うどんを美味しく食べられるかどうかは、うどんそのものが美味しいかはもちろんですが、めんつゆの味も大きな要素です。
めんつゆと言ってもそれにつけて食べる麺の種類によって、含まれる調味料やダシの種類や量を変えた方が、その麺に合い、より美味しく食べられるのです。
うどんやそうめん、冷や麦などに使うつゆを「めんつゆ」、そばに使うつゆを「そばつゆ」と言います。(市販品も用途別に表示されているものが多いです。)このことを前提にして、うどんをより美味しくするめんつゆはどんな配合が適しているのか、そばつゆとの比較などをしながら見ていきましょう。
目次
1. うどんに合うめんつゆを作る3つのポイント
めんつゆもそばつゆも「かえし」をダシ汁で割って(薄めて)作ります。
「かえし」とは、醤油と砂糖と本ミリンを混ぜて作った調味料、いってみればめんつゆの原液です。
ということは、美味しいめんつゆを考える時には、①かえしは上記3つの調味料をどういう比率で配合するか、②ダシは何を使うか(鰹なのか、鯖なのかなど)、③かえしとダシ汁の割合をどうするか、の3点を考えるのです。
めんつゆ | そばつゆ | |
かえしの配合 | 醤油:砂糖:本みりん =6:1:1 | 醤油:砂糖:本みりん =5:1:1 |
使うダシ | 鰹中心 | 鰹に鯖、宗田を加える |
かえしとダシ汁の割合(かけうどん、かけそば) | かえし:ダシ汁 =1:8~10 | かえし:ダシ汁 =1:7~8 |
かえしとダシ汁の割合(ざるうどん、ざるそばのつけ汁) | かえし:ダシ汁 =1:3~4 | かえし:ダシ汁 =1:3 |
(個人の好みがありますので、あくまで目安です。)
1-1 かえしは醤油6:砂糖1:本みりん1で配合
上の表をご覧になって分かるように、めんつゆのかえしの方がそばつゆと比べて、醤油の割合が砂糖とみりんに対してわずかに多いです。もちろん、少しも違わないように正確に作る必要はありませんが、こうすることにより、わずかにしょっぱさが増します。そばつゆ側から言うと甘みが増します。
このようにする理由は、麵自体に風味があるそばは、そばつゆにつける時間が短いのに対し、麵自体には風味が無いうどんの方がつゆにしっかりつけるからです。(ざるそば、ざるうどんの場合)
尚、使う醤油は濃口醬油が良いです。
醤油の湯類は色の薄い順に、白醤油、薄口醬油、濃口醬油、再仕込醤油、溜醤油があります。これは色の薄さの順番であって、意外にもしょっぱさの順番は逆になります。つまり、あまりしょっぱくしすぎないようにと薄口醬油を選ぶと、逆の結果になってしまうからです。市販されている約80%が濃口醬油ですので、探すのは簡単です。
1-2 ダシは鰹ダシを使う
めんつゆには鰹だしが合います。
1-3でお伝えしますが、うどんに使うめんつゆはそばつゆに比べて、かえしに対するダシ汁の割合をわずかに多くしてだしの香りを強調します。そのときに、よりすっきりした香りの鰹だしが最も良いのです。
そばつゆには、鰹だしに鯖や宗田節を混ぜた混合だしが合います。めんつゆ用よりもやや甘めのかえしに対して負けないかつお単独よりもしっかりした味になります。
1-3 かえしとダシ汁の割合はつけ汁で1:4
冒頭の表で示されているように、めんつゆの方がそばつゆよりもかえしに対するダシ汁の割合がわずかに多いです。ほんのすこしの差ですが、めんつゆの方がかえしをより薄め(その分ダシの香りは強くなる)、そばつゆはかえしが濃く残ります。
理由は1-1でもお伝えしたようにうどんは麵自体に風味は無いので、つゆにしっかりつけるのに加え、塩分はそばより多く含まれるため、かえしの濃度はそばつゆより薄い方が良いのです。その代わりダシの香りはより強くなります。
2. ざるうどんを作る
1章を踏まえて、実際にざるうどんを作ってみましょう。
冒頭の表にあるように
かえしは醤油6:砂糖1:みりん1の割合で作ります。
かえしとダシ汁の比率は1:4で作ります。
これなら、「めんつゆはダシ汁32:醤油6:砂糖1:みりん1の割合で作ります。」でも同じですし、そのように作っていただいても全く問題ありません。
それなのに、かえしの配合の比率を示して、そのかえしをダシ汁で割る比率を別途示した理由は以下の通りです。
かえしはまとめて作っておいて、実際に食べる時に食べる分だけのダシ汁だけ作ってかえしを割れば、手間も省けますし、かえし自体も美味しくなるからです。(かえしは2週間くらい寝かしておくことにより、まろやかになり一層美味しくなります。)2回目以降に作る時は、すでにかえしはできているという状態でダシ汁の量はどのくらい作ればいいのかが分かるように、かえしの配合の比率と、それをダシ汁で割る割合を2段階に分けて表示してあります。
今回はレシピ用として、かえしも使い切る量で作ってみましょう。
2-1 用意するもの
