宗田節ってどうやって作っているのでしょうか。
自宅で美味しいそばが食べたいと思い、スーパーや百貨店で麺つゆを手に取った時に、宗田節と書かれているのを見たことがないでしょうか?
宗田節って聞いたことがあるけど実施にはどうやって作っているんだろうと感じてしまいますよね。
和食が2013年にユネスコ無形文化遺産として認められ、和食(日本食)が世界中の人々から注目されるようになり、和食の基本となる「だし」という言葉も注目され始めました。和食(日本食)の繊細な味付けは、だしの原料となる削り節の風味や味を活かした料理がベースとなっています。
ここでは、元板前で何年もだしを取ってきた私が、宗田節の作り方と美味しいだしを取るための方法をお話させて頂きます。
目次
1.宗田節の作り方
宗田節となるのは、ソウダガツオと呼ばれる魚です。
ここでは、ソウダガツオがどのように節として製造されていくのかを7つの項目に分けて、お話しさせて頂きます。
1-1 釜立て
水揚げされ、市場で購入されたソウダガツオは、宗田節製造工場へ運ばれると、お腹を上にした状態で、煮籠と呼ばれる網状の箱に並べられていきます。この作業を釜立てといいます。
どうして腹を上にするのかといいますと、腹側の身は柔らかく、次工程で煮熟(煮る)した際に自身の重みで腹側の身が割れてしまうのを防ぐために背側を下、腹側を上にして並べられていきます。この時サイズが大きいソウダガツオ(約350g以上)は腹に切り目を入れておくと、次工程の煮熟で火の通りが良くなります。
1-2 煮熟
煮籠に並べられたソウダガツオは煮熟といわれる工程に入ります。煮熟とはソウダガツオをお湯で煮ていく工程で、お湯の温度は約100℃もあります。
このお湯の中に煮籠に並べられたソウダガツオを入れていくのですが、ソウダガツオのサイズによってお湯漬け時間が変わってきます。120gから130gのサイズのもので1時間から1時間10分程。350gの大きいサイズですと1時間20分から1時間30分程度もかかります。ソウダガツオのサイズが大きくなるほど火の通りが遅くなるため、煮熟時間も長くなってしまいます。
1-3 セイロ取り
煮熟が終わるとセイロ取りと呼ばれる工程に移ります。
セイロ取りとは、宗田節になった時に不要となる物を取り除く工程です。宗田節となる際には、ソウダカツオの頭や内臓、中骨、ヒレなどは必要がないので、このセイロ取りの工程で、手作業で取り除かれていきます。
不要な部分を取り除かれたソウダカツオは、再びセイロに並び変えて、次工程の焙乾工程に進んでいきます。
1-4 焙乾
焙乾とは、ソウダカツオを燻していく工程のことです。
この作業をすることでソウダカツオの水分が飛んでいき、硬い宗田節ができあがります。
焙乾は、7日から10日間程かけてゆっくりと水分を飛ばしていくのですが、この時燻される煙で宗田節の良い香りが節に付けられていくのです。燻しに使われる薪は、桜やドングリの木などが使われるのですが、これらの木は木の密度が高いため、火力があり、長時間ゆっくりと燃え続けます。
1-5 選別
焙乾が終わると品質のチェックが行われます。選別といい、焙乾が終わった段階での宗田節のサイズ分けや宗田節自体の脂分(脂肪分)の違いによる振り分けがおこなわれます。
また、焙乾時などで宗田節の表面に異物が付いていないかのチェックも合わせておこなわれていきます。
1-6 天日干し
サイズや脂分(脂肪分)ごとに振り分けられた宗田節は、晴れた日に天日干しがおこなわれます。
天日干しは1日程度ですが、天日干しをすることで焙乾時の薫臭が柔らかくなり、宗田節でだしを取った時にだしに甘みが出てくるのです。
1-7 選別・検査
天日干しが終わると再度、サイズチェックと異物チェックがおこなわれます。1日天日に干されていたため、宗田節の表面に異物が付着していないか丁寧に外観を確認した後に、1本1本にダンボールに梱包されていきます。
ダンボールに梱包された宗田節は、削り節メーカーや節販売店に送られていきます。
2.ソウダガツオの呼び方
ソウダガツオは1年を通し漁獲されるのですが、時期によってソウダガツオの脂肪分が違うため、宗田節からだしを取った時に味に違いが出るといわれています。
これは、脂肪分が多いソウダガツオを宗田節にすると、だしを取った時にだしに脂肪分が溶け出してしまい、だしの旨味や色調に影響が出る場合があります。
