一汁三菜(いちじゅうさんさい)とは、1点の汁物と3点のおかずが含まれる献立のことを指します。
例えば、下記のような献立を一汁三菜と呼びます。
汁物:味噌汁
主菜:魚の塩焼き
副菜①:わかめの酢の物
副菜②:きんぴらごぼう
一汁三菜は、5大栄養素である炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがすべて含まれており、健康に必要な栄養素をバランスよく取れるため、現代の日本人の食事において理想的な献立です。
難しそう…と思われるかもしれませんがご安心ください。一汁三菜を理解していただければ、今後の献立作りで苦労することはないでしょう。
具体的な献立の例やマナー、歴史までわかりやすく解説してきますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考:一汁三菜とは?
目次
1 栄養バランスが理想的な献立「一汁三菜」
「一汁三菜」とは1点の汁物と3点のおかずが含まれる献立のことを指します。
「一汁三菜」は「いちじゅうさんさい」と読み、現代日本人の食事において理想的な献立とされています。その理由は、汁物と3種類のおかずを組み合わせることで健康に必要な栄養素をバランスよく取れるとされるからです。
ここでは正しい一汁三菜の献立の内訳と栄養バランスが取れる理由を説明していきます。
1-1 一汁三菜の献立の内訳
献立の内訳をさらに詳しく、それぞれ「一汁」と「三菜」にわけて説明します。
①一汁
「一汁」は汁物を指します。これは文字通り汁気の多い料理で、たとえば味噌汁やスープ類などです。
②三菜
「三菜」は汁物以外のおかずを指します。「主菜」1点と「副菜」2点、あわせて3点のおかずで「三菜」といいます。
③主菜
「主菜」とは肉、魚、卵や大豆などがメインのおかずです。ハンバーグや焼き魚、冷ややっこやオムレツも主菜です。
④副菜
「副菜」とは野菜や海藻がメインのおかずです。サラダや野菜炒め、酢の物、煮物などです。
また、「一汁三菜」の献立には「主食」を含みます。「主食」とはごはんや麺類、パンなどのことです。また「漬物」も「一汁三菜」の献立に含む場合もありますが、「漬物」は「副菜」として数えません。
つまり、「一汁三菜」とは主食に1点の汁物と1点の主菜、2点の副菜が含まれた献立となります。
1-2 栄養バランスのとれた一汁三菜
一汁三菜は栄養素のバランスが取れているという点で、現代日本人の食事において理想的な献立とされています。
表①の献立例では、5大栄養素である炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがすべて含まれていることがわかります。
主食のごはんからは「炭水化物」を、主菜の肉、魚、卵、大豆からは「タンパク質」「脂質」を、「副菜」の野菜、海藻から「ビタミン」「ミネラル」を摂ることができます。また、汁物は水分を多く摂る役割があり、栄養は使用する具材によって異なります。
また、例えば脂質の少ない豆腐料理を主菜にする場合に、副菜を茄子の揚げびたしとすると脂質を補えます。調理法によっても栄養のバランスをとる工夫ができます。
一汁三菜が栄養バランスの取れた食事となるためには、主菜や副菜、汁物に使用する「具材」と「調理法」により、栄養素が偏らないように組み合わせることが大切です。
そのように組み合わされた一汁三菜の献立が栄養素のバランスが取れていて理想的な献立です。
1-3 一汁三菜以外の献立
一汁三菜が栄養バランスのとれた理想的な献立であることを理解いただきましたが、それ以外にも数字を使ってあらわされる献立に「一汁一菜」「一汁二菜」「一汁五菜」「二汁五菜」というものがあります。
①一汁一菜
「一汁一菜」は食べすぎを防止するために理想的な献立とされます。
一汁は汁物、一菜はおかずのことを表し、注意すべきは適度な量にすることと、栄養バランスの取れる内容にすることです。
一汁三菜にくらべておかずの数が少ないので大盛にしがちですが、そこを控えることで食べすぎの防止という利点が生まれます。
ただし、おかずが少ない分栄養が偏りがちになりますので、肉・魚と野菜・海藻を組み合わせたおかずや、汁物に具材としてそれらを多く活用することで満遍なく栄養を摂れるようにします。
なお、「一汁一菜」は元は禅寺で採られた食事で、「質素倹約」を表す食事でしたが、現代の食の欧米化や食べすぎを抑制できる食事として理想的とされています。
②一汁二菜
「一汁二菜」は一汁三菜よりもふるまう側の負担が少なく栄養バランスにも優れた献立とされます。
二菜が主菜と副菜1点ずつなので一汁三菜にくらべて野菜や海藻類からとれるビタミン・ミネラル分が不足することが考えられます。
汁物や副菜等にそれらを意識して多く取り入れることで、栄養バランスが良い献立となります。利点として、品数が少ないことによる、ふるまう側の負担の軽減があります。献立を考えること、調理すること、洗い物・・・と1点減ることによる利点は様々な場面で影響します。
一汁二菜をふるまう際には野菜や海藻類を意識して取り入れるようにしましょう。
③一汁五菜、二汁五菜、それ以上
「一汁五菜」「二汁五菜」は本膳料理で一般的に用いられている献立です。
「本膳料理」とは室町時代に確立された饗宴の席の料理で、現代でも本膳料理を提供するお店があります。
その本膳料理でふるまわれる献立に一汁五菜や二汁五菜がありますが、その献立の内訳は主菜、副菜といったものではなく「なます」「煮物2点」「焼き物」「和え物」で五菜とそれぞれ調理法が決まっております。
また、本膳料理ではもっと品数の多い「二汁七菜」「三汁七菜」「三汁十一菜」などもあります。
