マグロ節とは?マグロ節の特徴とおいしいだしの取り方5つの手順

百貨店やスーパーの削り節コーナーで、マグロ節と書いてある削り節を見た事がありませんか。

鰹節ならいつも使っているけど、マグロ節って何に使うの?と感じてしまい、なかなか購入するのにとまどってしまいますよね。

和食が2013年にユネスコ無形文化遺産として認められ、和食(日本食)が世界中の人々から注目されるようになり、和食の基本となる「だし」という言葉も注目され始めました。和食(日本食)の繊細な味付けは、だしの原料となる削り節や昆布などの風味や味を活かした料理がベースとなっています。

ここでは、元板前で何年もだしを取ってきた私が、マグロ節の特徴と美味しいだしを取るための方法をお話させて頂きます。


1.マグロ節

マグロ節とは、鰹節のように節となったマグロのことです。

家庭料理や日本料理で鰹節は良く使われているけど、マグロ節ってあまり聞いたことが無いと言う方が多いと思います。ここではマグロ節の特徴についてお話しさせて頂きます。

1-1 マグロ節とは

マグロ節は鰹節のように燻製処理をしたマグロのことです。

マグロ節となる魚は、「キハダマグロ」というマグロで、このキハダマグロは、大型のものを“キハダ”小型のものを“キメジ”とも呼び、1.5kgから3kg程度の魚体のものがマグロ節に加工されます。

キハダマグロが節に加工されるとマグロ節と呼ばれるのですが、関東地方では“めじ節”関西では“しび節”とも呼ばれます。

キハダマグロは、もちろんお刺身や煮物などでも美味しくいただけるのですが、マグロ節で取っただしは、また違う美味しさがあります。

このマグロ節ですが、実は節類の中ではもっとも生産量が少なく、特にマグロ節の表面に人工的にカビを付けた枯れ節の生産量はさらに少ないものとなります。マグロ節には、サイズの小さなキハダマグロを使ったマグロ亀節、サイズの大きなキハダマグロを使ったマグロ荒本節があり、マグロ荒本節の血合い部分を取り除いた、マグロ節血合い抜きもあります。


2.マグロ節のだし

マグロ節のだしは、鰹節で取っただしと違いがあるのでしょうか。

2-1 マグロ節と鰹荒節のだしの違いと特徴

マグロ節・マグロ節血合い抜き・鰹節で取っただしはどんな料理に合うのでしょうか。

おススメの料理をまとめてみましたので、参考にしてください。

マグロ節には、マグロの背骨に沿って血合い部分がありますが、この血合い部分がだしを取った時にだしの風味に影響を与えます。血合い部分があるとマグロ節の酸味が強く感じられ、“上品な中でもパンチが感じられるだし”となります。

また、血合い部分を取り除いたマグロ節血合い抜きは、さかなの臭みが少なく色調も薄いため、見た目も上品なだしが取れます。マグロ節血合い抜きの上品な味わいは、“コクはあるのに主張し過ぎないだし”と感じられます。

マグロ節のだしは、濃いめの味付けをするのではなく、マグロ節自体のだし感を味わう料理に合います。「お吸い物・野菜の煮物・お浸し」など、マグロ節のだしを美味しく味わうことが出来る料理がお勧めです。マグロ節の上品なだしは料亭や高級料理店での需要が高い削り節のひとつです。

また、最近ではラーメンの具材としても注目されており、マグロだしでスープを取ったラーメンやトッピングの魚粉と使用されるお店もあります。

鰹節の場合、スーパーや百貨店で販売されている鰹節で最も種類が多い物が鰹荒節といわれるものです。鰹荒節は表面に人工的なカビ付けをおこなっていないもので、鰹節を燻製(焙乾・・・ばいかん)にする際、鰹節の表面に薫臭が付きます。この薫臭が、ツンとしたかつおだしの香ばしさを引き立てているのです。

鰹荒節の味は、香ばしい薫臭の香りが鼻から通り抜け、その後から荒節特有のかつおダシが感じられます。荒節の味を表現するとすれば、“少し酸味がありパンチがあるダシ”という事になります。