もちろん脂肪分が多いとだしを取った時に影響が出やすいのですが、少なすぎても旨味を感じにくくなってしまいますので、程よい脂肪分が必要となります。
宗田鰹節の主要生産地である高知県土佐清水市では、年間を通してソウダガツオ(めじか)の呼び名が変わります。
これは、ソウダガツオの大きさと脂肪分をどの程度含んでいるのかが分かりやすくなり、宗田節作りの指標ともなります。
- 1月~3月・・・寒めじか(脂は少なく、理想的なだしが出やすいサイズ)
- 4月ごろ・・・産卵前で脂がのり始める
- 5月~7月・・・梅雨めじか(産卵を終えて、脂分が抜けたさかな)
- 8月~9月・・・笹めじか(子供のめじか。笹の葉状のような小型のさかな・脂肪分少ない)
- 10月~12月・・・秋めじか(笹めじかから大きくなり1.5倍程度のサイズ。脂がでてくる)
3. 宗田節のだしの取り方
宗田厚削りのだしの取り方についてお話しします。
3-1 宗田節のだし取りで準備するもの
準備するもの
- ①水が2リットル程度入る鍋
- ②ザル(口径が15cm~20cm程度のもの)
- ③キッチンペーパーか布巾
- ④取っただしを受けるボウルか鍋
ご家庭にある調理器具で代用可能です。
次に使用する宗田削りの量ですが、目分量は【水1000ccに対し、宗田厚削り40グラム】です。
この量でだし取りをすると、800cc程度のだしが取れます。お味噌汁にすると6杯程度のだしが取れる事になります。
宗田削りの美味しさは、香りとだしのコクです。
せっかく取っただしの味が薄くては、料理のおいしさも半減してしまいますので、この目分量を目安にだし取りをおこなってください。
3-1-1 宗田節のだしの取り方
早速、宗田厚削りでだしを取ってみましょう。
①鍋に1000ccの水を入れ、沸騰させる。
沸騰具合は、気泡がグラグラ沸いているイメージではなく、気泡がポコポコ沸いている状態です。
温度を測る必要はありませんが、鍋底から出る気泡の出方に注意してください。
②宗田厚削り40グラムを準備
③沸騰したら弱火にして宗田厚削りを鍋に入れる
沸騰したら火を弱火にして小さな水の泡がプクプクしている状態をキープします。アクが出たら取り除きます。
この煮だしの時間でだしの味と風味が変わります。目安は15分~20分間です。この時、注意するポイントは長く煮出すほど風味が弱くなり、水分が蒸発してだしの量が少なくなるということです。では、煮だし中にふたをすれば蒸発量を抑えられると思いがちですが、これはお勧めできません。
だし取り全般に言えることですが、ふたをしないことで魚特有の雑味や生臭さを飛ばしているからです。ふたをして香りと湯気を閉じ込めてしまうと、鍋の中に魚の雑味や生臭さが残ってしまいます。
④鍋を動かしたり、かき回したりせずに5~10分待つ。
火を止め、鍋の中が何も動いていない状態でしばらく待ちます。この時間にもじわじわとうまみが流れています。だしがらを菜箸でかき混ぜると魚の臭みが出てしまいますので、かき混ぜたりはしてはいけません。
⑤だしを濾す
だしを濾す時は菜箸を使い、初めに厚削りのだしガラを“ゆっくりと”取る事をお勧めします。その後、だし受け用の鍋やボウルに少しずつだしを移してください。
あまり鍋の中のだしをかきまぜたくない場合は、だしガラが入ったまま濾しても大丈夫です。
細かなだしガラも取ってしまいたい場合は、キッチンペーパーか布巾を敷いて、ゆっくりとだしを濾してください。
また、料理に使った後にだしが残ってしまった場合は、冷ましただしを製氷皿に入れ“だし氷”として冷凍保管しておくことをお勧めします。
4.宗田節の使い方
宗田節は香りも良く、コクのある旨味も感じる事が出来るので、香りと味を楽しめる煮物や鍋物・麺つゆなどで使用すると美味しさが引き立ちます。
5.まとめ
宗田節の主要生産地は、高知県土佐清水市です。
他の地域でも宗田節は製造されているのですが、あまり製造工程を目にする機会は少ないかもしれませんが、宗田節も鰹節と同じように製造工程が細分化され、一つ一つの作業が丁寧におこなわれていることが、だしを取った時のおいしさを感じる理由となっています。
尚、宗田節のだしは単体で使うということよりも、鰹節やサバ節と混合(合わせだし)としてだしを取る事で、更にだしの旨味を引き立たせますので、料理を作る際の参考にしてください。
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