だしを取った後に残った鰹節のだしがらの処理に迷ったことありませんか?
捨ててしまおうかな?もったいないし、まだ食べられそうだし…
和食の世界には「二番だし」という用語があります。だしを取った後のだしがらをもう一度煮だしてだしをとる調理法で、和食の世界では一般的な用語です。
つまり鰹節のだしがらにはうま味がまだまだ残っているということです。うま味だけではありません。鰹節の栄養分はほとんど残っています。
おいしいだしを取った後の鰹節のだしがらはまだまだうま味と栄養が驚くほどいっぱい残っています。このだしがらを捨てるのはもったいないです。日本食の代表素材である「鰹節」を存分に使い切りましょう。
1.だしがらの栄養
鰹節はたんぱく質が豊富で脂肪分が少ない健康的な食材です。
だしを取った後のだしがらにも理論値ですが、たんぱく質では85%、うまみ成分のうちグルタミン酸は94%が残っています。鰹節の栄養素やうま味がまだまだたくさん含まれているわけです。
1-1鰹節のだしがら
だし汁860㏄が取れた時にでた「だしがら」の栄養成分(理論値)
食品成分 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 灰分 | 鉄 | グルタミン酸 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
| kcal | g | g | g | g | mg | mg |
かつお節/だしがら | 88.1 | 19.3 | ― | 0.1 | 0.2 | ― | 2740 |
だしがらに残っている割合 | 83.7% | 85% | ― | ― | ― | ― | 94% |
鰹節のだしがらの栄養成分を文部科学省の食品成分データベースを引用し、理論値として算出しました。栄養的にも調理するに値する結果が出ました。
計算方法は以下の通りです。
1リットルのだし汁を使用するのに30gの削り節を使用します。 そこからだし汁に溶け出した栄養成分を差し引くとだしがらに残っている栄養成分が推測されます。
かつお節の栄養成分は 文部科学省 食品データベースの数値を参照しました。
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 鉄 | グルタミン酸 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
100g当たり | kcal | g | g | g | g | mg | mg |
かつお節/薄削り節 | 351 | 17.2 | 75.7 | 3.2 | 0.4 | 9 | 9800 |
同じく「鰹節のだし汁」の栄養成分は
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 鉄 | グルタミン酸 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
100g当たり | kcal | g | g | g | g | mg | mg |
薄削り節/かつおだし | 2 | 99.4 | 0.4 | Tr | 0 | Tr | 19 |
かつおだしは沸騰水1ℓに鰹の薄削り30gを入れて弱火で1分煮出した後に削り節を除いたものです。
この煮だし方でおおよそ 860gのだし汁がとれます。
*「Tr」は「検出不可」と理解してください
その際に使用した薄削り節とできただし汁の栄養成分を実際の重さに換算し、それぞれの栄養成分は表のとおりです。
食品成分 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 灰分 | 鉄 | 換算重量 | グルタミン酸 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| kcal | g | g | g | g | mg | g | mg |
かつお節/削り節 | 105.3 | 22.7 | 1 | 0.1 | 1.1 | 2.7 | 30 | 2900 |
かつおだし/
薄削り節 | 17.2 | 3.4 | Tr | 0 | 0.9 | Tr | 860 | 163 |
あくまでも理論値ですが、もともとの鰹節の栄養分のうちたんぱく質85% エネルギー値も83.7%がだしがらに残っています。鉄分もだし汁に溶け出している量が検出不可となっていますので、かなりの部分がだしがらに残っていると思われます。
だしがらは魚の風味を味わうには十分すぎる状態ですし、栄養的にも捨ててしまうのはあまりにも残念です。これを調理しない手はありません。
2.鰹節のだしがらの種類
実は一口に鰹節のだしがらといってもだしをとる素材によってだしがらは3つの種類があります。「厚削り」「薄削り」「だしパック」の3種類です。だし取り用の鰹削り節は「厚削り」「薄削り」の2種類があり、この二つは両方とも鰹節から作られます。違いは削り節の薄さにより区分されます。
もう1種類は「だしパック」といわれる商品で水を通す不織布または丈夫に作られた紙にだしが容易に出るように細かく砕いた素材が入っていることがほとんどです。
