お料理屋さんで魚料理が提供されたとき、「このお魚とっても美味しいけどなんていう魚なの?」と疑問に感じたことがありませんか?
せっかく美味しい魚と出会えたのに魚の名前や旬がいつなのかを知らないとちょっと残念な気持ちになってしまいますよね。
日本料亭や和食店で提供される魚料理は、近所の魚屋さんやスーパーなどで売られている一般的な魚から直接市場から仕入れた季節ごとの旬を迎えた魚など、様々な魚料理が提供されています。
ここでは季節ごとの代表的な魚の種類とおいしい魚料理の調理法をお話いたします。
目次
1.和食で取り入れるべき季節の魚
和食は見た目の美しさや美味しい料理を提供することも大切ですが、“おもてなし”の心もとても重要です。この“おもてなし”には、旬の食材を使うことも含まれます。
旬の食材と言われるものに“旬の野菜”とよく聞きますが、魚にも“旬の魚”があります。
ここでは、春夏秋冬で旬を迎える代表的な季節の魚を紹介します。
1-1 春に旬を迎える魚(3・4・5月)
・鰆
サワラは、魚に春と書くように春を代表する魚の一つです。
和食の焼き物や吸い物などに登場することが多く、一般によく知られる魚の一種です。また瀬戸内海では春の季節になると鰆が産卵のためにやってきます。特に岡山県では郷土料理の岡山ばら寿司などで鰆を使った料理も多く、サワラの値段は岡山で決まるとまで言われています。
鰆は、焼き物やお吸い物にももちろん美味しくいただけるのですが、脂ののった鰆の刺身は最高に美味しいので、おすすめです。
・鯛
和食の魚と言えば鯛と言われるほど、和食での登場回数が多い魚です。
お祝い事でも『めでたい』とのゴロ合わせが有名であり、尾頭付きで食卓に登場することも多いのではないでしょうか。
鯛と一言でいってもクロダイ・チダイ・ヘダイなどたくさんの種類がおり、なかでも真鯛は鯛の代名詞的な存在です。
鯛は和食の万能食材であり、椀物・煮物・焼き物・刺身・酢の物・揚げ物など、どんな料理にも登場します。
おすすめ料理は、鯛の天ぷら。
一説には徳川家康公が鯛の天ぷらが美味しくて、食べ過ぎたことが原因で亡くなったともいわれ、ふわっとした食感が後を引く美味しさです。
・鰹(初鰹)
鰹は春先になると日本沿岸の黒潮に乗り、餌となるいわしを追いながら南のフィリピン沖から日本の三陸沖に向かって北へ北へ遡上します。この春先に日本近海で獲れる鰹を初鰹(はつがつお)もしくは、のぼり鰹と呼びます。
初鰹は、比較的脂の乗りが少なく、さっぱりとした味わいが特徴です。
初鰹の刺身やタタキももちろん美味しいのですが、比較的脂肪分が少ないため、さっぱりとした酢のもの料理がお勧めです。
1-2 夏に旬を迎える魚(6・7・8月)
・鮎
初夏になると川魚の鮎もスーパーや魚屋の店頭に並び始めます。鮎は清流の女王とも呼ばれ、清流に身を躍らせて銀輪を輝かせて泳ぐ姿は、大変美しい姿をしています。日本の各地の川で見ることができる魚ですが、高知県の四万十川や岐阜県長良川の鵜飼などが有名です。
鮎は縄文時代の遺跡から骨が見つかるほど古くから食べられている魚で、現在では塩焼きや甘露煮、天ぷらなどの食材として食べられています。
おすすめの食べ方はやはり塩焼きです。
ふわっとした白身の食感と、水中のコケなどの珪藻類を主食とする鮎独特の香りを楽しむには最適です。
・穴子
すし種としてもよく知られる穴子の旬は6月から8月です。この時期の穴子は脂肪分が少なく、さっぱりとした味わいが特徴です。テレビなどの番組で「江戸前あなご」と言われることが多いのですが、日本各地の海で生息しています。
おすすめの食べ方は天ぷらです。
天ぷらは、素材を衣につけて揚げるだけのシンプルな調理法ですが、その分素材の旨みを強く感じることが出来るのです。穴子独特の香りと旨みを感じられる天ぷらがおすすめなのです。
天ぷらにする時に鮮度が落ちた穴子は匂いが出てしまうので注意してください。
・鱧(はも)
鱧の形はウナギに似ていますが、特徴的なのは鋭く尖った歯です。この歯から鱧の語源が来ていると言われ「歯持ち」がハモと呼ばれるようになったと言われています。
日本でも本州中部以南の各地の沿岸で獲ることが出来る魚ですが、京料理では欠かせない食材です。
鱧の身は特徴的で身の中の小骨が非常に多く、調理の際に手間がかかる食材の一つです。
料亭の職人はこの小骨を細かく切断するために専用の包丁(骨切り包丁)を使いながら、丁寧にした処理を行います。ご自宅で食べる場合は、小骨の下処理が済んだものを購入されることをお勧めします。
