銀餡(ぎんあん)って銀色でも無いし、甘くもないのにどうして銀餡というの?
料理屋さんで茶碗蒸しを頼んだ時、茶碗蒸しの蓋を開けると“とろみのある餡”が掛かっていることがありませんか。
料理の上に銀餡が掛かっていると料理の華やかさやちょっと得した気分を味わえるような気がしますよね。
しかし、銀餡にはちょっと得した気分を味わうためだけではなく、ちゃんとした理由があるのです。
ここでは、銀餡と呼ばれる理由と銀餡を使う理由についてお話をさせて頂きます。
目次
1.銀餡とは
銀餡(ぎんあん)とは、片栗粉(かたくりこ)や葛粉(くずこ)などをかつおだしや水で混ぜ合わせた後、低温で加熱し、色目を付けないように煮立たせることで出来あがる「餡(あん)」のことです。出来上がった状態は、薄透明~薄い乳白色でとろみのある見た目となります。
主に蒸しものやオムライス・中華料理の仕上げとして料理の上に掛けるなどの使い方があり、“あんかけ料理”として使用されます。
銀餡掛け
銀餡と類似したもので、餡に濃口醤油で色付けしたものを「鼈甲餡(べっこうあん)」、素材の味付けに使った汁でとろみをつけたものを「共餡(ともあん)」と呼びます。共餡の代表的なものには煮物の煮汁に片栗粉や葛粉を混ぜてとろみをつけた後、煮物に戻す、“煮物の共餡掛け”があります。
あくまで料理の脇役といった感じですが、あんかけを使うことで料理のひと手間となり、料理を更に美味しくさせ、料理の華やかさを演出することができます。
1-1.銀餡と言われる理由は色にある
銀餡と言われる理由は、出来上がった餡に光が反射すると銀色に見えるからと言われています。
水溶き片栗粉や葛粉で餡を作ると、全体的な色調は薄い乳白色となり、光に反射すると銀色に見えるのが理由とされています。
ちなみに、銀餡の仲間である鼈甲餡(べっこうあん)は、醤油を使うことで薄茶色の色調となり、見た目が鼈甲に見えることから鼈甲餡と呼ばれています。
1-2.銀餡を使う理由は料理が冷めないから
銀餡を料理に使う理由は、料理が冷めにくいからと言われています。
私自身も餡を使った料理を作ったり、食べたりする機会が多いのは、少し肌寒くなるころからです。
ではなぜ少し肌寒くなってから目にする機会が多いのかと言いますと、片栗粉や葛粉で銀餡を作ると餡にとろみが出るのですが、このとろみがとても重要なのです。あんかけ料理は出来上がった料理の上から餡を掛け、料理を仕上げます。餡を上から掛けると素材を包み込み素材全体をコーティングする形となります。こうすることで、料理が冷めることを遅らせ、実際に食べるときに温かい状態で食べることが出来るのです。
2.銀餡の上手な作り方と注意すること
2-1 銀餡の上手な作り方
かつおだしの風味を活かした銀餡を作ってみました。
今回は素材を活かすためにかつおだし以外の調味料は使っておりません。
準備するもの
・片栗粉:適量
・かつおだし:200cc
・水:適量
・水溶き用の小皿:深みがあるもの
・鍋
・ガスコンロ
銀餡を作る場合、銀餡を掛ける料理によって片栗粉とかつおだしの配合を変更してください。
片栗粉の量を増やせばとろみのある銀餡となり、片栗粉の量を少なくするとサラサラとした銀餡が出来上がります。
①水溶き片栗粉を作る
水溶き用の小皿に片栗粉を入れ、そのあと水を少しずつ入れる。
片栗粉と水をゆっくりと均等に混ぜ合わせる。
②かつおだしを沸かし、水溶き片栗粉を入れる
かつおだしを沸かします。
だしがグラグラ沸くのではなく、鍋底から小さな気泡がプクプク出るぐらいの火力にしてください。強火で沸かすとかつおだしの風味が弱くなってしまいます。
沸いたら火を止め水溶き片栗粉を混ぜながら、少しずつ投入します。
一度にたくさん入れると水溶き片栗粉がダマ状に固まり、食感が悪い銀餡となってしまいます。
③再度ゆっくりと温める
再度ガスコンロに火を着け、混ぜながら煮立たせます。この時も弱火で混ぜ合わせてください。
④出来上がり
銀餡は使う料理に合わせたとろみになるように作りましょう。
銀餡は、銀餡自体に味を付ける場合と全く付けない場合があります。
