料亭ってどんなところ!?
料亭と聞くとなんだか敷居が高くて料金も高額で、マナーも難しそうだと感じてしまいますよね。
お客様との食事会でもないとなかなか行く機会もないし、初めて料亭に行ってみてもマナーばかり気にしすぎて美味しいお料理を味わって食べることが難しいかもと感じてしまいます。
でも安心して下さい。
ここでは元板前で料亭でも修行の経験がある私が、料亭で提供される料理の種類とマナーに付いてお話しいたします。
目次
1.料亭ってどんなところ?
料亭とは、本格的な日本料理を個室などの落ち着いた雰囲気の中で食事をする事ができるお店のことです。
料亭と聞くとなんだか敷居が高くて入りにくそうと感じてしまいますが、美味しい料理とサービスを誰でも受けることが出来ますので、安心してご利用してください。
料亭の個室は、「お座敷」と呼ばれ、床の間があったり、庭園が見えたりとゆっくりと食事や会話をすることができます。また、接客を専門にする仲居や芸妓などが置かれていたり、仲居や芸妓を呼ぶことが出来る様になっています。
料亭と混同しがちなお店に「割烹(かっぽう)」があります。
割烹も料亭と同じように本格的な日本料理を提供するのですが、割烹店にはカウンターがあり、カウンター越しの料理人が調理する所が見え、料理人と直接会話しながら活気のある雰囲気の中で食事ができるお店のことです。
割烹とは肉や魚などを割(さ)き、烹(に)る意味のことで調理・または料理をするとの意味です。
割烹料理とは懐石料理・会席料理・精進料理といった料理の呼称で使われ、比較的高級な和食を提供する料理店といったイメージが強いかもしれません。
人により定義は違うかもしれませんが、私が板前をしていた時は、
料亭
畳のお座敷で仲居や芸妓を呼ぶことが出来る、本格的な和食を提供するお店
割烹
カウンター越しに料理人が調理し、会話もできる本格的な和食を提供するお店
と教えて頂きました。
しかし、どちらも高級な和食を提供してくれる職人がいるお店であることにはかわりません。
2.料亭でのマナー
料亭でのマナーってちょっと大変そうだったり、難しくてやっかいだと感じているかもしれませんが、案外いつも注意している内容だということもあります。
ここでは、すぐにできるが最も注意したいポイントを3つお話しします。
2-1 お椀の蓋は丁寧に扱う
お椀の蓋は、お椀が右側にある場合は右奥。左側にある場合は左奥に置く。
会席料理で使われる器、特にお椀は高価な塗り椀を使っていることがあります。
椀物は料理の最初に出てくることが多く、これから提供される料理に華やかさを添えるような塗り椀や“侘び寂び”といったような静かなたたずまいからも威厳を感じるような塗り椀まで会食の目的や季節に合わせて提供されます。
このようなお椀は見ているだけだととても美しい物なのですが、提供するお店側としてはとても注意を払う品物なのです。塗り椀の塗料は衝撃に弱く、少し落としただけでも塗料が落ちてしまうことがあるのです。
特にお椀の蓋は、直接料理に触れるものではないため、お椀から離されるとあまり丁寧に扱われなくなってしまうものです。お椀の蓋も塗りが剥げてしまわないように丁寧に扱い、飲み終わった後のお椀の蓋は裏返してお椀に戻すのではなく、運ばれてきた時と同じ状態に戻しておきましょう。
食器の扱いを丁寧におこなうという意識が出ると動作が必然的にゆっくりとなるため、食事も落ち着いた雰囲気の中でとることが出来ます。
①左手を添えて右手で蓋を持ち上げる。
②蓋の内側に付いた水滴は、お椀の中に落とし、半月を描くように蓋を開ける。
③蓋はゆっくりと開け、お椀が右側にある場合は右奥。左側にある場合は左奥に蓋を置きます。
左側にお椀を置いたときは、左上に蓋を置きます。
右側にお椀を置いたときは、右上に蓋を置きます。
④お吸い物を頂く時は、お椀の中に箸を添えて中の具材が飛び出さないようにいただく。
⑤お椀を食べ終わったら、運ばれてきたようにお椀の蓋を正しく戻します。
お椀の蓋はひっくり返してはいけません。
お椀の蓋をひくっり返して置くのはマナー違反です。
2-2 焼き魚の骨はまとめておく
食べ終わった焼き魚の骨は隅にまとめておきましょう。
懐紙があれば、さらにポイントアップ。
焼き物では、尾頭付きの魚が提供される場合があります。