鱧の食べ方は、湯引きや焼き物、天ぷらなどがありますが、おすすめの食べ方は椀物です。
かつおだしとの相性も良く、独特の歯ごたえと鱧の旨みを感じることが出来る食べ方です。
1-3 秋に旬を迎える魚(9・10・11月)
・うなぎ
日本で食べられるうなぎは主にニホンウナギという種類で、古くから蒲焼や鰻丼として食べられてきました。近年では天然ものが少なくなり、養殖鰻が増えてきていますが、高価な食材なことは変わりません。
鰻と言えば『土用の丑の日』が有名で、江戸中期の蘭学者 平賀源内が「土用の丑の日に鰻を食べると滋養になる」と発言したことから土用の丑の日に鰻を食べる文化が広まったと言われています。
そんな鰻のおすすめの食べ方は、何と言っても“うな重”です。
脂ののった鰻はもちろんですが、うな重のタレとご飯もベストマッチです。愛知県では薬味と一緒に食べたり、お茶漬けにしたりと様々な食べ方でうな丼を堪能する「ひつまぶし」が有名です。
・鰹(戻り鰹)
春先に黒潮に乗り、餌のいわしを追っていた初鰹・のぼり鰹の群れは、秋口(9月頃)になると南下を開始します。この南下し始めた鰹のことを「戻り鰹」と言います。戻り鰹は餌を多く食べた後に南下を開始するので脂がのっており、初鰹に比べモチッとした食感が感じられます。
おすすめの食べ方は、鰹のタタキです。
エサをたくさん食べて丸々と太った戻り鰹は、火で炙り、表面に焼き色を付けることで脂が外に逃げ出すことを防ぎます。鰹のタタキのモチモチ食感はこの時期のごちそうなのです。
・サンマ
サンマと言えば落語の「目黒のさんま」に代表されるよう、秋の代表的な魚として広く知られています。また、さんまという字も“秋刀魚”と書くように秋の漢字が付いています。
さんまのおすすめの食べ方は、塩焼きです。
時間に余裕があれば、炭火で焼くことがお勧めです。脂ののったサンマが焼かれると濃厚な脂が炭火に滴り落ちその煙がサンマの表面を覆うことで旨味が増していくのです。
1-4 冬に旬を迎える魚(12・1・2月)
・アンコウ
アンコウは江戸時代の5大珍味の1つであり、現在でも高級食材の1つに数えられています。あんこうの魚質は淡白でカロリーも低い上にビタミンが豊富なため冬場の大切な栄養源としても取り入られてきました。
アンコウと言えば絶対に外せないのがアンコウ鍋です。
アンコウの肝を使うことで濃厚な味わいと旨味が感じられ、温かい鍋をいただくことで、体内の保温効果もあがります。
・金目鯛
金目鯛は赤い魚体と大きな金色の目が特徴的ですが、これは死後変色した時に見られるもので、釣り上げられたばかりの時の魚色は、ピンク色をしています。
静岡県伊豆半島での水揚げが多く、伊豆地域の特産商品としてブランド化されています。
金目鯛のおすすめの食べ方は、金目鯛の煮つけ(煮物)です。
冬場の金目鯛は脂がのっていて、ふっくらとした身と脂の旨みが強調された最高の煮つけといえます。
・フグ
フグには様々な種類がありますが、トラフグが一番耳にする名前ではないでしょうか。
このフグですが体の部位に猛毒をもっており、種類によっては内臓や皮膚、血液や身にも毒がある種類があります。釣ってしまった場合も食することは避けたほうが良いです。
どうしても食べたいときは、フグの免許を取得している職人さんにお願いし、調理してもらうことをおすすめします。
フグ料理とえば、ふぐ刺し(てっさ)・白子・唐揚げなど様々な調理法がありますが、私のお勧めは、ふぐのヒレ酒です。ヒレ酒は料理とはいえませんが、フグの料理を引き立たせる飲み物として最高の引き立て役であり、冬の冷たい風で冷えた体も温めてくれる最高のものです。
2.和食で食べられる代表的な魚料理のレシピ
和食には様々な魚が使われます。
中でも春夏秋冬ごとに旬を迎えた、美味しい魚たちの代表的な料理レシピをご紹介します。
2-1 煮るとおいしい『金目鯛の煮つけ』
魚の煮つけは、ほくほくとした身と食欲をそそる少し甘しょっぱい味付けが、ごはんの美味しいおかずとなります。今回は、冬に旬を迎える金目鯛の煮つけをご紹介します。
味付けは、金目鯛の煮つけ以外にも様々な魚の煮つけで転用できます。
2-1-1準備するもの
・金目鯛切り身 2切れ
・生姜5g 1/4程度
・白ネギ 20cm(5cm切り×4個)
・みりん100ml
・酒80ml
・水80ml
・濃口醤油大さじ2杯
・砂糖大さじ1杯
2-1-2 金目鯛の煮つけを作ってみる
①生姜の皮をむく
生姜の薄皮を取り除き、2mm程度の厚みで輪切りにする。
②白ネギを5cm程度に切り分ける
③湯がく
