「あー、この鰹だしおいしいなあ、いくらでも飲めそう。でも塩分大丈夫かなあ?」
料理中についつい味見が増えちゃうおいしい鰹だし。でも、鰹だしに含まれる塩分量って気にしたことありますか?家族のため、毎日の食事の塩分には気を付けていきたいですよね。
日本の伝統的な和食のなかにはみそや醤油、塩を使うことで塩分が多く含まれているものがあり、昨今世界中でその和食が注目される一方、日本人の食生活における課題として、「減塩」が取りざたされております。
私たち日本人が1日に摂取してもよい塩分量(食塩相当量)については以下の通りです。
表①日本人の1日当たり塩分摂取目安(食塩相当)
(「日本人の食事摂取基準」より)
年齢 | 男児、男性 | 女児、女性 |
---|---|---|
0~5か月 | 0.3g | 0.3g |
6~12か月 | 1.5g | 1.5g |
1~2歳 | 3g未満 | 3.5g未満 |
3~5歳 | 4g未満 | 4.5g未満 |
6~7歳 | 5g未満 | 5.5g未満 |
8~9歳 | 5.5g未満 | 6g未満 |
10~11歳 | 6.5g未満 | 7g未満 |
12歳以上 | 8g未満 | 7g未満 |
しかしながら塩分摂取の実態は、男性の一日当たりの塩分摂取量の目標が8g未満に対して、実態は平均10.8g※1というものでした。
また、料理していて塩分に気をつけるといっても、素材ひとつひとつにどれだけの塩分が含まれているか知ってますでしょうか?
たとえば、毎朝食べるみそ汁の「みそ」がしょっぱくて塩分が高そうだなっていうのはわかっていても、「だし」のほうにはどのくらいの塩分が含まれているか気になりませんか?
この記事では和食において重要な「だし」の原料の一つ「鰹節」にどのくらいの塩分が含まれているのかを「削り節そのまま食べる」場合と「だしをとった」場合にわけて説明いたします。
結論からいってしまえば、「鰹節の塩分量は気にする必要がない」ということになりますが…
では鰹節の塩分量と、私たち人間が摂取すべき適切な塩分量を理解して、「旨み」のきいたおいしい料理を家族にふるまいましょう。
目次
1 鰹節に含まれる塩分量と一日の塩分摂取目安
では鰹節に含まれる塩分量について、「削り節」で摂取した場合と「鰹だし」をとった場合に分けて説明します。
下記は鰹節に含まれる塩分量となります。
表②鰹節の塩分量 (「日本食品標準成分表」より)
鰹節の形態 | 鰹節の量 | 塩分量(食塩相当) |
---|---|---|
削り節 | 1g | 0.012g |
鰹だし | 100㎖ | 0.1g |
また、それらの塩分量が人間にとって多いのか少ないのか、成人の一日当たりの塩分摂取目安と比べて説明します。
1-1 削り節に含まれる塩分量と一日の塩分摂取目安
まずは、冷奴にかけたり、ほうれん草のおひたしに添えたりと、「削り節」そのままを料理に活用した場合にどの程度の塩分が摂取されるのか、私たちの摂取目安にたいしてどの程度の割合になるか説明します。
① 削り節に含まれる塩分量
表②より、鰹節の削り節の塩分量は1gあたり食塩0.012g分となります。
1食あたりの使用量としてイメージしやすいのは、スーパーなどで売られている小袋パックで、これにはおよそ3gの鰹節が入っております。冷奴にかけたりほうれん草のおひたしに添えたりするのにちょうどよいサイズだと思います。
この3gの削り節の塩分量は食塩0.036g分程度となります。
② 一日に摂取できる適切な塩分量
表①より、12歳以上の男性は一日に食塩8g相当未満を、女性は7g未満を目標とされています。
なお、12歳以上は中学生も大人も同じ量を摂取目安とされており、塩分摂取量については中学生から大人扱いとなっております。
③ 削り節には健康に影響するほどの塩分は無し
削り節に含まれる塩分量と成人の一日当たりの塩分摂取目安を比べると「削り節の塩分は健康に影響するほど含まれてはいない」ということが分かります。
削り節小袋1パックには0.036gの塩分しか含まれていないため、1日3食1パックずつ計3パックを食べても0.1g程度で、1日当たりの塩分摂取目安の1~2%しか含まれておりません。
大袈裟ですが、スーパーで売られている徳用の大袋100gを食べてしまっても塩分量は1.2gと、一日の摂取目安の15%程度です。
つまり、削り節は多少食べすぎたとしても、塩分摂取量に問題ないといえます。
1-2 鰹だしに含まれる塩分量と一日の塩分摂取目安
では、鰹だしとしてみそ汁や煮物に利用された場合の塩分量はどのくらいになるでしょうか。
また、私たちの摂取目安にたいしてどの程度の割合になるか説明します。
① 鰹だしに含まれる塩分量
鰹だしの塩分量は100㎖あたり食塩0.1g分となります。
鰹だしの1食分をみそ汁に含まれる鰹だしで説明すると、みそ汁1杯には150~200㎖のだしが使われる場合が多く、150~200㎖の鰹だしの塩分量は0.15g~0.2g程度となります。(みそ汁にはみそなどの塩分が含まれておりますが、ここでは鰹だしの塩分のみの説明とします。)
② 鰹だしにも健康に影響するほどの塩分は無し
表①の成人男性の一日当たりの塩分摂取目安と比べると、1日3食、鰹だしを150㎖ずつ飲んだとして0.45g分の塩分の摂取となります。
ただ、これは成人の1日の塩分摂取目安の6%であり、こちらも「鰹だしの塩分量は健康に影響するほど含まれてはいない」といえます。