2-1鰹厚削りのだしがら
①鰹厚削りのだしがらとは
削りぶしのうち、厚さ0.2mmを超える片状に削ったものをいいます。
写真はそば店など業務用で使用する厚削りで厚さ1mm、だし取り前で40g用意しました。一般的なスーパーで販売されているの厚削りは0.4㎜~0.6㎜が主流です。
②鰹厚削りのだしがらの使い方
厚削りのだしがらは刻んでハンバーグやかき揚げに使ってみてはいかがでしょうか。もちろん佃煮を作るのも鉄板の調理法ですね。
刻み方は笹の葉状に削られた削り節は魚肉の繊維が横長に連なっているので、
①まず最初にその筋を断ち切るようにできるだけ細く糸状に切ります。
②次に糸状に切っただしがらを端から刻みます。つまりみじん切りですね。
玉ねぎのみじん切りをする要領で切ります。
ここで細かく刻めば、刻むほど口当たりが柔らくなり、料理への応用が広がります。おすすめはハンバーグやてんぷらです。ハンバーグはひき肉を練る時に一緒に混ぜ込み、てんぷらは衣に加えます。
かき揚げを作るときにはぜひお試しください。いずれも香ばしさが加わり風味が増します。もちろん鰹節のうまみがいつもの味をさらに引き上げます。
2-2鰹薄削りのだしがら
①鰹薄削りのだしがらとは
薄削りとは削りぶしのうち、厚さ0.2㎜以下の薄いかつお削り節です。一般的には花かつおの名称がなじみ深いです。
ここでは1ℓのだし汁を取るために40gの削り節を使いだしを取りました。
だしがらの量はみそ汁のお椀にほぼ1杯になりました。
②薄削りのだしがらの使い方
毎日使うのなら煮物やみそ汁にお使いください。時にはあんかけの具にしてイメージアップ。薄削りのだしがらを使うには一度凍らせて切るのがポイントです。
そして調理は5分ほど加熱しておいしさを引き出します。調理方法は最初にうす削りのだしからも厚削り同様にみじん切りの要領で包丁を入れます。
この図は薄削りをいったん凍らせて半解凍させたものです。
半分凍っただしがらは包丁の滑りがよく、また薄削りに残っただし汁が染み出すことがないためこの状態が一番刻みやすいと思います。
薄削りのだしがらはもともとの削り節が薄く削られているので、神経質に細かく刻まなくても大丈夫です。
薄削りのだしがらは幅広い料理に使えます。通常鰹節を使う料理に具材として、たとえば煮物やみそ汁にお使いください。調理の秘訣はちょっと煮込むことです。香りはだし汁に移りますが、だしがらにはうま味が十分あるのでそのうま味を引き出すために少しだけ時間をかけた料理が適しています。
たとえば、薄削りのだしがらに水・醤油・みりんなどを加え5分ほど煮込みます。片栗粉でとろみをつけて豆腐や炒めた野菜、うどんにかければ、ひと味違うあんかけ料理ができます。
2-3だしパックのだしがら
だしを取った後のだしパックのだしがらは1回の調理から出る量がわずかなのでだしがらを調理に使うには合理的ではないでしょう。だしパックをすべて使うのなら、だしを取る前の状態で使いましょう。
①だしパックのだしがらとは
だしパックは「だし取り専用」としての使い方が合理的です。裏ワザとしてはだし取った後ではなく最初から使うのが無駄がありません。
商品の袋に表示されている原材料を見てみましょう。表は一例ですが様々な材料が使われていることがわかります。市販のだしパックのだしがらは内容物が商品によって違うため一概に表すことできませんが、もともとの内容量が少ないうえに食塩や調味料などを含むためだしを取った後のだしがらは少量になります。
上記2点のだしパックの場合、だしを取った後のだしがらを乾燥したところいずれも重さにしておおよそ半量になりました。
このことはラベルに書かれている原材料表示からも明らかです。上記の商品Aおよび商品Bは食塩などの調味料を多く含んでいるのがわかります。
つまり、だしパックのだしがらは1回の調理から出るだしがらの量が少ないので、料理への応用の機会も少ないといえます。
②だしパックだしがらの使い方
だしパックのメリットはすでに内容物がすべて細かい状態なので、中身をそのまま調理できます。また、だしパックは各製造会社において最高の味をめざして様々な材料を組み合わせています。
したがってそれだけで味が決まるように作られていますので、だしパックのだしがらを使うのならだしを取る前の状態で調味料として使うのが一番です。
もちろん、だしパックのだしがらも料理に使えます。ただし量は小さじ1杯ほどになるので、料理の隠し味として煮物などに入れてください。火を通す時間は薄削り同様に5分ほど煮込めばオーケーです。
古い調理本を見ると「一番だし」「二番だし」の説明がありす。一番だしはお吸い物や茶わん蒸しなどに代表されるうま味は当然として香り重視の料理に、二番だしはみそ汁や濃い味付けの煮物に向いているとの説明でした。そしてかつてはだしがらも大事な食材として当たり前に食べられていました。
現在のような飽食の時代でも「かつお」という命をいただくことに感謝し、鰹節の素材の特徴を理解して料理に生かすことはとてもゆかしいことだと思います。
素材大切にするだしがらレシピを、先人たちの知恵をもう一度学びましょう。
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