし:さばのふし=1:1:1」で使用されることがあります。
だしの特徴で分けると
よい香り:濃厚なコク:コクと甘み
というような役割分担があります。
1-2.さば節になるさば
①さばの種類
さば節にはゴマサバが使われます。
日本近海では「ゴマサバ」と「マサバ(ヒラサバ)」がとれますが節に加工されるのはほとんどがゴマサバです。
おなかに斑点模様があるのがゴマサバ、ないのがマサバです。
②ゴマサバがさば節に適している理由は
ゴマサバの脂質がマサバよりも少ないことです。日本食品分析表によるとゴマサバが5.1g、マサバが16.8g(100gあたり)です。おおよそ3倍の差があります。
脂がのっておいしいといわれるように脂質はおいしさの重要なポイントですが、節を作るのには向いていません。マサバのような脂質の多い魚を節にするとその脂質が原因で節が硬くなりにくいのです。また、節にしてもだしをとったとき、濁りが出る原因となります。
ゴマサバはマサバよりも脂質が少なくだしも濁りにくいです。
③ゴマサバを選ぶポイント
さばは季節やとれた場所によって脂質が大きく変化する(少ないときは5%多いときは20%程度)ので節にするときには脂質がどれくらいあるのかというのが重要です。
見極めのポイントは魚の形です。
上のほっそりした形のものは脂質が少ないさばです。節にしたときに硬くなりやすいので削り節にするのに向いています。下のまるっとした形のものは削り節には向かないもののだしにするとコクがあります。

1-3.さば節が使われるシーン
さば節は削り節や粉砕品で使用されています。
大きく分けて二つの用途で使われます。
①だし
そばのだしやうどんのだしとして使われます。その理由はコクのある良いだしが取れるからです。
そばやうどんのだしは関東と関西で違うといわれていますがその両方で用いられることが多いです。関東では鰹節、そうだぶしと合わせて使用されることが多く関西ではイワシの煮干しムロアジ節と合わせて使われます。
どちらにしても豊かなコクはさば節からもたらされています。
ちなみに、さば節のだしが向かないこともあります。それはお吸い物になる場合です。お吸い物では少し味が強すぎるので敬遠されています。
なお、だしパックでも広く使われています。だしパックは使いやすく、後処理もしやすいので、使用されている方も多いと思いますが、裏面表示には‘さばのふし’が記載されています。
さば節はだしの場面で活躍しています。
②トッピング
さば節はかけても楽しむことができます。
最近では魚粉をふんだんにつかったラーメンがあります。その魚粉の中にさば節が使われていることがあります。いわしの煮干しの苦みの中に甘さを感じたならさば節を削ったものを細かくした粉が入っています。
魚粉といえば静岡県のおでんにかける『だし粉』と呼ばれる粉にもさば節の粉がつかわれています。
さば節のもつ甘さは味の濃いものにかけても負けない強さを持っています。
2.さば節と鰹節の徹底比較
さば節と鰹節を比較してみました。
2-1.だし
さば節(丸さば)と鰹節(荒節)をだしとり用として削ったものでだしを取り
比較をしてみました。
| さば節のだし | 鰹節のだし |
---|---|---|
見た目 | ![]() | |
味 | コクがある。 甘みを感じる。 すこし魚の臭さがある | すっきりしている すこししょっぱい 魚臭さは感じない |
香り | よわい。 わずかに魚の香りがする | しっかりと感じる 燻製の香りを感じる |
見た目で違うのが透明度です。さば節のだしはやや透明度が少なく鰹節のだしは透き通っています。味はさば節のだしがとても強いです。料理によっては主張しすぎてしまいます。鰹節のだしはすっきりとしています。
香りはさば節のだしはほのかに魚の香りがするのに対して鰹節のだしは燻製の香りと魚の香りがしっかりあります。さば節のだしは味と香りの強い醤油やみりんなどの味付けがあるめんつゆとして使われることで魚臭さの欠点を打ち消して、だしのコクをあたえることができます。
鰹節のだしは鰹節特有の香りを際立たせるためにお吸い物に使われたり和食の中でも繊細な(素材を生かすような)味付けのものに使われます。
2-2.削り節
削り節の比較をしてみました。
| さば節の削り節 | 鰹節の削り節 |
---|---|---|
見た目 薄削り | ||
味 | 甘みを感じる。 魚の脂の味がある | しょっぱい 魚の塩気がある |
香り | よわい。燻製の香り | 燻製の香りを感じる 鰹節特有の香りがある |
さば節の薄削りはうす茶色をしています。脂肪分が多い節だとさらに黄色が強くなります。鰹節の薄削りはピンクがかっています。しかし、空気にさらしておくとさば節のようなうす茶色に変化します。
厚削りはさば節が茶色に対して鰹節は赤褐色です。厚削りにすると魚体の大きさがはっきりわかります。
味を比べると、さば節の削り節は甘みを感じます。食感も柔らかいです。ただ個人差がありますが魚臭さを感じるかたもいます。鰹節は塩気を感じます。直接食べても魚の臭さなどは感じません。香りはさば節の削り節は弱く、燻製の香りを少し感じるくらいです。
鰹節は燻製の香りのほかにも鰹節特有の香りがします。また鰹節は熱が加わるとさらに香りが増す特徴があります。温かいご飯やたこ焼きなどにかけたときにより強く感じることができます。
2-3.栄養
栄養面で特に違うのが脂質の量です。脂質の量がさば節と鰹節の違いの一番大きなポイントです。
下の栄養分析の表をご覧ください。
| さば節 | 鰹節 |
---|---|---|
エネルギー | 360㎉ | 356㎉ |
水分 | 14.6% | 15.2% |
タンパク質 | 73.9g | 77.1g |
脂質 | 5.1g | 2.9g |
炭水化物 | 微量 | 0.8g |
食塩相当量 | 0.9g | 0.3g |
日本食品分析表より
鰹節に比べ脂質がおよそ1.8倍あります。
さば節の脂質は魚を獲った季節により大きく変動します。秋になると脂質が20%ほどになるケースもあります。そうなるとさば節として使いにくいです。鰹節はそういった季節の影響をうけにくいため一年を通して脂質は安定しています
この脂質からくるコク、味の強さがさば節の特徴といえます。
3.まとめ
以上がさば節の解説でした。
ぜひコクがあり味の強いさば節を取り入れてみてください。
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