4~6人分です。
下の材料で、つけ汁は約800ccできますから、4人分とすると1人200ccで、かなりざぶざぶ贅沢にお汁を使えます。
濃口醬油120cc
砂糖20g
本みりん20cc
水800cc
花かつお30g
うどん400g
2-2 かえしを作る
今回、かえしを作るのに使用する、濃口醬油、本みりん、砂糖です。
上の材料から、濃口醬油120cc、砂糖20g、本みりん20cc(6;1:1の割合)です。
まず、濃口醬油を弱火から中火で温めます。
香りが飛んでしまわないように、沸騰する前に火を止めます。
温めた濃口醬油に砂糖を入れて、溶けるまでかき混ぜます。
本みりんを入れて、よく混ぜ合わせ、弱火で5分加熱して完成です。
2-3 ダシ汁を作る
できたかえしは約160ccです。(120+20+20)cc
このかえしを1として、ダシ汁を4の割合で割るので、ダシ汁は640cc作ります。
そのためには水を800ccと花かつお30gを用意します。
ダシをとる過程の花かつおを濾すときに、濾した花かつおに水分が残って、できるダシ汁は用意した水の約80%になるからです。
花かつおの量は水の3~4%でちょうど良い濃さのダシがとれます。
だし取用花かつおを使います。
花かつお30gです。
水800ccを沸騰させ、火を止めてから、花かつおを入れます。
理由は火をかけたままグラグラ煮え立った中に入れると、香りが飛んでえぐみが出てしまうので、それを防ぐためです。
もう一つの鍋に濾し布をかけて、花かつおを濾します。この時、濾し布を絞るのは止めましょう。
理由は、えぐみを出さないためです。
琥珀色のきれいなダシがとれました。
2-4 かえしをダシで割る
2-2で作ったかえしに2-3で作ったダシ汁を混ぜます。
160ccのかえしに640ccのダシ汁を混ぜましたので、約800ccのめんつゆができました。
めんつゆ1杯分です。
かえしそのものよりも、だいぶ色は薄くなります。鰹の香りがフワッと鼻孔をくすぐります。
2-5 うどんを茹でる
うどんの10倍以上の量のお湯で茹でます。
うどんが400gですので、4L以上のお湯で茹でます。
理由は、それだけたっぷりのお湯を使うことによりお湯にうどんを入れた直後もさいばしなどでかき回す必要が無く、乾麺の状態のうどんが折れてしまうのを防げるからです。
茹で上がったら素早くざるに上げて、冷水にさらして麺を引き締めます。
2-6 完成
ざるうどん4人分です。
狙い通り、やや甘めのそばつゆに比べると、醤油と鰹の香りが強いめんつゆが出来ました。
たっぷりめのつけ汁でうどんを食べるととても美味しいです。
3. 市販品を選ぶこつ
市販品も用途別に表示されているものが多くなりました。
そばには「そばつゆ」、うどんやそうめんには「めんつゆ」と表示されているものを選びましょう。
さらに細かく、「そうめん専科」などと表示されているものもあります。これはもちろん、そうめんに1番合いますが、小麦粉で出来ているという意味では仲間のうどんにもよく合います。
「うどん、そうめん、冷や麦」と「そば」で使うつゆを分けた方が、それぞれの麺に合い、より美味しく食べられます。
4. まとめ
いかがでしたか。
かえしを作ってからダシ汁で割るというと、なにかすごくこっているみたいで難しいんじゃないかと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。2章の初めにお伝えしましたように、先にかえしをまとめて作っておくと、実際に食べる時にダシ汁だけ作れば良いので、かえって手間を省けます。もちろん1回1回作っても全く問題ありません。
醤油、砂糖、みりんの配合やダシに使う素材、かえしとダシ汁の割合は私のお勧めを伝えました。
個人のお好みは千差万別ですから、もっとこうしたいという嗜好もあると思います。甘くしたいのなら砂糖を多めにとか、まろやかにしたいのならみりんを多めにとか、この記事を基本として色々お試しになるのも楽しいと思います。
また、簡単にではありますが、うどん自体の茹で方にも触れました。単純なことですが、たっぷりのお湯で茹でてください。お湯の量は最低でも茹でるうどんの10倍を用意してください。そうすると強引にかき混ぜなくてもうどんがくっついてしまう心配がなくなり、麺が折れてしまう原因もなくなります。
美味しいめんつゆに美味しいうどん、是非作っていただき、味わってみてください。
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/sobatsuyumentsuyu
めんつゆとそばつゆの違いの詳しい説明やそばつゆの作る方は上のURLをクリックしてください。
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