金目鯛の表面に切り込みを入れ、沸騰したお湯に5秒程度くぐらせる。お湯にくぐらせることで煮込んでいる時の煮崩れ防止となります。また、皮の表面に付いている細かな鱗も取り除きやすくなります。
④煮つけ汁を作る
・水 80ml
・酒 80ml
・濃口醤油 大さじ2杯
・砂糖 大さじ1杯
以上を鍋に入れ、沸かす。
⑤弱火にして金目鯛、生姜を入れて煮る
金目鯛を投入したら、落し蓋をしてください。落し蓋が無ければ、鍋のサイズにカットしたリードでも代用できます。
⑥金目鯛に火が通ってきたら、ネギを入れ、1分程度で火を止める
金目鯛のサイズによって煮込む時間が変わります。火の入り加減を見ながら煮込んでください。
⑦出来上がったら、皿に盛り付ける
金目鯛の煮つけとネギを添えると見栄えも良くなります。
2-2 秋の味覚『サンマの塩焼き』レシピ
秋の代表的な魚と言えば”さんま”です。
ここでは、代表的なさんまの塩焼きをご紹介します。
2-2-1 準備するもの
・生サンマ(新鮮なものを選んでください)
・塩2g 小さじ1/3
・薬味(大根おろし・レモン・カボスなど)
2-2-2 サンマを焼いてみる
今回は、家庭にあるグリルを使用しましたが、時間に余裕がある場合は、炭火でじっくりと焼き上げると味も香りも最高な秋の味覚となりますので、おすすめです。
①サンマの表面を洗う
サンマの表面にはヌメリがありますので、気にならない程度に手で擦り洗いをしてください。
②細かな鱗を取り除く
包丁の背を使い細かな鱗を取り除きます。
③サンマの表面に切り込みを入れる
サンマの頭から尻尾に向かって横一文字に切り込みを入れます。
④サンマの両面に塩を振る
サンマの身の両面に塩を振りますが、擦り付けるのではなく、上から振りかけることで塩味の均一化が出来ます。
⑤グリルで中火10分を目安に焼く
グリルに油を引いて、中火で10分程度焼き上げます。この時、途中でひっくり返し、両面をこんがり焼いていきます。
⑥皿に盛りつける
付け合わせの大根おろしやレモン・カボスを添えると見栄えや味も良くなります。
3.魚料理で注意したい2つのこと
魚料理を提供するときに注意することは、
・魚の置き方
・魚の骨の取り方
この2つだけです。
この2つのポイントを押さえておけば、魚料理が更に美味しくいただけます。
3-1 魚の置き方は「左側に頭が来ること」
焼き魚や煮つけなど、尾頭付きの魚が出てきた時、魚の頭は左側、お腹側が手前に来ていることが正しい置き方です。どうしてこの置き方が正しいかというと、日本人は右利きが多いことと懐紙の存在が挙げられます。
魚を食べる時、魚の小骨や背びれを取るときに懐紙を持った左手で魚を抑え、右手の箸で骨を取り除くことを想定しているため魚の置き方は「左あたま」と言われています。
しかし、戦国時代や江戸時代のころは、左頭でも手前にお腹が来ることはタブーとされていました。魚を処理する時に魚の内臓を取るには、どうしてもお腹に包丁を入れなければなりません。お腹に包丁を入れることは武士の世界では切腹を連想させるため、戦国時代や江戸時代ではお腹側を外側に向けたり、隠し包丁で見えないようにするなどして提供されました。
3-2 魚の骨を上手に取る方法は「押すこと」
焼き魚の骨って邪魔ですよね。
しかし、このめんどうな骨を取るのにはちょっとしたコツがあります。
それは、『背骨に沿って上から箸で押す』ことです。
焼き魚の骨を上手に外すと焼き魚は劇的に食べやすくなります。
https://www.youtube.com/watch?v=BMi3-LUgeyQ (箸で魚の身を押す)
魚の上側の身と下側の身は背骨によってくっ付いています。
焼き魚を食べ始める前に箸のハラの部分を使い、頭側・真ん中・尻尾側と3ヶ所程度軽く押すと背骨から身が離れます。背骨から身が離れると箸で身を取り外しやすくなりますので、劇的に食べやすくなるという訳です。
また、箸のハラで押す事は食事のマナー違反とはなりませんので、安心してください。
魚の骨は頭部から尻尾に向けて一直線に伸びています。
目安としては、頭から尻尾に向けて直線場を押していけば、背骨の上側を押すことが出来ます。
4.まとめ
和食の魚には、季節がとても重要です。
春夏秋冬それぞれで旬を迎える魚の種類がたくさんあることや旬に合わせた様々な調理法のあることが、和食の幅を広げているといえるでしょう。
和食で魚料理が提供された時、今回お話しした季節ごとの魚の種類や代表的な魚料理を思い出していただいたら幸いです。
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