これら品数が多い献立は用意することが大変なため、家庭で一般的にはふるまわれないでしょう。
2 一汁三菜の献立例
ここでは一汁三菜の献立例を紹介、各料理から摂取できる栄養素について説明します。
雑穀のごはんには通常の白米より多くのミネラルと食物繊維が含まれます。この献立の副菜に海藻類がありませんが、雑穀ごはんがミネラル成分を補っているといえます。
主菜と副菜が一つのお皿に盛ってありますが、おかずそれぞれが主菜、副菜として役割を果たしているため、一汁三菜といえます。一つのお皿に盛ることでおかずの量が調節され、食べすぎも防止できそうです。
副菜がタンパク質主体のちりめんですが、汁物の具材に野菜を多く使用することでビタミンが補われています。
3 一汁三菜のマナー
ここからは一汁三菜を正しくふるまうための配置方法、また正しく食べる順番を紹介していきます。
3-1一汁三菜の配置方法
一汁三菜の献立は、配置方法に決まりがあります。
図のように、
「主食」は左手前
「汁物」は右手前
「主菜」は右奥
「副菜」のうちボリュームのあるものが左奥
「副菜」のうちボリュームの少ないものが真ん中
「漬物」がある場合は手前
となります。
これが基本的な並べ方ですが、ここで重要なのは主食が左、汁物が右ということです。主菜、副菜については並べ方が多少違っても問題ありません。
ごはんを左側に置く理由は、重要なものを左側に置くという日本古来の考え方が配膳の作法にも影響しているからです。
一汁三菜の配置方法を覚えておきましょう。
3-2 一汁三菜を正しく食べる順番
一汁三菜の献立は皿の数が多くなり、どういう順番で食べていいか迷ってしまうかもしれません。
以下の2点の食べる順番を覚えておきましょう。
① まず汁物から食べる
これは汁物で箸を濡らすことでお箸にごはん等がくっつきにくくなります。
② 三角食べをする
「三角食べ」とは、「主食」「汁物」「おかず」を交互に食べていくことです。
図のように、
「汁物」➡「おかず」➡「主食」➡「汁物」➡「おかず」➡「主食」でも
「汁物」➡「主食」➡「おかず」➡「汁物」➡「主食」➡「おかず」でも
どちらでも三角食べとなります。
また、正確な三角でなくとも「おかず」➡「主食」➡「おかず」でもかまいません。重要なことはそれぞれ交互にバランスよく食べていくことです。
味のうすいご飯とおかずを口の中で混ぜ合わせる「口内調味」の効果や汁物で飲み込みづらい食べ物を流す効果があります。
一汁三菜の献立は満遍なく食べる「三角食べ」をしましょう。
4 一汁三菜の歴史
これまでは現代における一汁三菜を説明しましたが、本来は古来のかしこまった食事に「本膳料理」「懐石料理」があり、そこに「一汁三菜」の発祥と歴史があります。ここでは「本膳料理」「懐石料理」の一汁三菜をそれぞれ説明します。
4-1 「本膳料理」の一汁三菜
一汁三菜は「本膳料理」を発祥としております。
「本膳料理」とは室町時代に確立された武家の饗宴の席の料理のことです。食事ではありますが、礼儀作法とともにその献立にも決まりがあり、そこで「一汁三菜」という献立が生まれました。
「本膳料理」における一汁三菜の献立は、
飯、汁、香の物(漬物)、なます、平(ひら、煮物)、焼物
です。
本膳料理では、「三菜」とはなます、煮物、焼物と調理法が決まっております。また香の物は「三菜」に数えません。
これは、古来日本では奇数がめでたい数字とされ、反対に偶数を使うことは避けられ、特に四は「死」を連想するため嫌われていたために数えないようになったとされます。
現代の一汁三菜でも漬物を「三菜」に含まないというのはその名残です。
また、本膳料理における一汁三菜の配膳は以下のようになります。
本膳料理においては主菜の「焼物」のみ別のお膳で提供されます。
また、本膳料理には一汁三菜以外にも一汁五菜や三汁七菜などの献立があり、その中で「一汁三菜」は品目の少ない簡素なものとされております。
4-2 「懐石料理」の一汁三菜
懐石料理での一汁三菜とは、茶の湯の席の前にふるまわれる料理です。それは刺激の強い「お茶」を空腹のまま飲むことを避けるためにふるまわれた、メインの「お茶」のための前菜のような扱いとなっています。
懐石料理の献立は本膳料理と同じものとなり
飯、汁、香の物(漬物)、なます、煮物、焼物
ですが、配膳に違いがあります。
懐石料理は「温かいものは温かいうちに、冷たいものはより涼やかに」というおもてなしの心から、料理は複数回に分けて出されます。
同じ一汁三菜の献立でも、飯と汁のおかわりや、煮物、焼物を順番に出していくところに懐石料理の特徴があります。
また、焼物は大皿から取り分けることとなり、取り皿には空いた「なます」のお皿や煮物のふたを使う場合もあります。そして最後に漬物が出される場合もあります。
まとめ
一汁三菜は現代の食事において理想的な献立とされておりますが、その理由を説明させていただきました。
理想的な献立であるために気を付けることは、栄養が偏らないような具材、調理法を心がけ、主菜と副菜を組み合わせることです。
また一汁三菜におけるマナーでは、配置方法は「主食が左」、「汁物が右」を守ること、食べる順番はまず汁物から、そのあとはごはん、汁物、おかずを満遍なく食べるということを心がければ大丈夫です。
現代の一汁三菜とは古来の日本人がかしこまった席での食事、本膳料理をもととしております。本来の一汁三菜においても「なます」「煮物」「焼き物」と3種の調理法を組み合わせてバランスのよい食事をとっておりました。
この和食の基本である一汁三菜を心がけ、今晩から家族の健康と笑顔のあふれる食卓を作ってみましょう。
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