あくまで料理をする人の好みとなりますが、銀餡で包む料理自体が薄味であり、料理と銀餡の味の組み合わせで最終的な味わいを強調したい場合、銀餡にほんの少しだけ酒やみりん、塩などの調味料を入れたり、濃いめのかつおだしで味付けをすることがあります。また、塩の代わりに薄口醤油を使うと餡がべっこう色になりますので、この場合、鼈甲餡(べっこうあん)と呼ばれます。
素材自体にしっかりとした味付けがされている場合は、銀餡に味付けをする必要はありません。
2-2 銀餡作りで注意すること
銀餡を作るときに注意すべきことが2つあります。
それは、「餡を煮立たせてはいけない」・「水溶きにお湯を使ってはいけない」ことです。
①『餡を煮立たせてはいけない』
銀餡を作っている時や再加熱する際に餡を煮立たせてしまうと餡の中に気泡が入り、薄透明の色調が濁ってしまいます。せっかく料理のひと手間で見た目も良くしたいのに気泡が入ってしまうと見た目も悪くなってはもったいないですよね。
②『水溶きにお湯を使ってはいけない』
片栗粉のでんぷんは約60℃の温度で固まり始めます。
片栗粉を溶くタイミングで水の代わりにお湯を使ってしまうと混ぜている最中に固まり始めてしまうため出来上がりの食感が悪い物となってしまいます。いわゆる「ダマ」ができてしまうため、さらさらとしたとろみのある餡とは違い、口に残る餡となってしまいますのでお湯で溶くのはやめた方がいいのです。
3.葛粉と片栗粉の違い
料理には片栗粉。
お菓子作りには葛粉。
もちろんお料理に葛粉を使っても構いませんが、片栗粉に比べ価格が高めですので、葛粉の特徴を活かしながらの使用が重要です。
3-1 葛粉の価格は片栗粉の10倍以上
葛粉とは秋の七草にも数えられる“クズの根”からとれるデンプンを精製して作られるものです。
昔は薬としての薬効を持っていて、身体を温めて血行を良くするため、風邪をひいたときに用いられてきました。現在では、葛根湯(かっこんとう)として認知されています。
有名な産地として奈良県吉野がありますが、吉野で作られた葛粉は吉野葛と呼ばれ、片栗粉の10倍以上の価格で販売されていることがあり、非常に高価なものとなっています。
これは、葛の根を細かく砕き、水にさらしてデンプンを沈殿させ、日陰でゆっくりと乾燥させていきます。一度にたくさんのデンプンが抽出されることがなく、手間暇もかかるため、必然的に価格は高いものとなります。
この葛粉は銀餡やあんかけ料理に使うと次のような特徴があります。
・あんかけ状に煮詰めたとき、片栗粉に比べ色調が透明に近い
・冷めると白濁する
このような特徴がありますが葛粉の価格が比較的高いので、料亭の料理や和菓子の材料として使われることが多いです。
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片栗粉とはユリ科の多年草カタクリの根から得られるデンプンを精製したものです。しかし、カタクリの根から作られた片栗粉はあまり店頭でみることが少なく、現在ではジャガイモからとったデンプン(馬鈴薯澱粉)を精製したものが市場に多く出回っています。
名前は片栗粉ですが、トウモロコシ(コーンスターチ)・タピオカ芋(タピオカ澱粉)・小麦(小麦澱粉)などといったデンプンからも作られています。
片栗粉はあんかけ料理に使うと次のような特徴があります。
・低温で固まりやすい
・粘度(とろみ)があるため冷めにくい
葛粉に比べ比較的安価であるため、銀餡の他に中華のあんかけ料理など、様々な料理に使われることが多いのが特徴です。
4.まとめ
銀餡とは片栗粉や葛粉などを水と混ぜ合わせた後、低温で加熱し、色目を付けないように煮立たせることで出来あがる「餡」のことです。
銀餡は保温効果が高いので、冬場の料理や中華料理で使われることが多いのが特徴です。
お料理にこの銀餡が掛かっていれば、料理を温かい状態で提供することになりますので、おもてなしの心として受けとってもいいのです。
今晩は、銀餡の掛った温かい料理で食卓を囲むのはいかがでしょう
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