魚には大なり小なり骨が付いていて、この骨を上手に取るのがとても厄介なのですが、少しだけ楽に取る方法があります。それは、焼き魚の身をいただく前に魚の上身を箸でやさしく押すことです。
魚の上身を箸の平で押すと身と骨に隙間が出来、魚の身と骨が分けやすくなります。あまり強く押してしまいますと魚の旨味である脂分と一緒に身から流れ出てしまいますので、やさしく押すことをお勧めします。
また、尾頭付きの魚は食事中に魚の身を裏返して食べることはマナー違反となりますので、注意しましょう。
焼き魚の食べ方は、以下の通りです。
①骨が付いた焼き魚は、魚の上身を箸の平でやさしく押すと骨が取りやすくなります。
②頭部(左側)から箸を付け、尻尾に向かって食べていきます。
③上身を食べ終えたら、魚の頭部を少し上にあげ、骨と身の間に箸を入れる。
手で頭を押さえて骨を取っても構いませんが、なるべく手を汚さないように箸で骨を取る事をお勧めします。
④外した骨は、皿の上側に置き、下身を食べます。
⑤食べ終わったら、背骨や小骨をまとめておきます。
懐紙があれば、懐紙で骨や食べ残しを隠しておくとスマートです。

2-3 止め椀が出たらお酒を飲むのをやめる
止め椀とは、料理の後半にご飯と香の物(漬物)と一緒に提供される椀物のことです。
この止め椀が出たら、お酒を飲むのをやめましょう。
会席料理は、アルコールとの相性を考えて作られた料理です。
美味しいお料理ですとお酒もすすんでしまいがちですが、ご飯や止め椀が出たらお酒をやめましょう。
止め椀とは、『お酒を飲むのを止める』という意味です。止め椀が出されたらアルコールをやめ、お茶をいただくとスマートです。
ここまでが「これだけ覚えておけば大丈夫」な3つのポイントとなります。
もっと詳しく知りたいと感じたら、「元板前の私が大切にしている和食のマナー3選とやりがちなマナー違反」に詳しく書かれていますので、参考にしてください。
3.料亭を選ぶポイント
料亭で食事をすることのメリットは、本格的な日本料理と静かな空間で食事が出来る事です。
例えば、会社の接待や結婚を控えた両家の顔合わせ、大切な記念日などで料亭での食事を考えることがあるのではないでしょうか。そうは言ってもなかなか判らないこともありますので、まずは『ミシュランガイド』を見ることがお勧めです。
ミシュラン獲得のお店は、料理はもちろんですが、場の雰囲気や接客態度まで調査されていますので、参考にすると良いでしょう。ミシュランガイドに掲載されている料亭を見た後、料亭を選ぶポイントとして、以下の3つを参考にしてください。
①従業員の教育がしっかりとされている
お客様のお迎えからお見送りまでの正しい接遇が徹底されていること。
接遇とは接し方のことで、挨拶の仕方や立ち居振る舞いもしっかりと教育されていることが多いです。
②料理の知識
提供された料理の内容と食材の特徴など、料理や食材の雑学が教育されているか。
例えば、お刺身に鯛が出されていた場合、お店側はこの時期はどこで獲れた鯛に脂がのっており、美味しいかということは聞かれた場合に回答することができます。
お店側は良い物を提供する立場ですので、食材の知識も教育されています。
③料理・飲み物を出すタイミング
場の雰囲気を読み、料理や飲み物が提供されているか。
基本的にお客様の滞在時間は決められていませんが、お客様の食べるペースに合わせて料理を提供してくれます。
④心地よい空間であること
お店の雰囲気や個室が清潔であるか。個室の広さや庭園の整備が整っているか。
⑤信頼がおける
料亭に限ったことではありませんが、接待や記念日などで相手にがっかりさせたくないものです。
この場合にお店の評判や信頼がおけるかを事前に調べる必要があります。
- ガイドブックで紹介されていた
- 長い歴史がある
など、事前に調査しておけば食事中も安心して過ごすことができます。
4.料亭に関するよくある質問とその答え
①料亭を利用する人はどんな人か
料亭はいろいろな方が利用しています。
政治家や芸能人、会社の取引先様との会合や接待、結納や節句などのお祝い事などでご利用されるお客様など様々です。
もちろん大切な方と食事をする場面が多いと思いますが、私が勤めていたお店では日中にお一人で来店し、庭を眺めながら静かに食事をする老紳士がいました。お一人で来店し、自然を眺めながらお一人で食事をすることも料亭では問題ありません。
②子供を連れて行ってもいいのか