2 大切な家族にとっての鰹節の塩分量
上記では成人の塩分摂取目安量を例に比べましたが、離乳食の始まったばかりのあかちゃんや、まだまだ体の小さなお子さんにとって、「削り節」や「鰹だし」の塩分量は健康に影響するのか説明します。
2-1 あかちゃんの一日当たり塩分摂取量目安
表①より、離乳食が始まるころ生後6か月のあかちゃんの1日当たりの塩分摂取目安は1.5g程度です。
「削り節」の小袋を大人と同じく1パック食べても0.036gの塩分量は、あかちゃんにとっての1日の摂取目安の2%程度となりますので、たくさん食べても過剰摂取にはならないでしょう。
ただし、小さなのどに詰まらせてしまう場合がありますので、離乳食初期は控え、なるべく細かい削り節をおかゆなどに混ぜた状態で食べさせてあげることをお勧めします。
また、「鰹だし」の場合、大人のみそ汁1杯分の半分程度の100㎖の鰹だしを飲んだとして、0.1gの塩分は、1日の摂取目安の6~7%程度です。3食で100㎖ずつ飲んだとして0.3gの塩分は1日の摂取目安の20%ほどです。
大人よりも割合は高くなりますが、それでも、「鰹だし」が大好きなあかちゃんがゴクゴク飲んでも、それだけで塩分の過剰摂取になるとはいえないでしょう。
したがって「削り節」「鰹だし」とともに、あかちゃんにとって過剰摂取となるほどの塩分は含まれておりません。
2-2 こどもの一日当たり塩分摂取量目安
表①より、12歳以下のこどもでは、塩分摂取目安がその体の大きさに応じて低く設定されていることが分かります。ただし、それでもあかちゃんや大人の場合と同じく、鰹節には過剰摂取になるほどの塩分は含まれていません。
小学校1年生の男児を例にとって説明すると、7歳男児では1日当たり5g未満が目安となっております。
食欲の旺盛な新1年生が削り節小パックを1日3食たべた場合の0.1gの塩分は、一日の摂取目安の2%しかなく、毎食鰹だしを150㎖飲んだ場合も0.45gの塩分は一日の摂取目安の9%しかありません。
したがって、「削り節」「鰹だし」とともに、こどもたちにとって過剰摂取となるほどの塩分は含まれておりません。
3 インスタント製品、調味料の塩分量
注意していただきたいのが、スーパーなどで売られている「インスタントの鰹だし」の塩分量です。今まで説明していた「鰹だし」は、削り節を湯で煮だして作ったいわば「天然の鰹だし」のことです。
以下は天然の鰹だしとインスタント製品やみそ汁に使う調味料(みそ)をみそ汁1杯分の使用量で塩分量を比較した表です。
表③ 鰹だし、インスタント製品、調味料の塩分量
食材、製品 | みそ汁1杯あたりの使用量 | 含有塩分量 (食塩換算) |
---|---|---|
天然の鰹だし | 150㎖ | 0.15g |
インスタント顆粒だし(A社) | 1g(150㎖分) | 0.42g |
減塩タイプインスタント顆粒だし(A社) | 1g(150㎖分) | 0.21g |
インスタント食塩無添加だし(B社) | 1g(150㎖分) | 0.15g |
インスタントみそ汁(C社) | 150㎖分 | 2.1g |
白みそ(米みそ、淡色辛みそ) | 10g | 1.24g |
減塩みそ | 10g | 1.03g |
3-1 インスタント製品の塩分量
表③より、インスタントのだしが天然の鰹だしの3倍程度の塩分を含んでいることがわかるでしょうか。
インスタント製品は味を調えるために食塩や化学調味料が添加されているため、塩分も高くなっています。減塩タイプでも多少の食塩が含まれていますので、天然のだしより塩分が高めになります。
あかちゃんや小さなこどもに鰹だしをあげる場合にはなるべく天然の鰹だしをあげるか、インスタントでも食塩無添加の商品を選びましょう。
3-2 調味料(みそ)の塩分量
また、みそ汁を作る場合には鰹だしのほかに、もちろん「みそ」を使用します。表③より、みそ汁1杯分のみそ10gには1g以上の塩分が含まれておりますので、みその塩分には注意が必要です。
さらにインスタントみそ汁には前述のインスタントだしが使用されている場合が多く、食塩添加や化学調味料によって味が調整されているために、塩分もかなり高くなっております。私が手に取った商品では1杯あたり、2.1gの塩分が含まれておりましたので、成人でも1日に何杯も飲むことは塩分の過剰摂取につながるといえます。
みそ汁を作る際にみその使用量を控えて、濃いめの天然だしで味を調整すると、うまみのよくきいたみそ汁ができ、減塩になります。チャレンジしてはいかがでしょうか。
まとめ
鰹節には健康に影響するほどの塩分は含まれておらず、削り節や鰹だしは日常食べる量であれば問題なく、多少食べすぎ、飲みすぎても大丈夫です。
ただし、一部の塩分が多量に含まれているインスタントのだしについては、あかちゃんやこどもにあげるのを控えること、成人でも多量に摂取しないよう気をつけ、「減塩」「食塩無添加」タイプを選ぶよう心掛けましょう。
塩分量の多い調味料に頼らず、天然の「鰹だし」を積極的に利用することで「旨味(うまみ)」が活きて料理の減塩につながり、大切な家族の健康を守ることができるのではないでしょうか。
※1 厚生労働省 国民健康・栄養調査(平成28年)
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