2-2 マグロ節のだしの取り方

ここでは、マグロ節の標準的なだしの取り方を説明いたします。

2-2-1 準備するもの

  • ①水が2リットル程度入る鍋
  • ②ザル(口径が15cm~20cm程度のもの)
  • ③キッチンペーパーか布巾
  • ④取っただしを受けるボウルか鍋

ご家庭にある調理器具で代用可能です。

2-2-2 だしの取り方

早速、マグロ節でだしを取ってみましょう。

①鍋に1000ccの水を入れ、沸騰させる。

沸騰具合は、気泡がグラグラ沸いているイメージではなく、気泡がポコポコ沸いている状態です。

温度を測る必要はありませんが、鍋底から出る気泡の出方に注意してください。

②マグロ節削りを準備

マグロ節削りは平削り・血合い抜き問わず、40グラムでOKです。

③沸騰したら火を止めて、直ぐにマグロ節削りを鍋に入れる

どうして火を止めるかというとマグロ節削りで取るだしは、削り自体の厚みが薄く、直ぐにだしが出やすい削り節です。

そして、マグロ節削りだしの特徴は香りが良いこと。

この香りを弱めてしまうのは、加熱時の“熱”です。

だしの抽出時にお湯を沸騰状態に保ったままでいますと、だし自体は抽出されるのですが、マグロ節削りの特徴である香りは、どんどん弱まってしまうのです。

④鍋を動かしたり、マグロ節削りをかき回したりせずに10分待つ。

マグロ節削りからしっかりだしを抽出したいと考え、鍋に入れたマグロ節削りを混ぜたり、押したりしたくなってしまいますが、そのまま触らないで置いておくことが重要です。

混ぜたり・押したりしてしまうと節の苦みやエグミがだしに移ってしまいます。

鍋に入った花削りは、そのまま置いておいても十分に味と香りが良いだしが取れます。

⑤ザルにガーゼを敷き、だしを濾す。

ここで注意することは、2つあります。

1つ目は、ガーゼをしっかり敷くこと。

ガーゼはマグロ節削りのだしガラが、だしの中に残さないために使うものです。

だしガラがだしの中に残ってしまいますと、だしの風味を損ねてしまいますので、ゆっくりとだしを濾すことが必要です。

2つ目は、だしを濾す際に花削りの出しガラを絞ってはいけない事です。

だしを取ったマグロ節削りに鍋のなかの水分(だし)が含まれているので、最後の一滴まで絞って使いたいと考えてしまいますが、出しガラを絞ると④と同様に鰹節の苦みやエグミが出てしまったり、琥珀色に取れただしの色を濁らせてしまいます。せっかく取れた美味しいだしの中に入ってしまっては、その後の料理の味を落としてしまう事になります。

ここでは勿体ないという気持ちを捨てて、コーヒーのドリップ同様にそのまま置いておくことが重要です。

マグロ節でとっただしの色調は、やさしい琥珀色をしています。

香りも焙乾時の薫臭がほのかに感じられます。

(マグロ節のだし)

マグロ節の色調を鰹荒節で取っただしと比べてみました。

(左:マグロ節血合い抜き 中:マグロ節血合いあり 右:鰹荒節)

マグロ節のだしの色調は、血合い抜きと血合いありでも違いがあります。

また、鰹荒節は更に色調が濃く、焙乾時の薫臭もマグロ節に比べ強く感じられるだしです。3点を比較しますと色調や薫臭の違いがありますが、料理に合わせた使い方をすることで、いつもの料理を更に美味しくすることができます。


3.マグロ節の作り方

マグロ節の製造は、鰹節製造をする工程と同じです。

製造工程は大きく分けると、生切り→煮熟→骨取り→焙乾 となります。

①生のマグロを切る(生切り)

まずマグロ節の頭・内臓を取り除いた後に専用の包丁を使い背中側から半身におろしていきます。

背中から包丁を入れる際に背骨に沿って包丁を滑らせていくのですが、背骨から包丁がそれてしまうと背骨にマグロの身が付いてしまいマグロ節として完成した時に形が悪くなってしまいます。

このあと3枚におろした後、最後に尻尾を切り取って、生切りが完了します。

生切り専用包丁

②煮る(煮熟・・・しゃじゅく)

生切り後のマグロを煮る事を煮熟といいます。

煮熟は大きな釜で煮ていくのですが、マグロを投入する際の湯温は80℃から85℃程度です。これは鰹節の煮熟の投入温度が85℃から90℃ですから5℃低い状態での投入となります。なぜ5℃程度低い温度で煮熟の釜に投入するのかといいますと鰹に比べマグロの身が柔らかいため、高い温度の煮釜へ投入すると身が割れてしまいマグロ節になった時に綺麗な形になりません。マグロの煮熟は投入時の温度は低めに設定しますが、その後は鰹節の煮熟と同じように98℃程度まで上昇させ、90分~120分ほど煮ていきます。

湯温が98℃以上になってしまうとお湯が沸騰してしまい、マグロが身崩れしてしまう事とマグロのだしがお湯に溶け出てしまいます。マグロの大きさやゆで釜の大きさにより、煮熟時間を調整していきます。

③骨を取る

煮熟が終わった後、マグロの骨を取ります。

生切りの時に切り落とされた腹骨を中心に取り除いていくのですが、中骨付近の小さな骨も一緒に取り除きます。この骨取りを丁寧に行わないと次工程の乾燥時(焙乾)に残った骨の影響で鰹が曲がってしまいます。

(写真は、鰹節の骨取りです)

④乾燥させる(焙乾・・・ばいかん)

焙乾とはマグロを燻製させながら乾燥させていく工程の事です。

焙乾の目的は、水分を低くして、マグロの旨味を凝縮させる事と、マグロの水分を低くして腐りにくくします。焙乾による薪の煙に含まれる有機化合物は、外部から雑菌が入らないように表面コーティングの様な働きもしています。この焙乾の工程によりマグロ節は保存食と呼ばれる程、長期保存が可能な食品になります。

また、薫臭を付ける事により、魚の臭みを消す効果もあります。

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この焙乾工程を複数回繰り返した後、マグロの水分の抜け具合を確認し、完了するとマグロ節となるのです。このすべての工程を終了するまでに2週間程度掛かります。


4.まとめ

マグロ節の特徴やマグロ節の美味しいだしの取り方について、お話をさせて頂きましたが、冒頭でも述べているように節の中でも特に生産量が少ないものがマグロ節です。

どうしてマグロ節の生産量が少ないのかと、鰹節メーカーに問い合わせたところ、マグロ節を専門に作るというよりもカツオ漁をした時にカツオを取るアミの中にキハダマグロがたくさん入った時にだけ、生産することが多いようです。

地域によってはあまり見かける機会が少ないかもしれませんが、上品なだしでいつもより更においしさを引き立てるマグロ節をぜひ試してみましょう。

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