お子さんを連れて行っても問題ありません。
しかし、お座敷や通路ではしゃいだり、大きな声で騒いだりすると他のお客様にも迷惑が掛かる場合がありますので、他のお客様に迷惑を掛けない様、配慮が必要です。
③予約方法
料亭の予約は、電話やHPからのメールでおこないます。
予約時に人数・入店時間・食べられないものを事前に言っておくとよいでしょう。
料亭はお客様へのサービスを重要視しているため、部屋数に限りがある場合があります。お店によっては1部屋(1座敷)しかない所もありますので、早めに予約を取ることをおすすめします。
④料金
料金はお店により違いがあります。
お店のHPにコースごとの料金設定が書かれている場合と全く書かれていない場合があります。
コースが書かれている場合は、料理内容と予算を考え決定しましょう。
全く書かれていない場合は、予約時に料理内容と料金の確認をしておくとよいでしょう。
ちなみに私が働いていた料亭は後者で、料金は1名30,000円(料理のみ)。料理コースは1コースのみで、芸妓さんを呼べば料理代金とは別に加算されます。
HPを持っていないお店でしたので、事前にどんな料理が提供されるかは分からないのですが、常連さんには要望が無い限り同じ料理を提供することはありませんでした。
⑤コースの決め方
お店によっては何種類ものコースを準備していることがあります。
金額は10,000円以下から50,000円を越えるものまで。
初めていくお店の場合は、どのコースを選べばよいか迷ったら、予算が許す限り複数あるコースの中間の金額のものを選ぶことをお勧めします。
なぜ中間コースを選ぶかと言いますと、お店は中間コースを軸にコースを考えていることが多いため、中間コースを境に提供する料理の差がハッキリと出ていることがあります。
せっかく料亭に行ったのに「もっといいコースにしておけば良かった」と後から後悔しないためにも初めての場合は中間コースを選ぶことをおすすめしています。
⑥支払い方法
料金の支払方法はお店により様々です。
お座敷の中で会計をする場合や会計場所が出口付近に設けられている場合もあります。
常連のお客様になると当日支払いではなく、後日、口座にお振込みを頂く場合もあります。
接待などで料亭を訪れた場合、相手に料金の心配をさせないためにも後日、お振込みをした方がスマートですが、初めてのお客様にはこの方法が適用されない場合がありますので、予約時に支払方法について聞いておくことをお勧めします。
⑦服装
服装は特に取り決めはないのですが、場にそぐわない服装や過度の香水は、同席する相手が不愉快にならないようにしましょう。
詳しくは2章のリンクを参考にしてください。
⑧“いちげんさんお断り”はあるのか
“いちげんさん”とは、初めて来るお客さんのことで、“いちげんさんお断り”となると「初めての来るお客さんは入店できない」とのことです。
私の知り合いから聞いた話では、京都のお店で“いちげんさんお断り”に合ったと聞いたことがあります。
では、なぜ“いちげんさん”の入店をお断りするかと言いますと、料金の支払いが後払いになるお店で使われることがあるようです。料亭では、お客様に気持ちよく帰っていただくために、料金の請求を後日振込でお願いすることがあるため、お客様と料亭側との信頼がないと料亭の入店ができないのです。
このため“いちげんさんお断り”の料亭を使用する場合、この料亭の常連客に紹介をお願いしてもらう必要があります。まずは常連さんと一緒に来店し、お店側に顔を覚えてもらうことが重要です。
常連客は紹介した人物が仮に支払いをしなかった場合は、常連客が支払いの面倒を見ることになります。
常連客は付き合いの浅い人物を紹介すると後で大変なことになってしまいますので、しっかりとした人物をお店に紹介するのです。
“いちげんさんお断り”に私は遭遇したことはありませんが、予約時の電話で確認してみるとよいでしょう。
5.まとめ
料亭とは、本格的な日本料理を個室などの落ち着いた雰囲気の中で食事をする事ができるお店のことです。
なかなか行く機会は少ないかもしれませんが、大事なお客様や大切な相手と特別な時間を過ごすには、最適な場所ではないでしょうか。
次のお店選びで迷ったら、是非料亭に訪れてみてはいかがでしょうか。
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